出戻っちゃった……。
完全にただの家出息子。旦那だけど。いやこんな奴が旦那で本当にいいの? ダメじゃない? 僕の脳内会議の四割はまだ納得してないというか、お前マジで……? って顔してるけど。ちなみに残り五割は傑ほどのお人が言うなら……で、一割は泣いて感謝してる。自分で決めておいてするんじゃないよみっともない。
いやほんと、勢いで始めたけど勢いで決めた訳じゃなかったから、なんかもう、なんなら傑の日記も消されると思って全部スクショしてさ〜……この段階で相当かっこ悪い……。というか傑日記やってたの!? ほんとに!? 全然教えてくれなかったじゃん! ぷんすこ!(怒られるべきは僕)
無事まあただいまって言って、抱き締めてもらって、なんか数日振りに爆睡して、本当良かったよね、傑が心広くて。あとメンタル安定してて。それから僕のこと好きでいてくれて。
そんで起きてここ見たら、なんかすっごい顔見知り(顔しか知らない)の日記増えてない!?
全部後で本棚入れるから、首洗って待っておいてね! 傑の日記も入れちゃお♡
だから本当に雨の中迎えに来てくれなくても大丈夫だよ。
僕濡れないし、それなのに傑が傘要らない奴のため外に出ることなくない?
ほら、ひとりの雨も楽しみようあるよ。それに、もし濡れたら風邪ひいちゃう。
僕の人生に、傘持ってくよ、迎えに行くよ、って言ってくれた奴が一人いた。それだけでもう、十分過ぎるくらいだから。
それを思い出すだけで、きっとこの先頑張れる。人生良いことあったなーって思える。帰り道じゃなくて地獄への一本道だったって、ピクニック気分になれる。それってすごくない?
そんな幸せなこと、もう無いと思ってた。だから、これで十分。
心残りがあるとすれば、僕も傑のためになにかしてあげられたら良かったなあ。
何があったってお察しの通り、僕が部屋を飛び出してきた訳なんだけど。これについて傑はマジで何も聞かされてないし悪いこともしてない、純度100%の被害者だから。
ただ、僕が、前触れ無しに、部屋を飛び出した。これだけ覚えて帰ってね! 覚えなくてもいいけど。
やー、なんかもう、もう、カッコ悪いね! 僕がカッコよかったことなんて一度たりともないけど。いつだってカッコよく見せかけてただけ。
ほら、僕ってGLG五条先生じゃない。カッコよくて、強くて、頼り甲斐があって、面白くて、なんでもできる。誰よりも強いから、最強って呼ばれてる。
それはね、別にいいんだ。慣れてるし、そういうもんでしょ。努力して見せてる部分も、脚色してる部分も、演出してる部分も、それを生まれつきのマジモンだと信じてもらえるのは嬉しいよ。僕にはそう見せることができて、相手はそう見えたから寄ってくる。僕のカッコいいとこ、面白いとこ、頼れるところに用があって、そこを満足させてあげる代わりに僕も楽しませてもらって、それでwin-win。
でもさあ、傑は多分そうじゃないんだよね。別に僕の何が気に入ってるとか、どこに用があるとか、そういうことじゃないんだと思う。こんだけ話してれば分かる。すごい好いてもらってる。
だから多分、僕がどんだけ役立たずになってもお願いすれば、というかしなくても傑は一緒にいてくれる。でも、それって僕だけが一方的に得をする流れでしょ。傑に得がない。
目も疲れて任務は胸糞で上層部はどいつもこいつも脳みそ溶けてる、みたいな夜にさ。無性に傑の声が聞きたくなって、起こしそうになって、あーこれダメかも! ってブレーキ掛けた。掛かって良かった。割とギリギリだった。
でもさー、その瞬間に分かっちゃうじゃん。僕今傑にカッコ悪いところ見せようとした、見せてもいいと思った。僕だけ良い思いをしようとした。傑のこと利用しようとした。起きなかった傑が、朝どう思うかまで想像できんのに。
それは一線越えるギリギリでしょ。運良く止まれただけ。だから今度こそ越える前に、部屋出てきちゃった。
って感じ! 上から読んでも下から読んでも僕が悪い。この記事も別に同意とか求めてなくて、僕がただ傑悪くないよ、って言うよりも説得力が出るから書いただけ。
性根が良いとこのボンボンのままだから、なんでも欲しがっちゃってダメだよねー。そういうの全部やめた筈だったのに、まだしつこく残ってたのも腹が立つ。
傑にも申し訳ないよね。僕がもっと強ければ、今日も普通に二人で話して楽しく終われたのに。百歩譲って部屋抜けても馬鹿正直に説明しなければ、昼過ぎにはもう呆れてどうでも良くなれたかもしれない。どっち付かずだから、嫌な話で一日潰しちゃった。傑の今日の終わりが良い気分じゃなさそうなのが、本当に申し訳ない。明日はいい日になるといいけど。
僕の今日は寝坊せず用事にも間に合ったし、三連休最終日に観劇も外食もできたし、ご飯も味がして美味しいし、雨降らなかったし、夜風も気持ちよかったし、日中元気だったし、さっきちょっと寝たし、いい日だったよ。元気いっぱい!