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901 :げらっち
2021/12/11(土) 13:38:55
始動したか。
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902 :げらっち
2021/12/18(土) 00:40:35
今冬始まったのはBlack/RAGE、CGR第三部どす。
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903 :迅
2021/12/22(水) 22:47:54
アマルガムの話を構築中の為、気晴らしにCGRのスピンオフ(?)的なやつでも
CGR特別編『白夜』
速攻で挙げます(マジ)
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904 :げらっち
2021/12/22(水) 22:55:44
まじすか!(_▫ □▫/)
参ったなCGR本編より人気出ちゃうよ…
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905 :迅
2021/12/22(水) 22:56:32
富士山にすっぽりと覆い被さるように、空中に浮かぶ黒い円盤。名は『メンズスター』、とある組織の活動拠点である。
これは、その組織に所属し『闘神』の異名を持つ、とある男の御話───
「1821……1822……ッ」
メンズスターのトレーニングルームは、ひっそりと静まり返っていた。
「1833……1834……!」
だが、それもそうだろう。ここを利用する者は少なく、一部の───それも、ごく少数の武闘派しか利用していないのだから。
メンズスターを構成するのは、怪人や超能力に頼り切った者か、己の肉体で闘う者か。
男は、断然後者だった。
「1856……18ッ、57……ッ」
その者の名は、『迅』。
メンズスターの兵士長にして司厨長、切込隊長にして、『闘神』の異名を持つ男。
そして、常に強者との戦いを望む武人である。
「やはりここに居たか」
すると、背後から声をかけられ、迅は懸垂をやめて地面に降り立つ。声の方に振り返ると、そばに置いていたタオルで汗を拭き始めた。
「これは、これは……叔父貴じゃあねェですか」
「一体、こんな時間に何の用ですかい?」と、迅は声の主に問いかける。
その問いに、声の主は小さく鼻で笑った。
「フッ、別に作戦会議にも出席しないものだから、何処に行ったものかと思ってな」
「作戦会議ィ?あァ……ンなもんありやしたねェ」
迅は思い出したように言うと、シャツを羽織る。程よく引き締まった肉体は、本人の風貌と併せて、ある種の色気を醸し出していた。
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906 :迅
2021/12/22(水) 23:16:49
しかし色気とは言っても、武人が持つ荘厳な雰囲気と言う意味で、一部の女性が求めるような、如何わしいものではない。
「しかし……お前が来てから、しばらく経つな」
声の主はまるで、思い出話に耽る高校生のように、何の脈絡もない事を言い出す。
そして今更だが、この男は『ゲラッチ』。
メンズスター日本支部の部長であり、『チート級部長』を自称する変人……だが、他のメンバーに比べると一番の常識人だ。
「お前が来たばかりの時は、名前も違ったし今みたいな感じではなかったんだがなァ……」
「勘弁して下さいよ、叔父貴。俺にとっちゃ、あまり良い思い出じゃあねェんすから」
「そうか?私は良い思い出だと思うが」
「そりゃ、アンタにとっちゃあな……」
ゲラッチは意地の悪い笑みを浮かべ、迅はバツが悪そうに目を逸らす。
「おいおいおいおいおい、俺を抜いて何楽しそうに話してるんだよ?」
「フッ……我々を抜いてディスカッションとは、良い度胸ではないか?」
「(そーいう言い方するから、いつも喧嘩になるんだよなぁ……結局止めるのは部長だし)」
雑談と共に、外からゾロゾロと三人の男女がやって来る。右から参謀長クロボー師、攻撃隊長ハローデス、副部長のユメチビ。
いずれもメンズスターの幹部であり、前半二人に至っては、迅と犬猿の仲だ。
「うっわ……、くるなら若頭だけにしてくれや」
無論、個人的な恩があるユメチビ以外の二人を、迅が快く受け入れる訳がない。
心底嫌そうな顔をして、二人に向かってしっしっと手を払う。もちろんそれを受け流す程、二人の器も大きくなかった。
「はぁー、これだからお子様は。最年少で幹部になったからって、調子乗ってるんじゃないの〜?」
「貴様……我々を愚弄するとは、良い度胸をしているな。覚悟は出来てるんだろうな?」
「るっせーな……元はと言やァ、テメェらが先に吹っかけて来た喧嘩だろうが……!」
クロボー師、ハローデス、迅の三人はそれぞれの得物を取り、互いに睨み合う。
一触即発の空気の中、ユメチビは半ば呆れたようにため息を吐くと、ゲラッチの方を見る。ゲラッチはやれやれと言いたげに首を横に振った。
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907 :げらっち
2021/12/23(木) 00:36:19
>>906
ほう…面白いな。できる限り27話に反映する。
ところで……男女?一応幹部は全員男のつもりだったのだが…←
ちなみに斥候長HKK、宣伝課長レモーン、守備隊長ホリゾンという3アホ年少幹部がじきに入ります♨
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908 :迅
2021/12/23(木) 09:31:37
>>907
意外ッ!それは誤字ッ!
あと、これは過去編的な感じで書いてるから、あまり本筋には絡まない感じでおなしゃす
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909 :迅
2021/12/23(木) 13:46:22
「貴様は一度、本格的に躾ける必要があるようだなッ」
右手にナイフを、左手に紫色の薔薇を持ったハローデスは、凛とした美しい声で叫ぶ。その姿は、さながら舞台俳優の如き優雅さ。
「まずお前は、目上の人間との接し方って奴をを学べよ。だから兵長止まりなんだよ、分かる?」
余裕たっぷりな表情で煽るのは、アサルトライフルを構えたクロボー師。ハローデスのような高貴さは感じられず、典型的な悪役のそれだ。
「おーい、喧嘩するなら外でやってくれよー?後片付けたいへんなんだからさー」
ユメチビは棒読み気味に忠告するが、二人は意に介さず迅を睨み付ける。流石は悪の幹部となのるだけあって、かなりの迫力だ。
だが、その程度の気迫なら……ここに来る前から、文字通り『死ぬ程』味わっている。
「能書きは良いから、掛かってこいよ」
その言葉が、戦いの火蓋を切って落とした。
「言われずとも!クロボー師、貴様は援護だ!」
真っ先に仕掛けたのはハローデス。
彼は空中を滑るように移動し、迅の心臓目掛けて刺突を放つ。生身の人間にはもちろん、並の怪人でも避けるのは困難な一撃だ。
「迅、討ち取ったりッ!」
ハローデスのナイフは、無防備な迅の心臓を刺し貫いたかに思えた次の瞬間───!
「何ッ!?」
迅の姿が、霞の如く掻き消えたのだ。
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910 :迅
2021/12/23(木) 14:42:06
予想外の展開に、ハローデスは驚愕を隠しきれない様子で周囲を警戒する。
刹那、上空から殺気が降り注ぐ。
「わ、私の上だとォ!?」
ハローデスの表情は驚愕に染まる。
迅は下半身のバネを使い、あの一瞬でハローデスの頭上に跳び上がっていた。そしてその脚力は、攻撃に転用すれば凶器と化す。
「き、貴様───ヘブァッ!?」
無防備なハローデスの顔面に、迅の膝蹴りがクリーンヒット。珍妙な声を上げながら、筋トレ道具を巻き込んで壁に激突する。
「まずは一人」
地面に降り立った瞬間、迅は後に飛び退る。
すると、さっきまで迅が立っていた場所を、無数の弾丸が蜂の巣に変えた。
言わずもがな、クロボー師の攻撃だ。
「よそ見厳禁だぜ!」
クロボー師がばら撒く弾幕。
対する迅は、トレーニングルームを縦横無尽に駆け回り、照準を定めにくくする。余りの当たらなさに、クロボー師も苛立ち始める。
「野郎……ッ!」
しばらく打ち続けると、アサルトライフルからカシャンッと、虚しい空砲音が鳴る。
アサルトライフルの強みは、一秒間に何十発と言う脅威の弾幕だ。しかし、強みは弱みにもなり、弾幕の排出量が多いという事は、それ即ち、相応に弾幕の消費も激しい。
全弾撃たせてしまえば、ただの鉄塊だ。
「チッ!」
クロボー師は慌ててリロードするが、遅い。
迅はクロボー師の懐に入り込み、鳩尾、喉、顎と言った弱点という弱点を、正確に蹴り抜く。
「ぐ……ッ」
クロボー師も堪らず後退するが、迅はトドメを刺そうと膝蹴りを繰り出す。
「はいストップー」
が、ゆらりと背後に現れたユメチビに羽交締めにされ、不発に終わった。
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911 :げらっち
2021/12/23(木) 18:30:50
面白い…ッ!
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912 :迅
2021/12/23(木) 21:19:03
「若ァ!何故止めるんです!」
「いやいやいや、止めなかったら殺してたでしょ」
猛る迅に、ユメチビの冷静な正論が突き刺さる。
事実、クロボー師もハローデスも死に体で、既に戦闘不能に陥っている。もし止めなかったら、ユメチビの言う通りになっていただろう。
ユメチビは再びため息を吐き、後方で腕を組んでいたゲラッチに目線を向ける。
「ゲラッチー、この子ヤバいよー?」
「奇人も変人も寄せ付けてしまうのも、私のカリスマ故だ。全くもってチート級……」
「ダメだこりゃ」
何故か嬉しそうなゲラッチを尻目に、ユメチビは大人しくなった迅の方を見る。
ここに来た時、本人は『剣士』を名乗っていたが、実際に剣を持って闘っていたところは、現状では一度も見たことがない。
にも関わらず、素手でも幹部二人を危なげもなく処理し、叩きのめす。
そこで、ユメチビの脳内にはある疑問が浮かぶ。
「(得物を持ったら、どれだけ強いんだ?)」
「若ァ、分かったんでそろそろ離してくだせェ」
「ん?あぁ、ごめんごめん」
ユメチビは拘束を解き、迅を解放する。
しかし、彼はメンズスターにとって異常な存在だと、改めて思い知らされる。
「(史上最年少で幹部にのし上がった彼には、敵が多い。それは、三年後の今でも変わらないってのに、よくもまぁ逃げ出さなかったよね)」
メンズスターの特筆すべき点は、まず新人いびりの凄まじさにあるだろう。
折角入ったは良いものの、悪の強い先輩方のせいで、一週間足らずで逃げ出した新人の数は両手の指は勿論、両脚を足しても足りない。
それも難なく耐えてる時点で、まず普通じゃない。
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913 :迅
2021/12/23(木) 21:28:01
この過去編に登場する迅は、今の迅のコミカルなキャラに比べて、硬派なヤンキーって感じのキャラにしてます。この理由は後々語られるかも……
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914 :げらっち
2021/12/23(木) 22:38:50
ユメチビの強者感…
なお私の書くCGRでは幹部入隊順が
ゲラッチ/クロボー師→ユメチビ/迅/ホリゾン→HKK→レモーン/ハローデス
と、現実のマリルイ部に来た順番となっているのた。
あとメンズスターは意外と仲良し集団だ!
新人いびりはCGRのほうだぞ!(オイ)
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915 :迅
2021/12/24(金) 14:23:09
だが、それ以上に不可解な事もある。
裏世界に潜む人間ならば、誰一人として見逃した事のないメンズスターが、今に至るまで、彼の存在を認知出来なかった事だ。
「(ゲラッチ曰く『歪んだ正義の持ち主』らしいけど、その言葉には、何の意味がある?)」
迅がメンズスターに加入した時期は、中学校剣道の全国大会で死者が出た事件の一ヶ月後、『白鬼』と名乗る人物が現れた三日後だ。
事件の犯人と入れ替わるように『白鬼』が現れ、その『白鬼』と交代するように、『迅』が現れた。
何か、関連性があるのだろうか?
「くっそー!覚えてろよー!」
「次に会った時、それが貴様の最期だッ!!」
クロボー師とハローデスは、通り一遍の捨て台詞を吐いた後、蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。
迅の方を見ると、彼は窓の外を見詰めていた。
「まぁ、僕も御役御免みたいだし?ここらでお暇させて貰うよ。それじゃあゲラッチ、後はよろしく。さ、行くよキノボー」
「え!?ちょ待って僕は───」
ユメチビはゲラッチに後を任せると、キノボーを連れてトレーニングルームを出て行く。
二人残されたゲラッチは、迅に問いかける。
「どうやら、ユメチビは勘づき始めてるみたいだぞ?」
しかし、迅は答えない。
だが、ゲラッチは事の顛末の全てを知っている。
何故、迅がメンズスターに入ったのか。
何故、ゲラッチが迅を拾ったのか。
───何故、かつての『迅』が、裏世界で『白鬼』と呼ばれていたのかを。
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916 :迅
2021/12/24(金) 16:02:52
今から3年前、県立春賢中学校は、剣道の名門校として知られていました。
全国大会常連で、地区大会では常に一位。練習試合では鬼神の如く無双し、剣道界でその名を知らない者は、一人もいませんでした。
「おい見ろよ、『白鬼』だ」
そこの剣道部に、『彼』は居ました。
「クールでカッコいいよね〜」
「でもなんか怖くない?目付きとかさ」
「でもアイツ、個人一位なんだろ?団体に至っては、二年で大将務めてるし」
「先輩に申し訳ないとか思ったりしないのかね」
「どゆ事?」
「知らねーの?アイツ、『三年を出すより俺を出せ』って言ったらしいぜ?それも本人の前で」
「うっわ、超ハズい奴じゃん」
中学一年で剣道を始めた彼は、恐るべきスピードで成長して行き、多くの敵を作りました。
先輩、同級生───果てには顧問まで、多くの人間が彼の才能を羨み、同時に彼を殺してしまいそうな程に妬みました。
それ程までに、彼の才能は飛び抜けていたのです。
その絶対的な実力と、他を寄せ付けない威圧感から、学校の人間は、彼を『白鬼』と呼びました。
「『白鬼』ー、部長呼んでんぞー」
「……ウス」
そんなある日の放課後、先輩に呼び出された『白鬼』は、一人部室に向かいました。
そこで彼は、思いもよらぬ提案をされたのです。
「大将……ですか?」
「あぁ。最後の大会だ。お前に任せたいんだ」
『白鬼』は、理解に苦しみました。
何故、部長である自分がやらないんだろう。最後の晴れ舞台くらい、自分で終わらせたい筈なのに。
「それに、片腕のない奴が大将張ったって、『ナメられてる』って思われるだけだろ?」
部長は苦笑いを浮かべ、左腕の付け根に触れます。
あぁ、この人も悔しいんだ。
最後の晴れ舞台なのに、大将を張れない事が、自分の片腕が無いせいで、春中の名に傷を付ける訳には行かないから。
───だから、この人は俺に任せるんだ。
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917 :迅
2021/12/24(金) 16:21:41
「部長」
「?」
「俺が、アンタら三年が、胸張って春中を卒業して貰えるよう、頑張ります」
「……有り難う」
数秒後、部長は快活な笑みで『白鬼』の肩を叩きながら、彼を食事に誘いました。
見た目に反してよく食べる彼を、部長は笑いながら褒めました。そして、部長も不安だった事や進路の事など、色んな事を話してくれました。
そして、待ちに待った最後の全国大会。
そこで悲劇は、起きたのです。
『きゃぁぁぁあああ!』
『お、おい……!嘘だろ!?』
悲鳴を上げる女性、騒つく観客席。そして舞台には、呆然と立ち尽くす『白鬼』と、仰向けに倒れ血を吐く対戦相手。
試合は中断され、対戦相手を乗せた担架は医務室に運ばれましたが、あえなく死亡。
死因は、試合中の刺突による頚椎損傷でした。
『この人殺しッ!!』
『ふざけんなこの野郎!』
『お前は何の手助けもしないのか!』
観客席の端から、罵声が飛び交います。
「ぶ、部長……」
『白鬼』は、助けを求める思いで声を震わせながら、部長の方を見ます。
す ま な い 。
そう口を動かした部長は、目を逸らします。
「……!」
『消えろ人殺し!』
『二度と竹刀を持つんじゃあねェッ!!』
「ごめ……なさい……。ごめんッ、なさい……!」
押し潰されるような重圧と、身も凍るような視線。
耐え切れなかった『白鬼』は、観客席から、今まで支えてくれた先輩から、最後まで味方で居てくれた部長に背を向け、逃げ出すように走り去って行きました。
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918 :迅
2021/12/25(土) 10:59:52
その後、駆けつけた警察によって『白鬼』は逮捕されましたが、運営や顧問の説得と、彼がまだ未成年だった事から、『試合中の事故』として罰金を払う事に。
幸い、被害者側も事故である事は認知しており、関係が悪くなる事はありませんでした。
『見ろよ、人殺しだ』
『あの子試合中に人殺した上に逃げたんでしょ?』
『確か春中だっけ?』
しかし、世間は彼を許しませんでした。
聖人の話は10人に1人しか話しませんが、悪人の話は、10人中10人が嬉々として語ります。
理由は簡単、『その人を貶めたい』から。
「『白鬼』が来たぞー!」
「逃げろ逃げろ、殺されるぞー」
「怖ーい!キャハハハハ!」
「堂々と歩いてんな人殺し!」
言わずもがな、彼は学校中から爪弾きにされました。
最後まで味方で居てくれた部長も、あの日を境に、彼の前に姿を現さなくなりました。
こうして彼は、『悪役』になったのです。
***
「それは……酷い話ですなぁ」
ゲラッチの自室にて、彼の隣に立つキノコに足が生えた姿をした怪人・超ウルトラグレートハイパーキングキノボーは、甲高い声で言う。
「まぁ、この話には続きがあるんだがな」
「えっ、そうなんですか?」
「当たり前だろ」と、ゲラッチ。
言ってしまえば、ここまでの話は小説で言う所のプロローグに当たる場面だ。
「アイツがメンズスターに入った経緯も、お前は知らないだろ?」
「まぁ、知らないですね」
「本人がいなかった事を、感謝するんだな」
ゲラッチはカラフルな銃を磨きながら言う。
次の演目は、迅がメンズスターに入るまでの話だ。
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919 :迅
2021/12/25(土) 11:33:41
「お前、何をやっている?」
迅とゲラッチが出会ったのは、東京都の何処にでもあるような、名もない路地裏だった。
ゲラッチの眼の前には、木刀で悪漢達を生殺しにしていた迅。返り血を浴びた彼の姿は、その気迫と相まって、ただならぬ雰囲気を醸し出す。
迅は口許に付いた血を拭い、ゲラッチの方を見る。
「誰だ、テメー」
猛禽類のような鋭い眼光が飛ばされ、ゲラッチは僅かに身震いする。
流石は、『白鬼』と呼ばれるだけある。
声がデカいだけのあの男とは、迫力が段違いだ。
「答えろよ。じゃねーと、殺す」
迅はゆっくりと立ち上がると、木刀の鋒をゲラッチの鼻先に突き付ける。刀身からは血が滴っており、暴虐が続いていた事を物語る。
おそらく、この男は本当に殺しに来るだろう。自分の命より、大事な物はない。
「私はゲラッチ。お前は確か、『白鬼』だな?」
「……それが、どうした」
「私と共に、世界を取らないか?」
その一言に、迅は目を細める。
この男は、一体何を言っている?背格好からして、おそらく高校か大学生……にも関わらず、堂々と世界征服宣言。
「アンタ、馬鹿なのか?」
迅は侮蔑を隠さない声色で言う。
しかし、ゲラッチは余裕に満ち溢れていた。
「馬鹿ではない。ちゃんと、それを成し得る為の手段は用意してある」
そう言ったゲラッチは、迅の腰に提げられた漆塗りの鞘を指差し、怪しげに笑う。
「お前は中学校時代、目覚ましい活躍をしたと聞いている。お前が私の下につけば、私に武力で敵う者は誰一人として、居なくなる」
「おい待て、それじゃあアンタのメリットしかないだろ。悪いけど、交渉は───」
「おいおい、話は最後まで聞くものだ」
ゲラッチは両手を振り、迅の言葉を遮る。
「もちろん、お前に何の得が無い訳ではない。お前のその実力は、裏社会のチンピラには勿体無い」
ゲラッチは続ける。
「私は安心して世界征服を進め、お前は私の保護の下、『安心』して『合法的に』人を殺めることが出来る。悪く無い取引だろう?」
「……」
その瞬間、迅の中で『何か』が壊れた。
元より自ら両親と絶縁し、悪漢や同類を潰して生計を立て、宛ても無く放浪していた自分にとって、それは最大のチャンスだった。
今更カタギに戻ると言っても、取り返しのつかないラインはとうの昔に踏み越えている。
失うものは何も無いなら、拒絶する理由も無い。
「アンタは、思いの外頭がいいらしい」
暗闇の中でほくそ笑んだ迅は、ゲラッチが待つ光に向かって、一歩脚を踏み出した。
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920 :迅
2021/12/25(土) 11:39:39
ここで番外編はお終い
ぶっちゃけ原案とは180度駆け離れた内容だから、過去編と銘打つよりも、番外編として書いた方が良かったか……?
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