何だかんだ言いながら、俺は片想いが好きなのかも知れない。
恋人同士になったら、今まで曖昧にしてきたあれもこれもそれも明確にしなきゃならないんだろう？
好きな相手を知るのは楽しいし嬉しいが、深く交わってその先に決定的な価値観の違いを見つけてしまい擦れ違うくらいなら、ずっと叶わぬ片想いの侭の方が幸せなのかも知れない。
恋人らしくとか、相手の為を思ってとか、そういう独り善がりな理想が出来てしまうから上手くいかないんだろう。
なら俺は、片想いで良い。
たまに近付く温もりが、気紛れに交わされる口付けが、幸せであればそれ以上の何も望まない。
大切なのは相手にどれだけ愛されてるか、では無くどれだけ相手を想っているか、だ。

何て格好付けてみた所で、所詮は只の「二番目気質」だろうと言われればそれまでだな。
否定は、しない。

偶然入ったコンビニで見つけた、彼が好きなあの菓子。
ついつい手を伸ばして買ってしまった。
「これが彼の好きな物」
胸の中で呟いて、一つ食べてみた。
今まで食べた時は好きでも嫌いでも無かったその菓子が、今はとても美味い物だと思える。
そんな乙女思考の自分に苛々した。


愛読書棚を作ろうか、現在思案中。

彼が心配だ。何か在ったんだろうか？
恋人でもセフレでも無く、友人かどうかさえ曖昧な俺を頼ってくれとは言えないが、一人で抱え込まないで欲しい。
吐き出すだけでも楽になると思うから、たまには俺にも話を聞かせて欲しい。
どんな些細な事でも良い。
愚痴でも弱音でも良い。
弱気な彼は見たく無いからな。
応援のメールを送る事くらいしか俺には出来ないが、どうか彼がいつも通り元気になってくれますように。

こちらからメールをして、短い時間だが彼と会話した。
相変わらず下らない話題で、それはとても俺を安心させる。…幸せだ。
誰が誰を好きで如何だとか、そんな色恋沙汰を挟まない雑談をして、彼が笑ってくれると俺も嬉しい。
こんな事、彼本人には絶対言ってやらないけどな。

いつか離れる日が来ても、今まで通り笑顔でさよならとありがとうを伝えられる様に、俺は足元を幸せな思い出と彼の笑顔の面影で固めておかなければならない。
引き際は鮮やかに、が俺のモットーだからな。

何度でも、彼に恋をする。
きっと次にまたフラれて別れる事があっても、その後に出会って恋をする人は彼なんじゃないかと思う。
またお前かって呆れた様に笑われるんだろう。
そうして、また俺達は不毛な片想いをしながら下らない日常を繰り返す。
そんな事すら幸せに思えてしまうんだから、恋は盲目とは良く言ったもんだ。全くその通りじゃないか。

昨日はメールを待ったものの、ついに来なかった。
今晩はこちらから送ってみる事にする。