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┗1451.禎祥と警鐘
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1 :
宮_侑(ハ_イ_キ_ュ_ー_!!)
2023/10/13(金) 00:00
一緒に過ごしてきた日数は
1451どころやない。そんな
片割れとは言い合いも取っ組み合いの喧嘩もするけど、隣におらんことなんか考えられへん。だから今までもこれからも、お互いがお互いの隣におるのは何があっても変わらん。そうやろ、
治。
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7 :
宮_侑(ハ_イ_キ_ュ_ー!!)
2024/12/25(水) 21:41
「宮選手が今欲しいものは何ですか?」
インタビューでアナウンサーから投げかけられた質問に、俺は一瞬止まった。ありふれた質問やのに。
金?まああって困るモンちゃうやんな。
人気?それもまああって困るモンではないなあ。
何やろ。あ、時間や。バレーの練習の時間、試合の時間も必要やけど、やっぱりサムと過ごす時間。
「時間が欲しいですね。やりたいことっていっぱいあるじゃないですか」
そりゃあやらなあかんことももちろんいっぱいある。でも何より、まずサムとゆっくりしたい。
俺の答えを聞いたアナウンサーはきょとんとしたあと、思い当たる節があったんか笑って頷いとった。この人もむっちゃ人気のある人やし、色んなやりたいことがあるんやろなあ。今よりも更に人気のアナウンサーになりたいとか、美味いモン食うて楽しく過ごしたいとか。いいやん、そういうの。ほんま欲深いなあ、って笑う人がおるかもしれんけど、自分の欲しいモン手に入れるために頑張ることは何も悪ないやんか。
それから何日か経った日の夜。
「欲しいモン、ってインタビューの話やろ。見たで、その結果がこれなん?」
クリスマスは夜に少しだけサムの顔を見に行っておにぎり食うて、のんびりしゃべっただけやった。だから俺は予定を調整して年末年始に休みを作って、それをカレンダーアプリに入力してからサムにスクショを送った。俺の欲しいモンはサムとの時間やからしっかり取ったで、ってメッセージ付きで。んで、電話をかけてすぐに出たと思ったらさっきの台詞や。もうちょい喜んでもええやん、って思ったけど、そもそも23時過ぎてるのにすぐ出た時点でこの話を喜んでくれとるってことやんな。つまりこれはサムの照れ隠しや。
「ちょっと遅めのクリスマスプレゼントや」
「ちょっと?もう一週間近く過ぎてるやん。そもそも『俺の欲しいモンはサムとの時間』って言うとったんやから俺へのプレゼントとは言えんやろ」
「細かいこと言う男はモテへんで」
俺の抗議に、サムが電話の向こうで笑うのが聞こえてきた。
「別にモテんでええわ、俺のこと大好きでしゃあないのが既におるし」
「ほんま腹立つわ!!っていうかサムだってあれで『あのインタビューのことか』って分かったってことは、俺が出てる番組しっかり見てるからやろ!俺のこと大好きやん!」
「いや、北さんが教えてくれてん」
「北さん見てくれてるんや!?」
「今度ちゃんとお礼言うとくんやで、ツム」
「そうやけどそうやないねん!」
そんなことを全力で返しとったら学生の頃を思い出した。あの頃は二人でずっと騒いでたなあ、たまに親に怒られたりしたん覚えてるわ。
どうしよ、むっちゃ楽しみかもしれん。かもしれんやない、楽しみや。なあサム、二人で昔みたいに一晩中喋ろな。だってサムも俺とおる時間が大事やろ?……って、わざわざ聞かんでも分かっとることやけどな!
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6 :宮_侑(ハ_イ_キ_ュ_ー_!!)
2024/11/27(水) 11:30
大人になって離れて過ごすようになったら、サムを思い出すことが増えた。
今何してるんやろ、ちゃんとめし……いや、サムのことやからそれは食うてるやろけどしっかり寝てるんかな。学生の頃は俺を起こさんと先に学校行っとることもあったから早よ起きるんは平気やと思うけど、忙しくて寝られへんとかそんなんなっとったらどうしよ。こんなん言うたら「ツムは過保護やな、俺もう20歳超えてるんやで」って呆れながら返されるに決まっとる。そんなん分かってんねん、何年一緒に暮らしてたと思っとるん。んでついでに言うとあの時俺のこと起こしたって言うてたけど、俺が気付いてへんかったからあれは無効や。
それは置いといて。
電話してええかなあ、今って忙しいんやろか。電話やなくてメッセージにした方がええ?けど文章やったら『元気やで』って返してくるやろ、絶対。だからせめて声聞ける方が、とか考えてたちょうどその時やった。
スマホが震えて、誰や、って慌てて画面見たらずっと考えとった片割れの名前。
思わず笑ってもうた。ごちゃごちゃ悩まんと、かけて出えへんかったら絶対折り返しが来るし、タイミング良く出て話せたらラッキー。それくらいのノリで考えたら良かったんや。安心したら伝えたいことがもっと込み上げてきたわ。
来週2日間休みあるから泊まりでそっち行ってええやんな、あとこの前の試合で行った先で買うた土産あるからそれも持っていくわ、って言うたら「相変わらずツムは強引や」って笑うんやろなあ。そのそわそわした気分のまま出たからか「なんや楽しそうやな」って茶化されたんはむっちゃ恥ずかしかったけど、今度は俺の方からかけたろ。俺がサムを思い出すってことは、つまりサムもおんなじなんやって証明されたんやから。だってそうやろ。なんたって俺らは双子やもんなあ、サム。双子は以心伝心で気持ちが通じるっていうのは嘘や、みたいな話聞いたこともあるけど俺らやで?……まあ、ついさっきまで電話してええか迷ってた俺が言うことちゃうけどな!
よし、じゃあサムに会うまでにもうひと頑張りして話のネタ増やしとかなあかんわ。せっかく久々に会うんや、ちょっと見ん間におもろい男になったやんって言わせたる。
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5 :
宮_侑(ハ_イ_キ_ュ_ー_!!)
2024/10/13(日) 05:58
昔読んだ漫画で「好きな人が隣にいてくれればそれでいい」、そんな台詞を言うてるシーンがあった。その時の俺は、何言うとるんやろと思った。好きな人が隣におるんは普通のことやん、って。だって俺にとっての『好きな人』は治や。生まれた時から一緒におる、大事な片割れ。今思えばしょうもない喧嘩もようしたけど、それでも俺らはずっと一緒に過ごしてきた。起きるのもめし食うのも寝るのも、ずっと一緒に。
俺、治のことがただの兄弟としてやなくて特別な意味で好きなんかも。
そううっすら気付いたんは、小学生の頃に同級生の女子が治を好きやって噂を聞いた時やった。俺の方が好きやし、って思ったんを覚えとる。そして中学生になって治が告白されたって聞いて、あの懐かしい漫画のシーンを思い出したことで確信した。好きな人が隣におるんは当たり前やないんや。治にもし恋人が出来たら、部活帰りにコンビニの新商品を見る機会もバレーの話も減るかもしれへん。でもそんなん、俺とあちこち行って喋る方が楽しいやんか。双子で恋人やで?最強やろ。でも、なかなか言えんかった。
本人には言わへんけど治がモテるのは当然で、俺は性格があかんらしい。けど、そんなモン知らん。別に人に嫌われて死ぬ訳やないんやからどうでもええし、とにかくこの先もずっと、治の隣には俺だけがおりたかった。
だから言うかどうか迷い続けてる間に高校生になって、治がまた告白されたって聞いた直後に、勇気を振り絞って告白した。もう抑えられんかった。いつか治に恋人が出来たらもう二人で行動出来んようになるなんて考えたくなかってん。
俺の告白を聞いた治はむっちゃ戸惑っとった。そうやんな、急に真面目な顔した俺が言うた言葉が「俺、治のことほんまに好き」なんやから。でも治は笑ったりはせえへんかった。俺を真剣な顔で見て、同じ気持ちになるまで待っててや、って言うた。だから俺は待った。俺が治を幸せにするしそう出来るんは俺だけやと思って告白したけど、治がそう思ってくれるかどうかは分からんやん、治が俺とおんなじ気持ちにならんかったらどうしよ、って急に怖くなったりもした。けど俺はやっぱり治が好きで、怖さよりも「絶対『他の奴とおるより侑の方がええな』って思わせたる!」って気持ちがますますでかくなった。毎日くっつく俺を治は受け止めてくれた。朝は二人で起きて夜は二人で寝て、幸せやなあって思っとった。
それから、治が「侑、俺も好きや」って言うてくれたのが6年前の10月13日。これから治の一番近くで一番大事にさせてもらえることが信じられんで、治を思いっきり抱き締めて何秒か経ってからやっと実感した。今日から恋人なんや、って噛み締めてる俺に治はどんな顔してたんやろ。俺がしがみつく勢いやったから見逃したわ。あ、けどその後ちょっとだけ離れて顔見たら照れ臭そうに笑ってたやんな。俺、何があっても治のこと泣かせへんってその時に改めて決意してん。大人になってからもワーワー言い合いするかもしれんけど治を悲しませて泣かせるようなことはせえへん、って。
そう決めてから大人になった俺は、ええ恋人になるって目標をずっと持ち続けてる。っていうか俺、この6年でちょっとはええ男になったと思わん?……なってへん?じゃあこれからも俺の隣で見ててや。んで、ええ男になったなって思ったら教えて。どや、あの時俺を選んで良かったやろって笑ったるわ。
俺は色々手のかかる男やけど、とにかくこれからも治の隣は俺のモンやし俺の隣は治のモンや。一生やで!だって俺は治のこと愛しとるからな!
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4 :牙頭猛晴(ジャンケットバンク)
2024/08/01(木) 13:30
部屋で仕事を片付けて、ぐっと体を伸ばした。そしてスマホを手に取ってニュースに目を通していく。議員の不祥事や芸能人の結婚の報道の中に、リスが暑さのあまり溶けている、という記事が紛れていた。
タップすると、確かにリスが溶けたように伸びている。窓の外へ視線を移した。なるほど確かに暑そうだ。クーラーの効いた部屋の中から見ているからそんな呑気な感想が浮かぶが、きっと外に出た瞬間に焼け付くような日差しに参ることになるだろう。
これから様子の確認のためにジョイキッチンに顔を出す予定がある。想像するだけでげんなりした。
あれから暑さに挑む覚悟を決めたつもりで店に向かったが、車の乗り降りのその短い時間だけで熱風に襲われた。店内に入った瞬間、生き返ったと感じたほどだ。店には学生が多く、夏休みであることをしみじみと感じさせる。お前がこの前送ってきた画像が、などと賑やかで、俺と伊月も勉強の合間に色々なものを送り合っていて似たようなものだったなと懐かしくなった。
大人になった今でも、俺は何かあればスマホのメッセージアプリを開いて伊月の名前に触れる。社会人になった伊月が通知音を聞く時は、ろくでもない内容であることも多かっただろう。どう考えても非のある人間を弁護することを、そしてそれが出来てしまう優秀さを買われた男の元に入る連絡が良いものばかりのはずがない。だから俺はいつも、気が抜けて笑ってしまうようなことを送った。
——俺のてのひらくらいある大きさの蝶を見つけて、いい年して追いかけちまったぜ。
——外を歩いてたら子供に手を振られて凄えびびった。
本当にくだらない、堅苦しい連絡に紛れ込むにはあまりにも場違いなものだ。でもきっとそういうものが伊月には必要だろう。
改めて窓の外を見た。何度見ても相変わらず太陽は眩しい。
やってきたスタッフに案内された唯一の空席に座って、すぐにドリアを注文した。ありがたいことに、今日は外に追い出す必要のない良識的な客で賑わっている。注文が通ってこの席に運ばれてくるまで15分以上はかかるだろう。
取り出したスマホの閲覧履歴を辿って、例のリスのニュースを表示させる。
——なあ、外は暑いぜ。俺もこのリスみたいに溶けちまうかもしれねえ。
そのニュースのリンクと合わせて、そんな文章を打ち込んで送信した。送り先はもちろん、今日は休みだと言っていた伊月だ。きっと伊月は、溶けそうなガッちゃんは今どこにいるんだ、とかそんな返信を送ってくるだろう。
そういえば今取り扱っている季節限定のパフェは伊月が好きそうだと考えたのと、伊月からの返信を知らせる着信音が鳴ったのはほぼ同時だった。
——今どこにいるんだ?僕も行く。まさか溶けそうな暑さなのに外にいる訳じゃないだろ?
予想通り、貴重な休日に俺に会うことを選んでくれたのだと分かる言葉に笑みが浮かぶ。
——待ってるから気を付けて来いよ。
俺もそう返事をして、居場所を知らせるためにそのパフェとジョイキッチンのロゴの写真を続けて送った。数秒後に既読の文字が付く。
数十分後には、暑さなど全く感じていないかのような顔でこの店に来るはずだ。この猛暑の中であの長い髪を下ろしていても平気な理由を聞くのもいいかもしれない。それにしても、この涼しい中でパフェを食べる伊月と話しながら過ごす時間ほど贅沢な夏の過ごし方はない。
あれこれと考える最中で浮かれていることを自覚して、誰に聞かれたわけでもないのに、あくまでこの店内の楽しげな雰囲気にあてられているだけだという言い訳を並べる。同時に、伊月を前にしたらそんなことも忘れてデレデレしちまうくらい好きなくせに、と往生際が悪い自分に呆れながら。
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