仕事はしくじらん。
ほれが一旦引き受けた事なら最後までキッチリやり遂げゆう。
そこを違える気ぃは無いけんど、仕事やないならなるべく手を抜きたいち思うてしまいゆう。楽なががえい。手間は少ないに限るちや。

……やき、この帳面が中程まで沈んだ頃にもう鍵を外してしもうてもえいんやないろうか？ち思うたがよ。
一々ポチポチ鍵開けゆうがも大儀ぃきの。ほれに目立つ場所に置いとく程のもんでもないき、程よく沈んだ所で…ち思うちょったにうかっと上げてしもうた……。

はぁー…、まだ暫くはこのままで居るしか無さそうちや。

ほれもえいけど、まずは自分の身の安全の方が大事じゃろ！！

…………はぁぁーーー。いかん。
更に訳の解らん境地に達してしもうた気がしゆう。毎回毎回呆れる位頭がふわっふわにされゆうけんど、ふわふわのふかふかに耕され過ぎて一層バカになってしもうちょったりせんろうか…？

いや、誰がバカじゃ。わしを笑うたら斬……、…自刃は出来ん。





どうしよう。
どういたらえいんじゃろ…。
このままじゃとわししょうげに何も知らざった頃には戻れんのやないろうか。あいたぁ無しでは生きられん、らぁて熱に浮かされた様に何度も言うてしもうちょるけど…そがな事がまっこと現実になりでもしたら厄介でしか無いろうに。



いかん。
もういかん。もう何も考えられん様になりゆう…。

何が起きちゅうかは言いとうない。
言いとうないけんど……わしが黒猫じゃった時にこじゃんと見ちょったデレデレのなっさけない顔したあいたぁと、あいたぁがサモエドになっちょった時にたらふく見せられた幸せで幸せでしゃあないっちゅう嬉しそうな笑顔。そのどっちゃも堪らんえい顔やち思うたもんじゃけど、今わしの目の前にあるこいたぁの顔が一等堪らん気がしゆう。

あの普段から朗らかに笑いゆう二枚目が、「平和が何より大事です」っちゅう様な胡散臭い笑い方しゆう維新の英雄サマが、こがな顔もしゆうかと思うだけで胸が空く。

あぁ…えいにゃあ…。
こいたぁの人間臭い所、もっともっと見てやりとうてならんちや。

ナイトプール、ちゅうやつがどがなもんからぁてわしが知る由もないけんど…。ピカピカしちょってズンズン腹に響く音がするけったいな場所でのう、あいたぁがこがな所に来たがったんは不思議じゃけんど、夜風に吹かれて涼むんには丁度えかったちや。

ピカピカと言えば、ピカピカ七色に光る面白げな首輪もあって丁度えかったきあいたぁの首に付けちゃったがよ。もふもふフサフサの真っ白い毛から光が透けちょっての、まっこと可愛いらしかった。あいたぁ自身からは見えちょらんせいで黒々した優しそうな目を真ん丸にしながら首を傾げちゅうんが尚面白うての、わんコロになっちゅう時のあいたぁは幾ら甘やかしても足りん位可愛えてならんちや。






ほうじゃ。
忘れる所じゃったけんど、プールサイドで壬生狼らにも会うたちや。ジェットが付いて一層イキり散らかしちょる水着の沖田とお疲れ気味の斎藤と。ヒヒッ、皆がバカンスを楽しみゆう中で巡回らぁて気の毒にのう……わしがおまんらの分まで遊び倒しちゃるぜよ。ざまぁ見ぃ！

高杉が来てくれた。
猫と犬なわしらだけじゃと何も出来んき、量産体制に移った解除薬を持って来がてらわしらの様子を見に来てくれた恩人なんに…。
サモエドに霊基が変わってしもうたあいたぁを撫でようとした、そがな普通で当たり前の事で数少ない輩にこじゃんと威嚇してしもうたがよ。

触られとうなかった。
例え見知った高杉じゃっても、もしかしたら立香や立花が相手じゃっても我慢らぁて出来ざった。わしのじゃき。
サモエド龍馬のもふもふはわしだけのもんじゃき。…そがな独占欲がみるみる大きゅうなってって、高杉の手が伸びて来ゆう事がちくとも許せざったがよ。

まぁ、タイミングがえかったんか悪かったんか高杉相手にシャーシャー唸り散らかした直後で人に戻れたき、詫びやら言い訳やらは出来たけんど…。
しょうげに格好付かん有り様じゃったきひせくったちや。あいたぁも流石に引いちょったんやないろうか。