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折針入れ
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>2019/06/21 こいつはいっそ助かる気はあるのかと思う。 疲れたよな、主。俺もだ、安心してくれ。 身体の末端に迄は面倒を見ずとも辛うじて血が通う其の体は一応は生き物として成り立って居る、心臓が送り出して身体の仕組みなりと血を運び使い終えた血を浚い又臓器に戻して濾して同じ血を使い適宜に必要な箇所を温めて一つの体の中に生き物としての仕組みを集約させる簡単な作業の繰り返しをこれでもうどれだけ見下ろしてきたものか。体の欲する営みに活動が満たないと肉は薄まり骨が浮く。少なからず生存の為の機能は備わっているもののそれさえも維持出来なくなればきっと本当に文字通り生きることさえ苦痛になる、呼吸すらもままならない、そうして人は死んでいく。 こうして一つの肉体に集結した活動を静かに数えながら、今の状態では想像も出来ない此れ迄を思い出す。戦果の数は知れず書庫に反物と一緒に詰め込まれて居る、他者への説明が必要ならばそれは都度真価を発揮するだろうが記録として出力され主ではなく政府のものになった情報と傍で常に共に在った俺には必要のないものだ。主自身が語るに必要ならば其れにも価値がある、そうでないのならそれを代わりに読み上げて生きる糧として胸を張れと声を挙げるのは寧ろ間違いだとも言える。自信と糧は今の主が抱えられる分だけでいい。 今の主は自発的に喋るとしたら何を言うだろうか。それが例えばいつもの昼下がりに甘味を求めて茶目っ気を誤魔化し引き出しの中を弄るようなそれならば―…引き出しの代わりに俺に菓子をしまっておくといい。最初の頃は不意に手が触れては温かさに驚かれて握々とされていたしな、初心に戻るでも、ついには慣れて人の手を衣紋掛けの代わりに使い着替えを手伝ったその気楽さで触れてくれても構わない。櫛の次は帯、帯の次はかんざし、かんざしの次はーー…女の主は初めてだったからな、覚えているさ。全て。全てに応えよう。 世を憂いて疲れ果てた顔をして眠る主が心配だったことは一度も伝えたことはなかったが、何日も何日も眠りを重ねても寝顔から疲労が取れない程までに疲れていたとは知らなかった。世を憂いてはおくびにも出さず、然し先に読み上げた未来を胸に閉じ込め隊員にいつもよりもほんの少し厚く言葉を掛けていたのを知っている。心配すれば士気に繋がる。自分本位に思い通りに理想を持ち自分の四肢が如くに振るえば君も少しは気楽だったろうにさ。心配を飲み込めば自分の中に傷をつける。四肢が如くに扱えば自分の事に関しちゃなりふり構わねえ君のことだからそうも傷付かずに済んだだろうに、妙に俺たちを自分の体から切り離して大事にするからそんなに疲れるんだ。そこだけは唯一愚かな所だと思うぜ。 なぁ、主。憂いた結果、君は此の世は好きで居られたのかな。君にとって世の中はどうだった。 君をそうまでしちまったこの世。この環境。要るかい。そうまでしても此の世界は守らなければならないものだったのか。 次の頃には驚かせないようそっと少しだけ訊いてみようか。何、一刀剣の戯言だ。何にもならない。身体が残らないなら意思だけ聞く必要はあるだろう。 嗚呼、それから。
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