コスプレっつーのはどうにも好かねェ。
特に女物の服なんざ身に付けた自分を想像しただけでクッソ萎える。
ンな俺が唯一やってやんのは、所謂彼服？
世間がどう言ってンのかは知らねェが鋭児郎の服を身に付ける事なら抵抗無くやれる。
つーか、日常的にやる。
互いの服は寝室のウォークインクローゼットに纏まってっからその日の気分によって勝手に借りることがある。
鋭児郎はそれを漏れなく喜ぶ。
自分の服を着た俺にグッとくるらしい。
写真をねだられたことは一度や二度じゃねェ。

記憶に残ってンのは一年くらい前。
流行りの感染症にヤられた後病み上がりにしたセックス。
寒くねーようにって一回りはデカイ鋭児郎のパーカーを着て、シた。
ご丁寧にフードまで被って正常位でシたら最中も鋭児郎の匂いが常にちらついて、頭の先から背中、正面、全身を包まれてるみてェで癖になるくらい良かった。
今年のハロウィン。
気紛れで勝手にパーカーを持ち出してチープなアレコレをつけた。
鋭児郎は気に入ったみてーで２回終えるまでパーカーを脱がせなかった。
ナニ、とは言わねーもんでぐしょぐしょに濡れたパーカーの裾。
鋭児郎の私物を汚すのは妙な興奮をもたらした。
少し前にされた×××もそう。
未だ捨てきれねー雄の習性に自嘲する。
それをはるかに超えて満たされる瞬間を知ってンのに。

抱かれる度に好きだと思う。
いつになっても、何度目であろうとも。
溢れて苦しいくらいに、好きで好きで堪ンねえ。

毎年ダチが主催するハロウィンイベントに顔を出しとる。
去年は参加してたその筋のプロに捕まって本格的なゾンビメイク。
衣装まで着せられりゃ顔が割れずに思いの外気に入った。
今年ダチから渡されたのは牛柄の耳、首輪、尻尾。

｢お前はエロいの担当。コレな｣

どこから突っ込んでいいか分りゃしねえ。
が、チープなソレを付けて妙に納得した。
耳、顔、首輪、尻尾…つーかケツ、最後に胸。
纏わり付く視線が違ェ。
こりゃあ鋭児郎に怒られっかもな。
そこまで思ったら気分が上がった。
わーわー喚く姿もイイ。

その話をしたら写真をねだられた。
そりゃ、スマホの中に入ってっけど。

たまには驚かせてやっかな。

籍を入れて1年後、これを逃したらもうしねーだろってことで二人で式を挙げることにした。
撮影班だけ引き連れて、軽井沢で。
これ以上あるんかってくらい上がってた夜、予約してた宿を最後まで楽しむ間もなく揉めた。
過去一、揉めた。
もう駄目だと本気で思った。
修復不可能と判断するまで行っちまったら元に戻ンのにも長ェ時間がかかって、漸く戻ったトコロ。
例の歌を聞いて、そうか…戻ンなくてもいいんかって目の前が開けたアレがきっと戻った瞬間だった。
鋭児郎の言う軽井沢はリベンジ。


鋭児郎が実家から帰ってきた。
久々に一緒に過ごしながら昨日見た夢の話をして笑い合った。
今夜は一緒に寝る。

小さいベッド。

メキメキと育って相当デカくなった俺。
勝己よりも大分デカイ。
一応俺の個性は硬化。
だからより身体をデカくデカくをひたすら心掛けて鍛え上げて仕上げたんだけどな。

で、今日久しぶりに自分の部屋に来てベッドに転がって驚愕した。

ちっせ！

足が下手したら出ちまうのでは？
俺はそんだけデカくなっちまったんだなって痛感したんだった。

もちろん早速勝己に報告。

「足出るンじゃねーの」

やっぱし思うことは同じだった。
思わず笑ってしまった。

「寂しがれよっ。って気持ち、1、2割ねェ？」

ふと問われた言葉。

ぶっちゃけて言うとある。
もちろんある。
寂しいぜって言われたらめちゃくちゃ嬉しい。
でもそんな上から目線ではなくて、寂しいって思ってくれたら嬉しいな、と思う感じかな。
でも喚いてるみたいで可愛いって言う勝己に、うおおってなった。
なんつーか、勝己にはずっと勝てないよなっておもう。

お互い今日はベッドが別だけど、暖かくしてしっかり寝てほしいな。

寝れるか？
俺は寝れるかなぁ。

あんま酔わない俺と、本気で酔わない親父と、すぐへべれけになっちまうお袋と。
3人で飲んでたけど、お袋が眠かったらしくて早々にお開きになった。

んで、久しぶりに自分の部屋に来て色々見てるんだけども。

そういやうちに挨拶に来た時も俺の部屋に来たんだよな。

学生ん時は寮に入る前に呼んだことあったけど、こんな関係にはなるとはついぞ思ってなかったから。
今思えば本気でアプローチして良かった。

なんかすげぇ感慨深い。

もうずっと一緒に居るんだな。

ちょっといつもと違うシチュエーションだから色々考えちまうな。

明日は自宅に早めに帰って出迎えよう。
おかえりって抱き締める。

やっぱし勝己の所が帰る場所だからよ。