300騎近うも英霊が居りゆうと、まっこと編成の組み換えからしてたいぎぃてならんらしい。基本は全体宝具のアタッカーを二人、攻撃宝具を持たん者なり絆を深めちょきたい者を一人の三人編成で周りゆうがじゃけど…。
「アサシーン！アサシンの全体宝具の人ぉー！あ、Arts宝具でお願いします！……あれぇ、もう居ないの！？」っちゅうマスターの声が虚しゅう辺りに響きゆうがを何遍聞いたか知れんちや。
マスター、わしらアサシンはその名の通り暗殺者。そもそも一息に大勢を倒してしもうたら暗殺にならんき全体宝具持ち自体が少ないちや。その上その技の粋を磨き上げちゅうからこそのArts宝具ともなれば……尚更一技一殺。ほりゃあ単体宝具でもないとなかなかお目に掛かれん代物じゃってもおかしゅうないろう。

まぁ勿論？
剣の天才なわしの宝具も？
Artsの単体宝具ですけどぉー？
魔剣ち呼ばれちょりますけどぉー？？


……らぁてイキがった所で、しょうげに単体宝具の出番は少ないきなかなか役に立てんのじゃがの。
はぁ…、退屈ちや。酒を飲む以外する事ないがよ。

例え話やのうて。わしは黒猫に、あいたぁは真っ白いサモエドに。転げ回る様にして遊んじゃろうと思うちょったけどあいたぁはまだ人の姿のまま、せんとならん事もあるき今霊基異常を起こす訳にはいかんけんど、先に体が猫に変じてしもうたわしをあいたぁはめっそう可愛がってくれゆう。

犬には何遍かなっちゅうき猫もそう変わらんち思うちょった。正直、犬で居る時に比べたらあいたぁに対して尻尾振ってしもうたり、撫でられたさの余り纏わり付いて離れん様になってしまわいで済む分楽勝じゃち思うちょったがよ。
ほれどころか、あいたぁが猫じゃらし持ち出しても、美味うて堪らんおやつを持ち出しても、猫特有の気まぐれ具合でツンツン振り回しちゃろうとさえ思うたんに…。

ひとっちゃ思う様にはいかざった。

もうの、あいたぁの匂いがしゆうだけでいかんがよ。勝手に喉がグルグルゴロゴロ鳴り出しゆう。あのふとい手で包み込む様に頭を撫でられたりしたらもういかん。尾っぽの付け根をトントンされようもんなら腰が砕けた様に立ちも出来ん。
あいたぁの側に居るだけで、一緒に歩いちゅうだけでもう遊んで欲しゅうて構われとうてどがぁにもならん気持ちになりゆう。

犬で居る時の方がなんぼか弁えられちょったんに…。
とんだ誤算ちや。

【書生】
しょせい
【書生】
1.
勉学期にある若者。
学生や旧制高等学校生徒、また旧制中学校の高学年の生徒。
 「―さん」
他人の家の世話になり、家事を手伝いながら勉学する者。
 「―を置く」

漢語本来は、勉学をする余裕のある者という意味合いだったが、日本では主として明治・大正期に、他人の家に住み込みで雑用等を任される学生を意味した。



──じゃと。
御維新が成った後の世で、わしら郷士にゃ夢のまた夢じゃった藩校みたいな場所へ通い得たかも知れんわし…か。わははっ！まぁ刑死しちょらざっても学生になれる様な年はとっくのとうに超えちょったき、たらればを考えてもしょうないのう。
ほじゃけど、18やそこいらで誰ぞの世話になりもって学問に励む、研鑽を積む、らぁて…武市先生の下でやっちょった様なもんなんじゃろか？ほれとももっと小難しい…？算術らぁても好かざったけんど、思想や政らぁは余計にややこしゅうてわしにはサッパリやったちや。
マスターの生まれた現代っちゅうがは、身分に依らず女子供でも区別無う学べゆうらしいきに、学問が大事っちゅうがはまっこと正しい知見なんじゃったろう。

…ほう言えば。いつかのホワイトデーの時みたいにわしも眼鏡を掛けたらもっと頭が良うなったりせんじゃろか？あの眼鏡があったら、あいたぁが夢見ちょった国の在り方やら何やらも解るんじゃったらえいろうな…。

あいたぁが謝りゆう時、あいたぁは何も悪うない事が割とある。悪うもないのに謝りゆう。やき、ほれが悔しゅうて腹が立って、余計にわしが怒るきあいたぁは更に重ねて謝りゆう…。

あいたぁは何も悪うないんに。


わしが天誅の天才として居丈高になっちょった頃。或いはあちこちに迷惑を掛け通して無宿人にまで零落れちょった頃。自業自得じゃとは言え、到底環境に恵まれちょったとは言えん散々な有り様やったけんど、あいたぁはあいたぁで大それた事をあれもこれもと成しちゅう間も、口さがない連中が後を絶たんかったと聞いた時は……到底辛抱出来ざった。
わしは構ん。しょうげに自業自得じゃき。ほじゃけどお国の為に、未来の日の本の為に駆けずり回っちょったあいたぁが、どういて悪様に言われんとならんかったか…ほれが理解出来んがよ。

訳の解らん事はわしも好かん。面倒じゃきの。
ほじゃけど、ほれならほれでわしみたいに離れてしまえばほれで済むじゃろに…。どういて……。

あいたぁのしゆう事の意味も解らいでも、解らんからこそ悪口を言う様ないけ好かん連中でも、側に居れたんじゃったらほれはわしでもえかったやいか…。どういて、そがな有象無象が近くに居れたんに、わしはあいたぁの側から離れてしもうたんじゃろう…。あいたぁと道を同じうする者は、ほれに相応しい者の方がえいらぁて…、そがな遠慮も見栄も張らざったらえかったちや。

……あぁ、口惜しいのう…。

こがなん絶対面白いやつやいか！くぁぁあああ、どういてこのアサシンはわしや無いがよ…。えいにゃあ…えいにゃあ……。わしもこの場に居りたいのう…。

まっこと面白そうな話を小耳に挟んだちや。江戸の初めに今で言う聖杯戦争みたいな儀式が行われちょったかも知れんのじゃと。くぅぅぅぅ…、へこい！へこいぜよこいたぁら。そがな面白そうなもんに喚ばれゆうらぁて…。

立花かダヴィンチか紫式部にでも頼んで詳しい記録を取り寄せて貰うとするかのう。