別にあんたと話したいとかはないんだよね、って言ったら「えっ」とかなんかショック受けたみたいな声出されたから咄嗟にギンガとだったら話しても良いけどってフォロー入れたけどなんであんな男の為に当たり前のこと宣言しなきゃいけないんだよ。って我に返った今。

報われたくはない。
同じ土俵に立って認知されて目が合って会話して。これっぽっちのことで報われた扱いになったら必死こいてガムシャラんなってやってきたこと全部全部この程度のこととしか釣り合わないってことになるから。
報われない方が良い。俺の人生全部奪われるぐらいなら。

連絡来ただけでこんな時間まで眠れなくなるのは馬鹿だろ。
はいはいショーケースに展示された馬鹿はこちらになります。
連絡っつっても次回の企画の打ち合わせっていうなんのトキメキも盛り上がりもない内容なんだけど。
そう都合よくいい事も起きないって。
何も無いとこにドラマを起こそうとしてなんとか画に収めようとしてるお仕事だから知ってるんだよ。
あと残されてるドラマチックな出来事なんてギンガが落ちてくるか俺がドン底まで落ちるかじゃん。
どっちのほうがウケると思う？

ショーケースに展示される馬鹿になっても良いから見世物小屋のバケモノにはなりたくない。
でも一緒になってくれるって言うなら見世物小屋だろうがなんだろうが入りますよ、俺。

抱かれる夢を見て飛び起きた。
寝汗が凄い。水の中から上がったみたいに。
確かに抱かれてはいたけど、同時に溺れていた。溺れる程とかいう比喩じゃなくて。
比喩の方だったらどんなに良かったか。
夢なのに幸せにはしてくれないんですね。
ふーんあっそって感じ。

濁りきった水の中でもがいていた。
水を掻く程に濁りは増して視界を真っ黒に覆いつくして、それが不意に晴れたと思ったら塊になった泥が体に絡み付いてくる。
真っ黒なその泥は人の形をしていた。俺の身体を荒々しく扱うやり方は、紛れもなく俺の想像している通りの、頭で描いていた『理想ギンガ』通りの方法で。
叫び出して逃げ出したい。肺に詰まった濁った水を吐き出したいのに泥混じりの水はどんどん肺を満たしていく。
晴れて俺は深海で水死体になった。