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+翡翠の玉座+
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投稿パスワードをもう忘れているんじゃないかと思っていたけれど、指は確実に覚えていた。 変な所で記憶力が良いが、最近人の顔が全く覚えられない。多分、覚える気も無いんだろう。 夏の記憶は既に朧気なまま、酷暑をバテもせず乗り切り、最近は日中にまだ暑さを感じても夜は肌寒さを感じる。 今くらいの夜が一番過ごしやすいな。 態々の薄着で冷える肩に夜中目を覚まして、あぁまだ夜だと、安堵して再び眠りに就く。 気に留める間もなかった秋の訪れを、周りからの話で知って今年漸く行ってみたいと話していた彼岸花畑を見に行った。…テツヤと出逢う前から行きたいと言っていたからもう何年越しだろうな…。 見慣れない田園風景は新幹線とか移動中の車内から時折見る事はあったが実際降り立つと思っていたよりも広くて、空を阻むものも無くて、鳥の鳴き声や虫の音ばかりが響いて、稲が薫って、お腹が空いて。 …時折出没する見慣れない虫たちはなかなかスリリングではあったが。 彼岸花の群生に「こんな花束が欲しい」と言う話をしたら一緒に来てくれていた玲央に「普通こんな花束贈られたら厭がらせになると思うけど…」と突っ込まれたが、残念ながら僕には厭がらせにはならないからその際は別の花でお願いしようか。 大体花束は貰えば嬉しいものだろう。僕は一般的に縁起が悪いと言われる菊でも気にしないから困ると言えばラフレシアくらいかな。あれは多分発送の段階で難儀だし、運送会社の人間もかなり迷惑を被りそうだ。 帰り際、車まで戻る道を行きと違うルートを辿り彼岸花を眺めながら歩いていたらふと届いた香りに「金木犀だ」と顔を上げたら丁度家の庭先に金木犀がまだ咲ききらないものの小さな蕾を幾つか着けていた。 背伸びをして、深呼吸。今年一番の金木犀の香りに、漸く秋を実感したよ。 玲央は「匂いがしているかもわからない」なんて言っていたから僕は金木犀の匂い関しては鼻が良いのかもしれない。 そんなこの秋一番の金木犀の報告を。 山奥だったから都市部の金木犀が咲くのはまだ先だろうけれど。 引き出しに仕舞ったままの香水は中身はないけど僅かに香っているからそのままに、いつか出先で中身を見つけたら買おうかな。 同じ引き出しで眠る指輪をこの間久しぶりに付けたらちゃんと嵌まりはするが、もう違和感があったよ。…やっぱり僕には似合わないな、こういうのは。 代用品として買ったからとても安いものだったけど一番気に入っていたよ、今でも一番気に入っている。 ス●バ事件はこれを買った日だったかな。 その時は確かに、「いつか」を望んでいたけれど、今思えばこれだけで十分だったな。 あの指輪だけ、錆もせずに今もまだ輝いているよ。
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