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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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413 :げらっち
2024/08/08(木) 12:26:28
凶華は洗脳の対象にならなかったのみならず、自力で変身し、これほどの力を見せつけた。
この犬は一体何者なのか。
考えはお預けだ。
ドスン、ドスン、地鳴りがした。
私は塔の様に盛り上がった土の上、雑草にしがみ付きながら揺れに耐えていた。
ドスン、ドスン、地鳴りは地鳴りでも、聞き覚えのある地鳴りだ。あの地響きは。
「メカノ助……!!」
グリーングラウンドに、30メートル程の超巨大な力士が土俵入りした。土に大きな足跡を残しながら、こちらに迫ってくる。
鋼鉄のマスクで顔を覆った巨人。その操縦席に居るのは佐奈だろう。コボレ最大の戦力も、敵に回せば最悪だ。
メカノ助と共にまたも数百の戦士たちが来場する。キリが無い。しかもその先陣を切っているのは、緑の戦士。
「公一!!」
グラり。足場が揺れ、危うく転落死するところだった。遥か下を見ると、ドリレンジャーの巨大工機ドリレンオーが地面を掘り、私の乗っている地面を崩そうとしているではないか!
「わ、ピンチ!」
地面が傾く。土に爪を立て引っ付くが、もうダメだ。地面は崩れ、爪は割れ、甲高い叫び声を上げながら落ちて行く。
「ナイスキャ~ッチ!!」
自賛しながら凶華がキャッチしてくれた。犬は小柄ながらも私をお姫様抱っこしていた。ひょろひょろの公一には絶対できまい。もうあなたの方を好きになりそうだ。
凶華がそっと下ろしてくれて、私は地面に足を着けた。私の乗っていた地面は倒れて砕け散った。ドリレンオーは地面を掘削しながら私たちに迫る。巨大なドリルが回転して迫る。
「コマ廻し!!」
凶華はどこからかコマを出し、紐を引いて投げ付けた。コマは空中で巨大化するとドリルとぶつかり拮抗、パンパカパーンとおめでたい音を鳴らし爆発した。私は爆風に煽られ倒れた。
「ナナはそこで休んでな。残りの奴らもオイラが遊んでやる」
煙の上がる中。紫の戦士は、迫りくるメカノ助や戦士陣に立ち向かう。
戦士の筆頭に立つ緑の戦士は、苦無を構えた。
「待って凶華!! 相手はコボレのみんなだ! 傷付けないで!!」
「ったく甘いぜナナは」
凶華は甘党だが冷徹なリアリストであり、私は甘い物が苦手で辛い物が好きだが、甘ちゃんだ。
「ま、そういうところもお前の良さって知ってるぜ。お前のフェロモンにとことん従うよリーダー」
凶華は何かを装備した。武器でも兵器でも凶器でも無い。
おもちゃだ。
けん玉だ。
それは見た目以上の耐性を持っていた。凶華と公一は切り結ぶ。刃物とけん玉で切り結ぶ。
カチン!!
「何してんだよイチ。正気に戻れ!!」
カチン!!
「ナナはお前のこと大好きなんだぞ!!」
「ちょっとちょっと、恥ずかしいこと言わないでよ!」
他人に言われるとかなーり恥ずかしい。
苦無とけん玉が何度も何度も触れ合う。目にも止まらぬ速さで。隙が無い。
隙を作るためか。凶華は高らかに言った。
「イチ! お前だって、ナナに惚れてるんだろうが!!」
「こら……」
その時の私は赤面していたかも知れない。
公一の動きが、少し鈍ったように見えた。
ここぞと、
「つばめがえし!!」
凶華が技を決める。けん玉を大きく振り、赤玉は公一の額に命中。スパン、シャープな音。なかなか痛そうだ。そのままけんを回し、赤玉はお皿の上に乗った。お見事。
凶華は振り向いた。
「ナナ、早く行け!」
「え?」
「ここはオイラが引き受ける。カエを助けたいんだろ? 早く行け!!」
「……わかった」
頼れる仲間と離れ離れになるのは心細いが。
「ありがとう凶華。元気出たよ! 絶対に楓を助ける。またみんなで一緒に、ご飯食べよ!」
「ナナのおごりでな!」
私と凶華は、手を振りあってしばし別れる。
「じゃあまた後で!!」
つづく
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