4周年。

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　4年、か。ついこの間のように感じるってのに時間の流れってのは体感よりずっと早いもんらしい。

　最初はほんの気まぐれだった。その日は授業も部活も休みで、掃除するから出て行けと部屋を追い出され渋々植物園まで昼寝に出向いて、それでも持て余すだろう暇を潰すのに少しでも役立てばいいなんて考えて忙しなく動き回るラギーに言伝を頼んだんだったな。寮長の立場からクロウリーの名前をちらつかせれば無視は出来ない。頼み事だと聞けば多少の時間の融通を効かせた上で来るだろう。……ほぼほぼ全て思惑通りに現れたアイツの悔しそうな顔ときたら、今にも俺の尾を踏み付けるんじゃないかとヒヤヒヤしたぜ。付き合う前から喧しいが馬鹿じゃない、頭の回転も良いし俺を相手に退かねえどころか食ってかかる度胸もある。小言じゃなきゃ話してて悪い気はしねえからと相手に選んだだけあってなかなか楽しい応酬だったんだが、そろそろ戻ると言うとあっさりと腰を上げて植物園を後にしようとする背中に思わず「礼でもしてやろうか」なんて声を掛けちまってた。

　これでも一応王族なもんで、愛だの情だのに纏わりつく面倒事、厄介事は想像するべくもない。特定の相手なんて作るつもりはなかった。死にそうなほどの退屈もたまの暇潰しで飼い慣らして、考えるのが面倒になったら眠ればいい。ずっとそう考えてたはずだってのに、言葉を交わす度に余計にアイツのことが気になって、気付いたら絆されてた。
　律儀で素直で、変なところで抜けてて、痛いところを突かれると悔しそうな顔で俺を睨む男の事が、可愛く見えて仕方なかった。俺のものにしてやりたいと自覚する前に手荒な真似も仕掛けたが……まああれで腹を割って話す気になったなら結果オーライってやつだろう。

　最初の2年は今思えばただただ幸せに過ごしてたと思う。途中擦れ違う事もあったし泣かせた事もあったが、かわいいもんだ。3年目、俺の方で色々とあって、今まで通りの付き合いは出来ないかもしれないと告げた。実際碌に話せない日は数ヶ月に渡って続いたし、俺の事情で部屋だって作り直した。本当に沢山傷付けた1年間だった。……それでもお前が側に居たい、居て欲しいと言ってくれたから、俺はまだお前の手を取れてる。感謝してもしきれねえな。
　ようやく俺の方の問題は片付いたものの一度乱れたリズムはなかなか元に戻せなくて、未だにもどかしい思いも沢山させてると思うが、それでも少しずつ。お前自身の努力や成長や、信頼のおかげで穏やかな日々が取り戻せたと言っていいんじゃねえかと思う。

　こんな男についてきてくれてありがとよ。ヴィル。これまでもこれからも、お前を世界一愛してる。