わたしも、何とか形にすることが出来たかしら。
全て、あなたのお陰よ。色々と助けてくださって本当にありがとう。あなたは初めて出逢った頃から、姿こそ違うけれど……わたしの『ヒーロー』で『魔法使い』で、何よりも大切な人なの。いつも頼ってばかりだけど、これからもずっとずっと、頼りにさせてちょうだいね。

こうして二人の為に日記を設けてくださったこと、すごく嬉しかったわ。わたし達の物語を、多角的な視点からもう一度振り返ることが出来て、(……わたしの台詞が書き起こされていて、恥ずかしくて倒れそうになってしまったけど……)本当にね、嬉しかったのよ。だから、わたしも同じだけの気持ちを、あなたへお返ししたいの。

あなたとわたしの、大切な物語。
出逢いから順当に…という訳にはいかなくて、時系列もばらばらなんだけど。あなたなら、直ぐにお分かりになるでしょう…？わたしが言葉の山に隠したものは全て切り崩して、あなたに見付けていただきたいの。懐かしい場面と、言葉のまにまに喚起されたわたしの感情を、その手に取ってもらえたら幸せよ。

ふたりで新しいページを重ねていきたいわ。
わたし、本当にあなたが大好き。

Trick or Treat！

お菓子をくれなきゃイタズラするわ。

ミスター・アベンチュリン。この日のために、美味しいクライネクーヘンを取り寄せてもらったの。チョコケーキをご所望なら、ザッハトルテを。すみれの砂糖漬けを紅茶に浮かべて、ご一緒にいかが？

それから、午後に取りに行く予定だったシロップ薬だけど。…ええ、覚えていらした？馬車の手配をお願いする時にね、召使いに言われたの。お忘れなんじゃないですか？って。いやだわ。本当にうっかり。…だけど、あなたもよく知るあの人がお髭を引っ張りながらおっしゃってたわ。神秘学家はうっかりする生き物だ、とね。


このままじゃ、あなたに追い付いてしまいそうだから……わたしは、かもめになって過去へ飛ぶわ。


ああ、待っていたのよ。ずっと、ずっと！
あなたの幸運を、わたしにも分けてくださる…？

viel Glück.

 11/1 真夜中◆わたしにも祝福のキスを！

Beaver Moon.

月がとても綺麗よ、アベンチュリン。
せっかくだから、今夜はあなたが知らないことをひとつ、ふたつ……、何かひっそりと呟いていこうと思うの。そう、あの月と内緒話をするみたいにね。

出逢った時から特別な予感がした、黒猫みたいな男の子。それはやっぱり的中していたわ。ずっと、ずっと、楽しい毎日が続くものだと思っていたけれど、終わりは突然にやって来たの。どうして？こんなに楽しいのに、どうして？って、それでもお引き止めする度胸はなくて。ただ、桃色の女の子は心を込めてお手紙を書いたわ。

『もし、何かの運命力が働いたら』

あの時のヒント。確率はほとんどゼロになってしまったけど……きっと、そこから踏み出す一歩を与えて貰えたのだと、今でも信じているのよ。もし、その機会を掴めたら、絶対にお伝えしようと決めていたから。

わたしに勇気をくださって、ありがとう。
自分の為にはなかなか動けないことでも、誰かの為ならものすごく頑張れてしまうこともあるのね。そして、それはわたし自身の成長にも大きく繋がっているわ。

今日は、研究員の彼のお誕生日みたいだわ。
これは密やかな呟きよ。とっても長い独り言なの。普段、こういうことはあまり口にしないから…きっと、伝わっていないことも多いんじゃないかしら…？だから、この場をお借りして。あの人に届きますように。


彼はきっと、女の子をお姫様にすることが得意な人なの。ずっと、手の届かない人だと思っていたから…、今はこうして寄り添えることが本当に幸せだわ。
それこそ、魅力を数え出したらキリがないくらい。わたしは彼の世界観がとても好きなの。二人で創り上げる物語が好き。姿や設定が違っても、ドラマチックな展開になるから本当に不思議なんだけれど…、きっと、これは『彼』としか生み出せない世界だということ。あの人無しでは成し得ないことも、今のわたしは知っているのよ。

それから、言葉運び。リズムとか、波長のようなもの。やわらかな文面が好きよ。言葉を操っているようにも、遊んでいるようにも見えるところ。いつも規則性がなくて、漢字やひらがなを気ままに混ぜてくるところも好きだわ。出逢った頃のわたしはそれがとても新鮮で、随分と真似もしたし、とても良い影響を与えて頂いたと思っているの。……あの人は覚えていらっしゃらないと思うけれど、以前のわたしよりも、柔らかくなったみたい。

こんなふうに、好きなところを挙げていたら本当にキリがないわ。…ねえ、そこにいらっしゃる？アベンチュリン。長い呟きになってしまったけれど、続きは、また。

プレゼントして頂いた香りに包まれて、幸せな気持ちで筆を執っていたの。わたしにとって、最高のお誕生日になってよ。本当にありがとう。

いつも大好きなあなたへ。

目が覚めて、眠れなくなってしまったの。
ホットココアにマシュマロを溶かしたら…熱過ぎて、ますます目が冴えてしまったわ…、どうしましょう！

今度はジャズね。コスチュームにも驚いたけれど、あれは黒真珠…かしら。緑色の宝石を抱き込んだ二連のパール、あなたが選んでくださったネックレスと同じではなくて？手袋もお揃いよ、ハーフグローブ。

ねえ、どうして眠らなくてはならないの？と思うくらい、睡魔の気配がないのだけど…ああっ、どうしよう！
あなたは今頃、どんな夢を見ているのかしら。