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┗+翡翠の玉座+(142-151/161)

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151 :赤司征十郎(黒子のバスケ)
2016/07/19(火) 00:24

何故か今年はかき氷を食べる機会が多く、その度にテツヤから貰ったかき氷の写真を思い出す事になる。

夏にはよく食べていたように思うその頻度は僕がちょっと退く位だったわけだが、当の本人は何処吹く風で、本能の赴くままに機会があれば食べていた印象だ。
テツヤと一緒に居た頃は別段かき氷にそれ程の執着も無く、実は殆ど食べた事が無かった。
フローズンやフラペチーノの様な飲み物型やカップのアイスなんかは夏場は重宝したが、かき氷と言うものを食べるタイミングと言うものが無いに等しかったのが原因だと思う。
専門店が学校の近くに出来たらしい情報を玲央から聞いて、一緒に行った時に漸くかき氷を店で食べるという事を知ったくらいには縁遠かった。
かき氷は屋台で食べる物で、出店…と言うよりは祭事に参加しない人間には馴染みの無い食べ物に変化してしまっていたようだ。
今ならテツヤがあれ程ワンシーズンに何度もかき氷を食べる理由がわかるような気がする。
近年、変わり種のかき氷や店によって削り方や氷自体に味を付けているものもあるようでその種類には目を見張るものが有る。
テツヤが写真を送ってくれていた頃に同じく共感がしてやれたら良かったが。
あぁでも、今思い返してもテツヤは食べ過ぎだ。
再三腹を冷やすと胃腸の働きが低下して夏バテを起こすから控えるように言っていたが聞きもしないで飽く事無く食べる物だから若干苛立ったのも今では懐かしいな。
どうせ今年もまた大層な量のかき氷を食べては夏バテを起こしているだろう彼に、せめて量を減らすなり対策を立ててくれる人が居ればいいが。……其れも無駄だろうか。

気付けばまた、互いに疎ましく思う季節がやって来たな。

少し前にそれ程多くは無いが何種類かの紫陽花を見る機会があって、昔テツヤから送られてきた紫陽花の写真を思い出した。
紫陽花は何処となくテツヤを連想させる。
薄い水色はテツヤの髪色に似て、菫の様な薄い紫も好きな色だと言っていた事を記憶している。
そう言えば菫の砂糖漬けと言うものを好物にしていたから食べてみたいとは思っていたが未だ叶っていない。
紫陽花の花言葉の沢山あって一つには辛抱強い愛情、と言うものが有るらしい。一時のテツヤにぴったりだな。毒を隠し持っている所も含めて。
初めてゆっくりと眺めた紫陽花はとても美しかった。品種ごとに形や色も違って、…その事実さえその日までは知らない位に紫陽花と言うものをゆっくりと見たことが無かった。
桜や薔薇なんかは色々と目にする機会はあるが紫陽花だけと言うのは開花や見頃を報じられる事も無いからだろうか。

あの頃知り得なかった事はテツヤが教えてくれて知った気ではいたが、かき氷の美味しさも、紫陽花の美しさもちゃんと共有出来れば良かったと今更ながらに思うよ。
そう頻繁に逢う事も無かったけれど、叶うなら、共に。

扉を開けたままの鳥籠を出たり入ったりしていた僕の小鳥は、もう戻る事は無いけれど、彼が囀る美しい声は、この広い世界の小さな小さな出来事に触れる度、鮮やかに蘇る。

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150 :赤司征十郎(黒子のバスケ)
2016/05/13(金) 01:37

僕の気持ちを変えさせたのは僕の古くからの…僕の中で友人だと胸を張って言える人物の中で、二番目に古い友人だ。
此の本で金輪際テツヤ以外の人間の話をする気はないが、彼への感謝を込めて一ページだけ彼と、僕が此の本の上にペンを走らせる経緯について語っておこうと思う。
二番目に古いと言ってもブランクの数年は有ったりする付かず離れずの関係で、先日お互いの関係性について結論が至らないという結論に至った間柄だ。
先に友人として紹介したが形容する言葉が無いから仮であって友人でも親友でも悪友でも無ければ恋人でも愛人でもない、兄弟でも無ければ家族でも無いんだが全てに於いてそれらしいとも言えるような。
彼は、僕の中で今も鮮明に残る過去の恋愛を知る唯一の人で、テツヤから再びこの日記に書き込みがされるなんて変な夢を見て目覚めた時に呟いた言葉に0秒反応したものだからこの日記を事を話したんだ。
過去を知るなら今更何も隠し立てる事はないし、現在進行形の恋愛なら多少躊躇うがそうでもないし…自慢してやろうという気持ちも有り、ね。
実際自慢はしてやったんだがこの日記を全て読み終えた彼が「敵わないなと思った」なんて言うからとても狼狽えたのを覚えているよ。
僕の中で二番目に古い友人が吐く言葉じゃない言葉を吐かせたこの日記を、その言葉で開く気が起きた。

彼が敵わないと思ったというページを改めて読んで、ゆっくりと心の中にテツヤの言葉が沁み込んで行くような感覚を覚えた。
それは頑なに目を向ける事を拒んでいた僕の意思を嘲笑うように本当に、静かに、今までズレて軋む音を鳴らしていた所に綺麗にピースが嵌っていくようで最初から1ページずつ、自分の書いたものも含めて全て目を通した。
その後は書き始めるに当たって書いた記事と重複するから割愛するが、彼のタイミングの良さと言うかシンクロ率には本当に驚かされる。気紛れに新しく言葉を記した翌日に感想が届いた日には思わず日参でもしてるのかと疑ったが、本当に気紛れだから余計に恐れ入る。
人との想いを繋ぐには長い月日が必要なのだと、直ぐにわかり合う事など出来ないと思っていたが、彼の言葉からすればそれは気持ちの問題でそこに期間の長さは必要無いようだ。勿論、長いに越した事はないのだろうが。

僕はもう随分と長い間自分で決めた固定概念を信じ続けてしまっていたと改めて思うが、それでも完全に改善される事はない。この先もないだろう。
僕が常に背筋を伸ばして立って居る為の、十字架のようなものだと思う。磔にしてでも、その姿勢を維持するためのもの。息苦しくはあるが、それを無くして立っていられるほど僕は強いわけじゃない。それは誰よりも自分が一番良く解っている。

新しい友人などに興味はないが、改めて振り返って、僕が何も見ずに前だけを見て進み続けるために置いて行っても、後ろから見守ってくれていた人やまた変わらず隣に立ってくれた人には恥じない姿勢で接していたいと改めて思った。
テツヤによって、僕だって少しは丸くなったんだよ。以前の日記にも書いてはいたが、それ以上に。……流石に歳を取れば丸くもなるか。
誰彼構わず優しく振る舞うつもりはないが、僕に、僕が知り得なかった視点をくれる彼らには誠実でいたい。彼を見ているといつもそう思わされる。

少しテツヤに似ているな、とも思うがそれはお互いに対して失礼だな……少なくとも彼はテツヤ程変態じゃ………いや、…うん、…変態か。

好きな人、愛する人に対して誠実に想い尽くす所はそっくりで、先日彼から初めての恋愛相談をされた時には人選ミスだと指摘はしつつも少しこそばゆい気がしたな。
そしてそんな事を書いていたら不慣れな惚気を勇気を出して教えてくれた彼から何やら仕返しされたから読み返して後日掲載をと考えていたが今日上げる事にした。
惚気るからからかっただけなのに仕返しされるとは理不尽だとは思うけどね、頭が高いぞ。

人の幸せを食べて生きる、そんな生き方も悪くないと思えるくらいには僕の改革は進んでしまったようだ。

最近は周りにいる人に出来る限り素直でいようと思って先日彼と会った際に隠し立てずに告げた言葉へ「タラシか!」と言われた日にはどうしようかとは思ったけどね。素直になってもならなくても、僕はどうやら誤解は受けるらしい。
そして残念ながらテツヤに対して素直になるのは苦手なようだ、特別すぎるからだろう。

元来僕は、饒舌なのだと最近改めて知らされた。

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149 :赤司征十郎(黒子のバスケ)
2016/04/18(月) 00:17

今年の桜もまた、天帝の涙によって満開になった途端に無残な状態になってしまった。天帝は本当に嫉妬深くて泣き虫のようだね。
そんな、友人に爆笑されたテツヤの解釈を僕は案外気に入っている。

今年も桜が咲いて、忘れていたテツヤが教えてくれたジンクスを思い出したよ。落ちてくる桜の花弁を捕まえられると願い事が叶うという話。
何度か桜の花弁が降る中を歩いて……それでも一度も手は伸ばさなかったな。伸ばさずにただ傍観していたよ、桜もだけど花というものは何となく触れるのに躊躇ってしまうな。躊躇ってしまうようになった、という方が正しいのか。
そんな調子である夜に桜並木道を歩いていると一枚、何とも神経の図太い桜の花弁が僕目掛けて飛んできた。…桜の花弁ってあんなに突っ込んでくるものだったか?もっと儚いものだったと記憶しているんだが最近の品種改良を施された桜は神経の図太さが違うのかな…いや、あれは染井吉野だったが。
昔のテツヤみたいだなと少し笑ってしまったよ。岩戸を叩かれた時のような、御節介さが。
呆気に取られている間にその桜の花弁は消えてしまったからもしかしたら僕の錯覚かもしれないし、僕の眼を持ってしても見抜けないミスディレクションでもされたのかもしれない。実に愉快な魔法だったが消えてくれてよかった、手元に残っても持て余すだけだからね。
テツヤは何を願うのだろうね。そもそも、ジンクスに挑戦したのか定かではないけれど、もしも捕まえることが出来て掛ける願いがあるならそれが叶うようにこの間僕にタックルしてきた花弁に願おうか。

夜といえばもう一つ、夕食を終えてホテルに帰るまでの道程で手を繋ぐ事を憚られてテツヤの服の裾を摘まんだ時に伸ばされた手のひらを思い出したんだ。
切っ掛けは暗くした室内にいた警備員。その後ろに僕は立っていたんだけれど、腰でも痛いのか、彼が右手を、正しくは右手の甲を腰に当てた時にその手のひらに見覚えがあることを思い出した。
…その瞬間まですっかり忘れていたけど思わず警備員の手を掴みそうになったよ。…勿論掴んではいないよ、僕の自制心の強さは身に染みて知っているだろう?
その手をとても、懐かしいと思った。僕が手を伸ばすまでを待つ手のひらが。
最終的に僕はその手を掴んだけれど、実はその手を掴むことに当時まだ躊躇いがあった事を今更だが告白しておこう。
…というか、あれから何年か経った今でさえ、手を掴む・手を繋ぐという行為は苦手な部類だ。御蔭で未だに手を繋いだ感覚を覚えているよ。上書きされる記憶がない分、どうやら消えにくいようだね。
手を繋ぐという行為は本当に崇高な行為だ。≪共に歩く≫≪時に導になる≫そんな、肩を並べて歩く・歩きたい人とするものだろう?
それでも手を伸ばされて、僕を待つ手のひらにプレッシャーと同時に少しくすぐったい様な気恥ずかしい様な、形容しがたい感情を抱いた事も事実だし、結果、掴んだのはその手に身を委ねようと思ったからに他ならない。

テツヤ、御前の手は強くて優しい。

御前は自分を甘やかす方だと自負していたけれど、精神的な部分ばかりで肉体的に甘やかす事をしていないように見えていたよ。
何度注意しても聞かないし性分なんだろうが、そこは嫌いだったな。
両手いっぱいに大切なものを持って守ろうとする事は結構だけど、僕のスペースが空いた分、其処を自分に宛てて使う事を勧めるよ。…とはいえ既に別のものが腰を下ろしていそうだけれど。
それが出来ないなら両手いっぱいの大切なものを落としてしまわないように、その手に自分の手を重ねてくれる存在に出逢える事を願うよ。そしてその手がお前の手と同じく優しい温もりを帯びている事もね。

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148 :白鬼院凜々蝶(妖狐×僕SS)
2016/03/06(日) 11:26

>繰り返し見る夢

拝啓、身を切るような寒さも少しだけ和らぎ、それでも朝晩の気温には冬の最後の瞬きを感じる季節、元気に過ごされている事を願います。

御狐神君が好きだと言っていた海月を見に行きました。
小さな展示コーナーにはお世辞にも多いとは言えないけれど幾つかの種類の海月達が各々、狭い水槽の中を柔らかく器用に漂っていました。御狐神君と見た海月も居て、水槽の中を目を輝かせながら眺めて写真を撮る君の姿が容易に思い返されました。海月の生態について、死んだら水に溶けるのだと言う話を私は君から初めて聞いた事やその死に方が綺麗だと思った事も。

その中で私は飽くことなく赤海月を眺めていました。
御狐神君ならきっと御存知でしょうが赤い模様がとても綺麗な海月で青い水槽と赤い模様のコントラストが鮮やかで、水槽が水色であれば尚良かったのにと、そんな事を思いながら水槽の中浮上しては直ぐに底へと沈んでいく赤海月達を愛しく感じていました。
因みにこの赤海月と言う海月は毒が強く、刺されるとかなり強い痛みが生じるそうです。
とても親近感を覚えてしまうのは性分でしょうか…、生憎水槽の中の彼に触れる事は叶わなかったのでその痛みの強さはわかりませんでしたが。

その後にはふらり、御狐神君と訪れたチョコレートのお店に行きましたが生憎と定休日で…残念ながらきっと私にはあまり、縁の無い所なのでしょう。


椿園にも行きたかったのですが残念ながら帰宅。
椿園は、本当は御狐神君と一緒に行ってみたいと願っていた場所でした。それは私自身、好きな花だと言うこともありますが雪兎がとても映えるだろうなと言う想像からで、雪の積もる頃に二匹の雪兎を作って並べたいと思っていました。

張本人でさえ忘れていた事ですが送った和歌の中に季語の寒椿から始まる和歌もありましたね。
全く無知の世界で技法も作法も知らず、その中で季語と言うものを、枕詞と言うものを和歌を送るに当たって初めて知りました。
送られた彼が『一体何者なんだ』と驚いてくれた事を知り、悪戯が成功した子供のような満足感と安堵感を得たのを懐かしく思います。
付け焼き刃のような僅かな知識でその気が惹けたなら冗談を真面目に返して良かったと…ですが、本当は此方は全く冗談とは受け取っていなかったので(と言うか彼はあまり冗談を言う印象がなく、寧ろ冗談めいた戯言を本気で言うので疑う余地もなく)最初の和歌を返された時の彼と同じくらいには頭を悩ませたのを今でも覚えています。『何を言い出すんだ、此奴は』と。
思えば、其処までする義理がない頃にも関わらず、…ですが彼の期待に応えたいと思った事は事実なのです。でなければ、丁度百人一首に興味を持っていた頃とは言え自分で詠む等と大それた事はしなかったでしょう。
枕詞と先程挙げましたが、枕詞には対となる言葉があり限られた文字数の中でその二つの言葉を交えて表現する技法です。
其の技法も最初の和歌に使いました。『射干玉の』。
其の時送った和歌は、素っ気ないものでしたし彼には変に期待を持たせて落胆させてしまいましたね。

今でも意味を覚えていますか?

『夢を見る前まで君を意識しているが君が夢に出る事は出来ないだろうね、秋の夜長と言えども』
彼が夢に現れる事など無いことを強調してはいましたが、本当に伝えたかった節は『夢を見る前まで君を思っている』事でした。
素直さに欠ける性分では和歌にしても其の意味にしても、ちゃんと伝わらないのだと知り、勿論それを良しと訂正さえしなかったけれど、もう時効でしょう。
和歌の世界は、とても繊細で少し難しいところもありますが楽しいものです。彼には、もう苦手意識を植え付けてしまったので詠む事は無いかも知れませんが、既存の和歌を、其の意味を、知ってみる事はとても新鮮な世界が見えるものです。
もしも、苦手意識が和らいだ時は少し検討してみて下さいね。

そして、気が向いたら御狐神君に仮ではない本当のアドレスを伝えるに当たって変えたアドレスの意味を解いてみて下さい。
百人一首を見ればきっと直ぐにわかります。


#あの頃見なかったはずの君の夢を、今更時折見るのです。

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147 :赤司征十郎(黒子のバスケ)
2016/03/01(火) 00:04

>Recollection

物語は終わりを迎え、観客も役者も皆それぞれに帰るべき場所へと帰った頃。
語られる後日譚。

若しくは、物語の余白へと書かれた作者の落書き、メモ程度。
唯の自己満足に過ぎない、いつか忘れてしまう日の為の僅かばかりの抵抗。薄積みの埃を、軽く払って。



戻るつもりはなかったが、気が変わった。

埃を被るだけの本なら、そんな落書きを気紛れに書き足しても問題はないだろう。
僕が気紛れに始めたのが発端の本だし、その辺りは好きにさせて貰う。

漸く、此の本を最初から一つ一つ、読み返す事が出来た。
自分の書いたものも残らず読んだが…随分と素直に色々と書いたものだね、改めて読んで恥ずかしさよりもそれどころか感心したよ。…随分と、信頼していたんだな。

#過去の感情にいつまでも縋りついては居られない。人の感情は移ろうし、"愛している"と呟いた唇が次の日別れを告げる事だって有り得る。
#だからこそ、過去の言葉の信憑性はないし、そんな言葉をずっと信じ続ける事は愚かだ。

僕がこの日記を読み返さなかった理由、そしてそれは今も変わらない。
変わらないが、信じ続けなくて良くなった今、改めて読み返してテツヤが残してくれた言葉を素直に受け止める事が出来た。思っていたより痛みもないし、穏やかに…まぁ、少し切なくはあったけれど全てを読み返す事が出来た。
我ながら面倒臭い性格だとは思うが、その手を離した事を、あの時の選択を後悔した事はない。寧ろ、正しかったとさえ、思っているんだ。
後悔とはまた違う……何と言う感情かはわからないが、こんな選択を選んでも自分を優先させる事しか考えられなかった自分に、軌道修正が出来なかった自分に不甲斐なさは感じてもね。
離れて、疑心暗鬼になる必要も無くなって、ただ過去の思い出として、優しい記憶として、再び一人で辿る今がとても幸せだと感じている。
読み返して、どれ程自分が愛されて、どれ程自分が愛していたのかを再確認して、…此の本が流れて消えるのが惜しくなった。それが気紛れに筆を取った理由だ。


何処かのページで"君に相応しいのは僕だけ"だとテツヤが言っていたけれど、今改めてそうだろうなと思っている。彼は僕より順応能力に長けているから逆は有り得ないけれど。
…今の僕がテツヤと付き合う前のツンケンしている僕と話をする機会があったら、それはそれは面白いやり取りが出来そうだと自負している。思いっきり罵倒されるだろうね、自分に吐くとは思えないような汚い言葉を吐かれそうだ。一発くらい殴られる覚悟は必要だろうね。
そして僕は全く悪びれる事も臆する事もなく心の中で腹を抱えて笑いながら不愉快そうに顔を歪ませる過去の僕に経緯と現状と今、僕の中に残る記憶と僕がテツヤに抱いている感情を大いに自慢してやろうかと思っている辺り存外、僕も性格が悪い。いや、今に始まった事じゃないけれど。
まぁ、過去の僕なら絶対信じないだろうな…我ながら、我の言葉さえも信じないだろうな…。寧ろそんな未来変えてやるとか、余計に意固地になっていそうだ。……絶対面白いだろうな…、その後、過去の僕に八つ当たりされているテツヤ含めて。


そんな僕が、改めて書き始める今更ながらの切手の無いラブレターを。今だから書けるラブレターを。
僕の中で、暖かく揺れる記憶を認める。

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146 :赤司征十郎(黒子のバスケ)
2016/01/26(火) 01:07

最初は着払いで返ってくる可能性さえ視野に入れていた程で、御前がアレの封を切った事がそもそも想定外だったよ。
そして、アレを読んだ上で返事を返す意思があった事も、更にその返事がこんな形で返された事も。

此処まで想定を覆されるといっそ清々しささえ感じるな。

……とても驚いた。
寝惚けているのかと思って自分を疑いさえしたよ、有り得ないとね。
御前のその想定外な言動は、出逢った当初から変わらないな。とても懐かしいと、感じた。その色も、言葉も含めて。


改めて、言葉を残してくれた事に感謝を。
携帯を替えてからブックマークも登録しないまま、此方にも戻るつもりもなかったんだが…少し御前について思い返すことがあって、不意にまだ残っているのかと思って探したのが昨日の夜中の事だ。
言葉を返すか迷ったんだが何の偶然か、同じような日に気付いた奇妙な縁に久しぶりに此の姿を取ることにしたよ。言葉を選んでいる間に丁度26日だ。

体調の方は相変わらずのようだな。
夏にも、懲りもせず冷たいものばかり食べて夏バテを起こしているんだろうと推測ではなく確信の域で、思っていたよ。
身体を省ず欲望に忠実なのは結構だが、迷惑は掛けてもあまり周りに心配を掛けるなよ。


恨まれ、憎まれこそすれ、御前から感謝の言葉を貰うとはね。それは此方の台詞だ。
随分と悩んで、随分と迷って、決して綺麗なものばかりとは言えない感情の中で、辿り着いた答えはとても幸せなものだった。その答えに辿り着けたのは紛れもなく御前のお陰だ。
有難う、テツヤ。
御前のくれた言葉の数々は、この先揺らぐ僕の道の、一つの導になるだろう。
テツヤに愛されて良かった。それは僕の誇りだ。

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145 :黒子テツヤ
2015/11/26(木) 21:47

赤司君に言葉を掛けるのは随分と…本当に随分と久しぶりです。
 
お手紙をどうもありがとうございました。反応が遅れてしまったことをお詫びします。僕は今実家を出てしまっていて、けれどあの家も家族が住んではいるものですから、荷物は必然的に受け取られてしまっていて。母親から連絡があってから、今日まで取りに行く事が叶わず、随分と遅くなってしまいました。君のことですから、返事など期待していないと言われるでしょうけれど、僕は頂いた気持ちや手紙を受け取るだけ受け取ってのタイプではないので、これもまた僕の自己満足として受け止めてくれれば幸いです。
 
 
 
きっとアドレスももう変わっているでしょうし、一声掛けるのにどういう方法を取ろうかも悩んだんですが、色々と考えた末に此方を選んでみました。もうパスワードすら忘れてしまっているかもしれないから、これが反映されるかすらも危ういんですが…。でも一つ、祈る気持ちで。僕の指が覚えている数字の羅列を、試してみたくて。そもそも君がまだ此処を見る可能性すら奇跡に等しいものかもしれませんが、それもまた、僕の自己満足。残しておければ、それで満足、なので。
ここ自体は、実はきちんとブックマーク、残していたんです。ですからすんなりと。更には時々、懐かしむよう開いてみたりと、そういうことも。赤司君から貰った手紙も、今も全部きちんと残っています。丁度秋口に体調を崩して休みをもらって、することもないので部屋を片付けていたときなんかに、全て目を通してみたりね、したんです。初めて頂いたポストカード、僕嬉しくてずっと手帳に挟んでお守りにしていたんですよ。懐かしいです。全部、きらきらとした思い出で、僕は余り物覚えが良い方ではないんですが…それでも詳細は無理でも、とても、愛しかった事を覚えています。
 
 
 
だから、嬉しかったです。君からの手紙。君からの気持ち。
 
 
 
直接文面に触れる内容は此処には綴りませんが、それだけ伝えさせてください。
 
 
 
どうか君のこれからが、安寧でありますよう。小さな幸せと穏やかな時間に満たされますよう。僕との日々が、暖かな思い出として君の支えになれれば、僕はそれだけで十二分に幸福です。ありがとうございます。赤司君。

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144 :赤司征十郎(黒子のバスケ)
2014/05/01(木) 01:09


咲き終えの
夜々の戯れ
薄積みに
なんと見かたし
落つるひとひら

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143 :白鬼院凜々蝶(妖狐×僕SS)
2014/02/28(金) 01:23

>「群れるのが好きだな」

事有る毎に共に居たがる関係は重たくて息苦しい。共に居ることの安心感に、充実感に、僕は未だ慣れない。

薄情だと思う。
冷酷だと思う。
合理的で、
利己的で、
現実的。

もしもの話だ。
僕が刺されたとして、その場に君がいたとして、君は痛みを感じるだろう。だけど其れは僕の負う痛みじゃない。
君が君自身で作り出した偽物で、君が自分に付けた傷で、それは必要のないものだ。
その場に君が居合わせなければそんな痛みを負う事もなかったのだから。

君が居合わせなかった世界で刺された僕が何食わぬ顔して君との日常を過ごせば、居合わせてしまった君が可哀想なくらい平和に過ごせる。

無駄な傷は負うな。
唯でさえ他者から傷を負うような日々だ、貧血を早めるだけの無駄な行為だ。

君が自身で付けた傷は何の癒しにもならない。




疑えば疲弊する。
気付かない振りは幸せだ。

人が共有できることは限られている。
君は見つけられるか知らないが、きっと、それは見つからない。

残念だが僕の勝ちだ。

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142 :戦場ヶ原ひたぎ(<物語>シリーズ)
2014/02/08(土) 02:38

阿良々木くん、私今日とても幸せなことがあったのよ。

可笑しいわね、その少し前までは久しぶりに腹を立てていたのよ。他人に期待をしない私が何に怒ることがあるのかって話だけれど、一応弁解させてもらうなら期待じゃなくて義務よ。
義務の放棄は、されると…何と言うのかしら、とても、不愉快なの。すべき、って言う言葉を使うことを、世間ではあまり良くは思われないようだけど(責任感が強くて鬱になりやすいとか云々)でも、義務を放棄した人間に何が残ると言うのかしらね。何の価値が残るのかしら。
例えば学生が勉学を放棄したとして、空いた時間をそれ以上に有効に使う人間が一体何人いると思う?
働かなくなった大人たちが暇な時間にどれ程進んで社会貢献すると思う?

義務は疎ましくも自らを生成する影のようなものなのよ。嫌でも着いてくるし、影踏み鬼でもして遊んでやるくらいの気概を持たなきゃ呑まれるくらいに厄介な。

でも私、義務って嫌いじゃないのよね。
自分のすべき事がわかるじゃない。
じゃなきゃ私、何をしていれば良いかわからなくなってしまうもの。自分が居て良いかさえも直ぐに疑問を抱くでしょうね。
私が自分の世界にのみ生きていけるなら他人の認識は必要ないけどそうはいかないでしょう?世間の中で私は私を認識しないから、他人の認識がないと酷くボヤけてしまうの。
だから、義務は必要で大切なもの。
その義務を果たさない人に、私は、嫌悪を抱いてしまうのよね。義務があり責任があるのに果たさない人。果たせないなら、存在の必要がないじゃない。少なくとも、私には必要はないわ。大人の世界はもっとシビアなはずよ。

それでまぁ、不快な思いをしていたわけだけど。
その苛立ちがね。消えたのよ。
綺麗に消えて、幸せを感じるくらい。
空から降る大量の雪に。

とても驚いたの。吹雪なんて見たことなかったし、体感したこともなかったから。
あぁ、原作では雪道を毎日歩くような私たちだけれど仕方ないじゃない、姿口調は真似出来ても住み処までは真似出来ないのだから。目を瞑るか、私に目を潰されなさい。

皆が吹雪から逃げる中、私、思わず吹雪に飛び込んだわ。
だってとても綺麗だったんだもの。雨みたいに降る雪が。
身体中真っ白になって、目に止まる雪の重さに瞼が開かなくなって、冷えた頬に当たる雪の痛みとか、口を開けば入る雪の味とか。
初めて体感したの。
いつだったか、影の薄い子が赤い子に言っていたでしょう?雪の中で倒れていたら云々、って。私、あれが本当に出来る気がしたの。
実際は、地面に積もってはいなかったけれど、視界が雪に覆われて瞼が開かなくなって、冷たくて痛くて、服には段々雪が積もって、だけど寒さなんて感じなくて、綺麗で、幸せな感覚。思わず信号をきちんと守ったわ。日常になればきっと疎ましく思うのでしょうね、呑気に楽しむ私とは違って、迷惑している人もいるでしょうし。

だからこそ、私は幸せなのだと思ったのよ。
未知を体験して、楽しいと、嬉しいと感じられるなんて、子供の特権でしょう?歳を重ねてもなおそれを感じられるなんて、なんて幸せなのかしらね。

明日の朝になればニュースで騒がれるでしょうから、そんな話が届いていない今のうちに。

貴方はやっぱり、気付かないのでしょうけど。
気付く頃には私はもうこの感覚を忘れてしまっているわ。それはとても、残念ね。

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