満月の夜は血が滾る。そういや月は魔力が宿るとかなんとか朔間先輩が言ってたっけ?魔力がどうとかは分かんね〜けど、大安?みて〜なことだろ。何やっても上手くいく!そんな今日、何気ないことだけどよう、羽風先輩と「月が綺麗だ」って一緒に空を見上げたんだ。ふたりで笑いあってさ、この時間がずっと続けばいいと思った……陳腐な言い回しだけど、俺様は本気でそう思ったんだ。これを幸せって呼ぶんだろ?
月が綺麗だ、なんてことを伝え合える距離が何より心地好い。
俺様のもん、俺様が手に入れたんだ。誰にもやらない、ずっと欲しかったんだ。俺様だけの……。
ずっと、一緒にいるんだ。
『BLEND+』の活動以来、少しずつ甘いものを食う機会が増えてきた。最初は存続の危機に陥ったカフェの為に、赤毛の坊ちゃんとゆうたと一緒に新商品のインスピレーションを得ようと色んなカフェのメニューを調査したのが始まりだったか。あん時は大変だったぜ、何せ俺様もゆうたも甘いもんが苦手だからよう……赤毛の坊ちゃんだけが目を輝かせて嬉しそうに、美味そうに食うんだ。でも、俺様たちだって一緒に考えなきゃなんね〜し、苦手ながら甘いもんを口に運んでた。
苦手っつっても食えね〜わけじゃね〜。さすがに甘すぎるもんは無理だけど、甘さ控えめの〜とかほろ苦い〜とかって付いてるとちょっと惹かれる。疲れた体が糖分を欲することもあるしな♪偶に食うデザートの美味さを知ったぜ。そういやアドニスも甘いもんが好きだし、コンビニかなんかでデザートのフェアとかやんだろ?あれまとめて買ってシェアしてもいいか、って思うくらいには食えるようになった。
んで、俺様の恋人……羽風先輩も、甘いもんが好きなわけだ。別に意識してるわけじゃね〜けど、羽風先輩と付き合い出してからパンケーキやらデザートやらを食う頻度が更に上がった。意識してるわけじゃね〜けど!こ、……恋人って味覚とかも似てこね〜か?生活習慣も、どんどん先輩に近付いてってる気がする。悪いことだとは思っちゃいね〜よ、寧ろ良い変化だ。同じものを共有出来るってサイコ〜だろうが。なんかすっげ〜……『恋人』って感じでよう、むず痒い。それでからかって来んのが朔間先輩なんだが、これがすげ〜ウゼ〜。「おや、晃牙や。今日はパンケーキにしたのかえ?薫くんの好物じゃな」とか言ってきやがる。最後の一文要らね〜だろうがよ!
朔間先輩への不満はこれくらいにして、とにかく俺様は最近羽風先輩に染まりまくってる。好き過ぎてなんかどっか狂っちまったみて〜に、「新しい俺様」が構築されて……いや、違うな。今までの俺様に新たな俺様が積み上げられてんだ。それがすっげ〜楽しくて、嬉しいって話だよ。もっとあんたに染まりたいって話。
羽風先輩の「おはよう」で迎える朝が好きだ。眠くて仕方ね〜けど、目を開けたら幸せそうな笑顔でこっち見てるあんたがいるのを知ってるから、眠気に負けね〜で目を開く。その幸せそうな笑顔につられて、俺様は朝いちばんからしあわせになっちまう。手を伸ばせば温もりがある、そんな朝。
同じ『ユニット』っていっても、最近は個人の仕事も多いせいで現場がバラバラなことが多くてよ。玄関を出てから右と左で別れるのを名残惜しく思いながら、『UNDEAD』の未来の為に各々仕事に向かう。でもちゃ〜んと昼は連絡が来るんだぜ♪あいつのそのマメさが好きだ。好きで、救われてる。昼だって寂しくね〜よ、用意されたロケ弁の写真を送ったら「美味しそう♪」って連絡が来て、コンビニのパンを買えば同じもん買って食ってくれたり、繋がってるって感じられんだろ?
「ただいま」と「おかえり」を交わして夜が来る。やっとゆっくり出来る二人だけの時間。星を見上げ、夢を語り、愛を与えあって、抱き締めあって、そうして眠りにつく。そんな夜。そんな、毎日。変わらない日々を送ってるようだけど、確実にこの想いは育ってんだ。少しずつ互いのことを知っていって、どんどん「好き」って気持ちが募っていく。
日々は流れ、忙しさに追われることがあっても、この穏やかな幸せは終わらせない。ずっと、ずっと続いていくから。先輩とともに、生きる日々が。
我輩の愛し子たちは既に夢の中である。故にこの夜闇を住処とする我輩が出て来たわけじゃけれど、反則技だったかのう?まぁ細かいことは気にせず我輩の話を聞いておくれ♪
まずは我輩の失敗談から話そうぞ。この日記のデザインは晃牙が一から勉強してようやく出来たものなのじゃ。よく出来ておるじゃろう♪処女作としては中々のものだと、我輩もあやつの先輩として鼻が高い。眺める度に楽しくて『大神晃牙』という人間らしさが追求されてて……他の者の煌びやかさには劣るが、『らしい』と言えばらしい。その熱意に我輩も触発されてのう、先輩風吹かせて晃牙のデザインにちょこっとだけ要素を足そうとしたのじゃよ。しかしご存知の通り、我輩は機械に弱い。コード?何それ?見よう見まねで何とかなるじゃろ♪ちょちょいのちょい♪とかやってたら折角晃牙が作ったデザインがひとつも反映されなくなって思い切り焦った。隣で見ていた天祥院くんが歯に衣着せぬ物言いで「え、朔間くん、馬鹿なのかい?」とか言ってくる始末。こればっかりはその通りなので反論は出来ず……どうにかこうにか、多少変化してしまったが何とか概ね元の形に戻ることが出来たのじゃ。謝罪しておこう。ついでに宣言しよう。もう我輩は晃牙のデザインには触れません。ここはおぬしの城じゃから……元より我輩が弄るべきではなかったのう。ふたりの門出を祝いたくてお節介を焼いたが、また別の方法で祝うとしようぞ。
夜が孤独でなければ良い。寂しい夜に別れを告げて。
もう傷付くことはない、恐れることはない、不安になることはない。ああ、恋とは……愛とはなんと、偉大なものなのだろうか。