やあ、こんばんは。最近昼間は暑いのに、夜は冷えたままだよね。こういう時は教授にくっついて寝るのが好きなんだけど……どうやら彼はまだ夢の中らしい。夕方から眠っていると思うんだけれど、いつまで寝ているつもりなんだろうね？どこまで行けるのか気になってきた。一応、揺り起こしてみたりはしたんだよ。でも全然起きなくて、ケーキたちと一緒に賭け事をしているところなんだ。0時前に起きるか、その後か。彼らは後に賭けたから、僕はその前に賭けよう。彼らが勝った暁には、……そうだなあ、ケーキたちの大好きなペースト状のおやつをあげようかな。と言っていたらキラキラと目を輝かせていたよ。僕は特殊なビーコンを使っていないから彼らの言葉は分からないけれど、きっと喜んでいるんだと思う。みゃおみゃお鳴いて大合唱してる。……けど、そんなに鳴いたら起きちゃうよ、と言ったら静かになっちゃった。どれだけこのおやつが欲しいんだろう。カンパニー製のものじゃないから少し複雑だ。商品開発部に頼んで、彼らのおやつを作るのを頼んでみようかな。十の石心、「アベンチュリン」様直々にお願いをしたら、きっと彼らもすぐ取り掛かってくれるだろうね。なんて、職権乱用はしないけれど。ケーキたちの喜ぶ顔が見られるのなら、悪い気はしない……かもしれない。うん。どうせならトパーズも丸め込んで、一緒に頼み込んでみようか。彼女だってカブを飼っているだろう？喜ぶようなおやつやフードがあればトパーズだって喜ぶはずさ。今度会った時に相談してみよう、嫌な顔をして「今度は何を企んでるの？」なんて失礼なことを言われるのは、想定内だ。全く、いつも僕が面倒事を持ちかけているみたいな言い方、やめてくれやしないかい。

すうすうと寝息を立てて寝ているレイシオの顔を眺めてみる。みんな知らないかもしれないけれど、彼って端正な顔立ちをしているんだよ、イケメン、……というよりは可愛げのある顔をしているけれど。いつもはあの格好いい石膏頭を被っているから、彼の生徒も、カンパニーの部下たちも素顔を知らないんだ。知っているのはおそらく、星核くんや僕、そして天才クラブの彼くらいなんだろうね。……出来れば、独り占めがしたいところだけれど。あんまり眺めていると視線に気づいて起きてしまうかもしれないから、このくらいにしておく。ねえ教授、早く起きないと僕が賭けに負けてしまうよ。自分が勝った時のご褒美は、考えていないけれどね。

あんまりにも書いていないものだから、僕達が別れたと思った？残念、その逆さ。宇宙に名を馳せるべリタス・レイシオと、カンパニーの元死刑囚が！なんと半年以上も付き合っているだなんて、誰が想像した？理論的な言葉で生徒の心を折って、その素晴らしい頭脳で数々の数式を解いてきたあの有能な教授が、僕の前ではどうにも愚鈍になってしまうらしい。ふふ、想像がつかないって？それなら教えてあげよう。彼はね、どうやら僕がすやすやと眠っている時、髪の毛や首筋に顔を寄せて匂いを吸っているみたいなんだ。猫にもこういうことするよね、……ええと、たしか「猫吸い」？なら、これは「恋人吸い」ってやつかな。他にもある。彼は突然僕にかわいいと言うし、キスやハグだって毎日してくれるんだ。一緒に寝ることは当たり前、たまにはキスマークだってつけてくれる。「自由にしろ、他を探してもいい。」と言っていた教授が、最近は「どこにも行くな」って言ってくれるようになった。……ああ、これじゃあ、まだオーロラの下にはいけないな。姉さん、いつかレイシオを紹介しにツガンニヤへ帰るから、もう少し待っていてよ。最高の恋人だって、自慢したいんだ。

何気ない日常が、どれだけ嬉しいか。いつの間にかこんなに時間が経ってしまったね。クリスマスとかいうどこかの星の行事も、年越しも、全部終わってしまった。レイシオはクリスマスも任務で忙しくて、年末年始は体調を崩してて大変そうだった。折角の長期休みだったのに、一日しかちゃんと休めなかったのは気の毒だなと思ったよ。普段あれだけ僕に体調管理を説いているくせに、君がダウンするとはね。ああいや、嫌味とかじゃなくてさ。僕に弱ってるところを見せられるほど好きでいてくれているんだ、って感じて嬉しかった。もっと僕に医学の知識があれば、レイシオを看病できたのかもしれない。できるだけそばに居たけど、高熱を出して床に臥せっている彼を見ていることしか出来なかったのはつらかったな。……うん、もうちょっと看病出来るように頑張ろうと思う。今年の目標ね。ああ、おかゆとか作ってあげればよかった。たまごをたっぷりいれて、やさしい味付けにしてさ。昔、姉さんが僕にやってくれたように。

冷えきったからだは、大好きな恋人のあたたかな体温を求めてる。帰ったら抱きしめて、離さないで欲しい。僕が願うのは、それだけだ。