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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
 ┗427

427 :げらっち
2024/08/10(土) 12:42:38

 私は、唯真っ黒な空間に立っていた。


 ここは地獄か。ついに私も死んだか。
「クソッ……もう少しだったのに」
 予期せぬ事態が起きた。レプリエルは私を失った。彼の目的は絶たれたと言える。けれども私たちの勝ちではない。学園は、コボレは、楓は助からない。トリアージは黒だ。
 私は自分の体を見る。死ぬ直前のままだ。体があるのは有難い。少し歩いてみよう。真っ黒な空間を歩く。いや、空間という形容は正しくないかもしれない。空間も、時間も、ここには無いのかもしれない。あるのは私だけ。
「!!?」
 驚いて肝が潰れそうになった。足元に突如物体が現れたのである。

 天堂茂の死体。

 それはもう随分前に事切れたようで、イロは消失していた。黒の上に仰臥して、白目を剥いている。
 1つではない。目の前には、等間隔に、ずらりと天堂茂の死体が並んでいた。数えると15あった。そして16個目に、しくしくと泣いて居る男が居た。
 天堂茂だ。
 生きている!
 私も、生きている。転がっている死体たちとは違う。
 私は死体たちを跨いで、彼に近寄った。彼は膝を抱えてうつむいて、眼鏡を涙で濡らしていた。

「何、泣いてるの。情けない」

「僕は死んだんだ。こんなに悲しいことがあるものか。泣かずになんていられない」

「でもあなた、生きてるよ。私が殺してあげたいくらいだけどね」

 天堂茂は振り向いた。

「小豆沢七海!!?」

 天堂茂は立ち上がり、シワクチャに顔を歪めて、私の腕を掴んできた。
「教えろ!! ここは何処だ!! どうすれば出られる!! 僕はまだ生きているのか!!!」
「1つ目の答え。さあ? 2つ目の答え。さあ? 3つ目の答え。私が生きてるからあなたも生きてるんじゃない? どちらも死んでいる可能性も捨てきれないのだけれど」
 天堂茂は、クソッと毒づいて私から手を離した。

「前にもこんな事あったよね。暗い空間であなたと2人きり。あの時はどうしたっけか。取り敢えず情報を共有しない?」

 天堂茂はしゃがみ込んだ。そして15番目の死体に這い寄り、その頬に触れて、再び泣き出した。
「父上の部下に殺された。父上は僕を失敗作と判断したんだ。死んで気付いたらここに居た。赤の日以降、毎年1年生に在籍した《天堂茂》たちも捨てられていた。ここは恐らく、ゴミ箱だ」

 ゴミ箱。
 デスクトップにある、完全に消される前のデータが保管されている場所か?
 強大な魔法により空間が歪み、私もここに迷い込んでしまったのではないか。だとしたらやはり、まだ完全には死んでない。生きている。

「僕と関わった全員が僕のことを忘れ、また来年には新たな《天堂茂》が当然のように入学する。笑えるよな。いつまでも父上に認められない、僕こそが本当の落ちこぼれだ……」

 天堂茂の赤は作り物のようだ。赤坂いつみのような炎の赤でもなければ、花卉の紅でも、血肉の朱でもない。
 いうなれば日本国旗の真ん中にある、見栄えの為に作られた日の丸のような赤だ。
 ブラックアローンの2028年の記憶には、既に天堂茂が存在した。私の推理はもうまとまっていた。

「あなた、天堂任三郎の生み出した、クローンでしょう」

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