俺は悪癖持ちの刀だという自覚がある。……あの男の元に合った刀だぞ、それくらい持ち合わせている。───だからこそ。お前の前では抑えて、心の中に秘めてやろうと思っているのに。少しずつ湧いてくる衝動が抑えられない。…………全く。人の心というのは不便なものだなァ。ただの鋼であったころなら、こんなことは考えなくてよかった……が。人の身があるからこそお前に触れられると思うと、悪くはない、とも思う。

………なんつうか。アイツと恋をしていたころはアイツにかかりっきりであんまりなかったけどよ。やっぱオレって甘やかされるタチなんだろうにゃあって自覚が湧いてきた。この間、御前が「お前さんが健やかであるならそれで構わんさ。」とか「お前さんが喜んでくれるだけで僕は満足だとも。」とか……にゃあ？…んな感じのこと言ってたけどよ。分かってんのかぁ？オレ、一応極めてるし練度も頭打ち───あ？んなこと関係ねえって、……。……はー、御前には敵わねえよ。

お前がいればそれでいい、いるだけでいい。この言葉に嘘はない、俺は心底そう思っている。……が。「お前がいればそれでいい」という言葉の中に含みがあるのだろう、という自覚はある。お前がそこにいて言葉を交わせているのならそれでいい、お前が俺を蔑ろにしないのならそれでいい、お前にとっての俺が真綿のような好意で包むに値する存在であるのならそれでいい。……全くもって「お前がいればそれでいい」の一言だけでは片付けられんな。……残念ながら、俺は俺を雑に扱って良いと無意識だろうが思うような刀に対して「これから先の旅路に幸あらんことを」なんぞと願えるような、お綺麗な刀じゃない。ッハ、俺の元主を忘れたか？………あのような男の元にあった刀だ。根本はきっと、変わらない。

…………僕は、物語だ。数ある物語のひとつ、僕が彼の人の子の腰に差されていたことは一度たりともなかったし、あったとしてもそれは空想の話。……だから？だからといって〝僕〟という存在が揺るぐわけではない。孫六もそうだ、彼奴も僕と似たようなものだからな。己を形作るものが多い分、揺らぎにくい、愛刀であって、そうでない。最強であって無敵であり、その実───……まあ、つまるところ。刀剣男士とは愛故に生まれ、この先も新たな物語を紡いで愛され、存在を強固にして行く。うはは！行幸と言うほかないだろう？なあに、分からない？……お前さんもいずれ分かる日が来るさ。美とはなにか、愛とはなにか……がな。

とんでもねえ呂律の回らなさを化け物斬りに晒した。……いや、マジで。とんでもなさすぎる、んだよにゃあ…？おはよう、がおはよつ、になるとかそういうのは分かるぜ。でもよぉ、オレがやらかしたのはそういうんじゃねえの。「4〆5〒4\」例えるならこんな感じのやつ、にゃ。オイ、眠すぎるオレ。流石にそれはねえだろ。……あいつはかわいい以外に思うことはねえつってたけど、……。…………複雑、にゃ。