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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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428 :げらっち
2024/08/10(土) 12:42:49
「ご明察だな。そうだとも」
天堂茂は顔を伏せたまま、くっくっと笑い出した。
「オリジナルの天堂茂は赤の日の直後に死んだ。怪人に無残に殺されたってなあ。父上は跡取りを亡くしさぞ悲しんだことだろう。毎年コピーデータを学園に入学させている。だが父上のお眼鏡にかなう者は現れなかった。毎年始末されては、改良版が翌年に送り込まれる。僕はその16代目、Ver1.1.0.44だ」
「落ちこぼれの無限ループだね」
突然、天堂茂は立ち上がった。涙と怒りにまみれた顔。
奴は私の胸ぐらを恐ろしいほどの力で掴んだ。
「お前のせいだぞお前の!! お前が僕より強いから!!! コボレンジャーなんかが、この僕に勝つから!!!」
歩み寄ろうとした私が馬鹿だった。
「死ね!!!」
ドゴ!!!
私は渾身の力で天堂茂の顔面をぶん殴った。眼鏡が割れ、歯が2・3本抜けて血と共に飛んだ。
「ひゃああ~」
奴は情けない声を上げて尻餅を突いた。眼鏡と歯がバラバラと散った。
じーんと、拳が痺れた。溜飲がすぅっと下がり、せいせいした。
奴は叩き落とされたハエのようにばたついた。
「い、いきなり殴るとはどういう教育を受けているんだ!! 歯が折れた! ち、血が出たぞ! 血が!! いたいい!!」
「痛いなら、生きてるよ。血が出たんなら生きてるよ」
私は手に付着した血をこすり落とした。
「やっぱりあなたはファザコンだ。パッパに認められたいというか、言いなりになってんじゃん。別に無理にエリート気取らなくてもいいんじゃない? 合格点を、満点を取れなきゃ存在価値が無いの? 好きに生きればいい。好きに生きさせてくれない? 抗って抗って生きるんだよ。駄目ならリセマラなんて甘いんだよ。私は生きている人たちの世界に、帰るから。何度でも挑んで、痛い思いをして生きるから。あなたはどうするの。どっちでもいいんだけど」
答えは無い。
私は奴に背を向け、行こうとする。
背後から、「待て!」と声がした。
振り返ると、天堂茂が立ち上がって、ひび割れた眼鏡を掛けて、真っ直ぐに私を見ていた。
「一緒にいきたい」
「じゃあ、握手」
私は真っ白い手を差し出した。
天堂茂は口をへの字にしかめたが、嫌々、手を出した。
私は世界で一番大嫌いな奴と手を握り合った。
次の瞬間、私はパッと手を振り払った。
「おっといけない触れてしまった」と台詞を添えて。
天堂茂は恨みがましい目で私を見た。
「そんな目で見ないでよ。初めて会った時にやられたことの、お返しだ」
「たわけたことを抜かすな! ここから出るために一時的に協力することを承諾した迄だ。ここから出たら父上に頼んでお前など」
そこまで言って、彼の顔は急激に青冷めた。
「ざんねん、もうその脅しは使えないね?」
私は笑みを向けた。
「あなたは落ちこぼれ中の落ちこぼれ、コボレンジャーのコボレッドだ」
茂の顔が少し緩んだ。
「僕も入って良いのか?」
コイツも仲間が欲しかっただけなんだ。
「いいよ。他の子たちは猛反対するかもしれないけどね。今まで散々なことしてきた罰に、袋叩きにされるかも」
「な、なんとかしてくれよ」
「やだよ。あなたが自分で声を上げて、自分の力で戦うんだ。これからは後ろ盾なんて無いんだからね。でもその代わり、これからは対等な仲間が居る」
仲間、そう聞いて、茂は子供みたいに、目を輝かせるのだった。
「ふん、いずれ僕がリーダーになる。格の違いという物を分からせてやるさ」
「一段上の落ちこぼれってわけね」
何としてもここから出て、何度でも戦って、絶対コボレンジャーのみんなと再会するんだ。
さあここからが勝負だ。
つづく
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