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91.マリルイ学園CGR
 ┗719-729

719 :げらっち
2020/09/12(土) 14:54:19

第3部

第13話

「私と契約してCGRの一員になってよ。」


知らないお姉さんが私の前に仁王立ちしてそう言っていた。
「ねえ。」
何この人。年甲斐もなく全身フリフリのフリルなんか着て、ちょっと変。そこ車道の真ん中だし。
「きみだよ、きみきみ。」
独り言?それとも私に話しかけてるの?私、下校中なんだけど…
「そこの君!!無視するのはよしなサイダー!!」
「は、はいっ!?(⊃ Д)⊃≡゚ ゚」変なおねーさんに肩をつかまれて、私は遂に返事をしてしまった。すごい勢いでつかまれたのでやや後ろのめりになり、ランドセルの蓋がパカっと開いた。
「反応カワユス(笑) そう、君こそがCGR5人目の戦士です!!」
「はぃいいい!?」肩をつかまれガクガクと揺らされたので、ランドセルから教科書やノートが飛び出し地面に散乱した。次の台詞が無ければ、私は防犯ブザーの紐を引いていただろう。

「雑誌に載れますよ。」


CGR…
ニコ☆プチやキューーガルに並ぶ新しい小中学生向けのファッション誌だろうか?
そう言えば最近クラスのマリナちゃんが雑誌にスカウトされてたっけ。マリナちゃんたらクラスの人気者になってたな。
ま、自分で言うのもなんだけど?私は他の子より…可愛いほうだし
もし私が雑誌に載れるとしたら…!
これはチャンスっっ✨

そんな軽い気持ちで、私はお姉さんの運転するリムジンに乗ってしまった。だがすぐに後悔することになる。
バタン!
「え、ちょ(_▫ □▫/) 」
私が乗った瞬間窓にブラインドが下ろされ、車内は完全に真っ暗になった。そして壁を挟んだ運転席からお姉さんの怒声が聞こえたのだった。
「行くぜえええええ!!」
リムジンが急発車すると私はシートに埋まってしまい、リムジンが急に曲がると私はつんのめって空中を3回もでんぐり返ししてしまった。つまるところ、絶叫コースターより恐ろしかったのである。

[返信][編集]

720 :げらっち
2020/09/12(土) 14:57:41

あれ?
この光景、前にもどこかで……

「着きましたよ…」

私はこの声を知っている。
この声は雪華司令だ。
あれ、でも雪華司令は…
もう……


真っ暗だった目の前がぼんやりと明るくなってきた。

私の足元には、まるで枯れ木の下の落ち葉のように人間が転がっていた。

そのうちの1人が呻き声をあげ私の足に掴みかかる。
「メリルイ部のこの女郎(メロウ)!」
私はほっそりとした白い腕でその男の頭を掴み、思い切り地面に叩きつけた。
「グハッ!」
男は気絶した。
鼻から血飛沫が上がり、私の手に付着する。

これは、一体…


私は、誰?
私は、たしか、「ルル」と、呼ばれていたはず…

目の前に男が立っていた。
どこかで見た顔…
ハッ
そこに居たのはゲラッチだった。
あのちぐはぐな衣装ではなく、学ランのような黒い服を着ていた。眼鏡も奇抜なものではなくごく普通のものだ。

私はこの男に恨みがあった。
恨みがあったはずだ。
だが今は怒りも憎しみも湧かず、ただぼんやりとその光景を眺めていた。

ゲラッチがぽつりとつぶやいた。
「たった2人で、全滅させた…」

ゲラッチが私の目の前に立った。
そして私の両手を握り、ぐいと体を近づけた。

「世界は私たちの物になるんだ…!」

私はゲラッチとキスをした。
自分の唇から勝手に、ゲラッチの口に吸い寄せられていったような感覚だった。
息が出来ないほどに熱く抱き合い、私は、地面に倒れた…

[返信][編集]

721 :げらっち
2020/09/12(土) 15:02:52

再び視界がぼんやりとし、しばらくすると、場所が薄暗い室内に変わっていた。
部屋の中央の椅子にはゲラッチが座っていた。大きめの猫を膝に乗せて、その頭をゴロゴロと撫でていた。
私は壁にもたれかかっているようだ。


私は、誰?
どうしてここにいるの?

反対側の壁に掛かっていた大きな鏡が私の視界に入った。
これで、私がどうなっているのか見れる…


そこには雪華司令が映っていた。
でも、私の知っている司令とは大分違う。
髪は長く、ツンとした冷たい顔。黒いドレスを着ている。そして見慣れた雰囲気より若く…というより幼く…思えた。

私は…

私が雪華司令?

私の口が勝手に開き、声が出た。その声は確かに雪華司令の低めの淡々とした声だった。
「計画は順調。あなたのお兄ちゃんは世界を変える人ね。」

「わかってること言われるのが一番嫌いなんだけど…」
さっきほどではないがまた驚いてしまった。
ゲラッチの膝の上に乗っていたのは大きめの猫ではなく小さめの人間、kotoだった。

kotoは雪華ほどは雰囲気が変わらなかったが、やはり少し幼く見えた。小学生くらいだろうか。
ゲラッチはkotoの頭をポンポンと叩きながら言う。
「不機嫌なのか?koto。」
「だってだってお兄ちゃんg」

そこに見知らぬ男2人が入ってきた。
「部長、何時迄も従わないシタラヴァ地区の占領を完了。帰還しました。」
1人は手足が長く面長で、とにかく目つきの悪い男だ。
ゲラッチが返答する。
「それで何か特変は無かったか?副部長レナック。死傷者は?」
「ああ貧弱な警官を2、3人程半殺しにしたな。抑数に入れてなかったというwww」
レナックと呼ばれた男は歯をむき出しにして笑った。
ゲラッチは「馬鹿め!」と一喝し立ち上がる。
kotoはにゃんと言って慌てて私の傍に駆け寄った。

「我々の目的は世界の統一であって、服従ではない。警官や労働者には手を出すな。我々の敵は反社会勢力や犯罪者、世界を荒らす者共だ!間違えるなっ!」

「それはそれでぇ〜…いやもういいですハイ…」
レナックはイライラと後ろに居た獅子顔の青年に蹴りを入れた。
ゲラッチは独話を続ける。

「我々は世界の荒らし共を潰えさせ、独自の“軍隊”を作る。その時はお前が指揮を取れ、クソゲー軍曹!」
ゲラッチは獅子顔の青年に親指をピッとむけた。
そうだ、そんなやついたな。言われてみればどこかで見た顔だ。
「任せといてくださいな。」

「“軍隊”の次は“国”を作る!その時点で日本国は、我らの軍事力が無ければ真の平和は得られないことを知る!日本国は我が国に併合されるだろう。我らメリルイ部が、世界を創り直す!これが私の計画だ。」


ゲラッチの演説が終わると、私の両手はひとりでに拍手を送っていた。
意思とは関係なしに自分の顔が微笑んでいるのが筋肉の感覚でわかった。

私に続いてkotoとクソゲー軍曹も拍手する。レナックだけはフンと鼻を鳴らしていたが、実は心酔しているようにも見て取れた。

「…そして、世界が我々の物になったら……私と結婚してくれ、ユキちゃん。」
ゲラッチが私を見つめた。
私は、何故か少し、恥ずかしくなってしまった。


そこに雷が落ちた。

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722 :げらっち
2020/09/12(土) 15:07:00

「誰だ!?」
レナックが大声を上げた。ゲラッチの目の前に、ゲラッチより一回り背の低い青年が立っていた。
青年…いや、少年とでも言うべきか。
ボサボサな黒髪、そして真っ黒い目。


「はじめまして。ぼくはリッチヅノー。」

少年は深々とお辞儀した。

「お会いできて光栄です、部長!部長のことはよく存じ上げております。」
「ほう、それは嬉しいね。」
ゲラッチは朗らかな表情になった。先ほどのインパクトのある登場のことなど微塵も気にしていないようだ。
「リッチヅノーさん、メリルイ部に入りませんか?我が国が完成した暁には、未来永劫の平和を、約束します。」
「いえ。ぼくが来たのはそんなことではないんです。」
リッチヅノーはわざとらしくジェスチャーを交えながら話した。

「ぼくの組織“メンズスター”と同盟を組みませんか?メンズスターも、それなりに影響力を持つ組織だと自負しています。ゲラッチ部長の夢を叶える一助になると、そう思っています。」

レナックとクソゲー軍曹は「面白いな」と顔を見合わせていた。
しかしリッチヅノーの次の発言により場は凍り付くことになる。

「そして、二大組織の代表は、もちろんこのぼくです。」


少し間を置いて、私の服にしがみついていたkotoが口を開いた。
「は?そんなのゲラッチは認めないよ。何で後から来た人が代表になるんですか?あ、喧嘩する気Nothing(ナッシング)だから。思ったことを言っただけだから」
そしてゲラッチの方を向く。
「なんだこれ。ねぇお兄ちゃん。」

ゲラッチは真剣に、しかし語気を強めてこう答える。
「君が代表になると言うからにはそれなりの考えがあるんだろう。でも私には、君のことがまだよくわからないのでね。それにメリルイ部の勢力はもう十分足りている。同盟を組む必要は無いっ!」

「…そうですか、それでは失礼します。」
リッチヅノーは背を向けた。ゲラッチが言葉をかける。
「…君には素質がある。そう落ち込むな、また気が変わったらくればいい♪」

「光栄です、よ…」



突然場面が変わった。

私の目の前には土砂降りの岸壁が広がっていた。
そこに居たのはゲラッチと、リッチヅノー。


ゲラッチは腹部を抉られて瀕死の状態だった。
ゲラッチとは対照的に、リッチヅノーは勝ち誇った顔で仁王立ちしていた。

「まったく矛盾だらけだねw君は、あんなにエバっていたのに、こんなにも弱くて。笑っちゃうよwひゃははははは!!ゲラッチ部長。死ぬか?」

リッチヅノーはゲラッチの傷口を思い切り踏み付けた。
「ひぎゃあああああああ!!」

「それとも、ぼくのしもべになるかい?」

リッチヅノーがゲラッチの首根っこを掴み無理矢理立ち上がらせた。
するとゲラッチの体中の傷が一瞬にして消えた。
それと同時にゲラッチの服は見覚えのある色とりどりでちぐはぐなものに変わり、眼鏡も奇抜なものに変わった。

「メリルイ部は廃部ってことでいいねw 君はメンズスター日本支部部長、ダークゲラッチだ。キャスストーンを集めるために働いてもらうからねw」

空に稲妻が光った。

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723 :げらっち
2020/09/12(土) 15:09:48

再び場面が変わった。
しかし今度は見覚えのある場所だった。毎日のように通った場所。
キーさんの家だ。
しかし基地然としている記憶とは違い、ホテルの一室のようなインテリアになっていた。

月明かりが差し込む中、私はベッドに倒れ込んだ。
「うぐ……ウッ」
私はシーツをぎゅっと掴み、顔をくしゃくしゃにして泣いた。
「…ゲラッチ…何で…」
何故だか悲しみが込み上げてくる。愛する人を失った記憶。
雪華司令を失った事実と重なり、私はどうしようもなくなってしまった。


その時、背後にすっと温かみを感じた。
誰かが私の背中をさすってくれていた。
私は振り返る。
これもどこかで見たような少女が優しく微笑んでいた。
「安心していいです。私がついてますから。」

「ありがとう、キーちゃん……」

私はぐしょぐしょになった顔で、彼女の華奢な体にしがみついた。
そういえば…!
確かにキーさんの面影があった。中学生になったばかりだろうか。
背は私…いや、ルル…と同じくらいで、大学生のキーさんと比べるとかなりほっそりしていた。眼鏡は既にかけていたが。

「キーちゃんが居てくれなかったら、私は…」
「いいんです幼馴染じゃないですかっ!雪姉さんには小さいころ色々お世話になりましたからっ(❁´ω`❁)」
キーさんは私の額を撫でてくれた。
私は泣き疲れ、そのまま眠りについた。


場所は同じだが、また少し時間が進んだようだ。

部屋は私の知っている研究所のような内装に近くなっていた。
キーさんは部屋の中央の机で大きなパソコンをいじり、プログラミングの真っ最中だった。

私は背後から近付いてゆく。
さっきとは体の感覚が違っていた。
私はキーさんの肩にちょんと手を置いた。

「何してるんですか?」
「あっ雪さん…わあすごいですね!」
キーさんは私を見てあからさまに驚いた。
「バッサリ切ったんですね!ショートも良くお似合いですっ(´。✪ω✪。 `)」

なるほど。
体感の違いはどうやら断髪にあったらしい。体が軽く感じる。
それだけでなく、自分が白いフリフリのフリルを着ているのも目に入った。これはたいそうなイメチェンだ。きっとキーさんには軽やかに見えただろう。

キーさんはキラキラと目を輝かせて私を見ていたが、やがて話し始めた。
「私は今“コミュニティアプリ(仮)”の開発中ですっ!」
「コミュニティアプリ?」
「悪を倒す戦士、“コミュニティガールズレンジャー”に変身できるんですっ!これがイメージ図です。」
キーさんは自作と思われるフェルトマスコットを取り出した。
変身後のピンク色の衣装を表現したものだが、とても出来がいいとは言えない。私は顔をひきつらせた。
「カ、カワイイですね…(笑)」
「やっばいです(;//́Д/̀/)'`ァ'`ァ」
キーさんは興奮気味に話す。
「このアプリが完成すれば私も雪さんも戦士になれるんですっ!でも基礎体力も大事ですからね。これから毎日筋トレしようと思いますっ!そのためにご飯を1日3杯食べます( •̀ω•́ )✧」
「ハァ…でも何でそんなに?」
「決まってるじゃないですかっ!私たちでメンズスターを倒して、ゲラッチさんを元に戻すんでしょ?」


私はまた胸が苦しくなってしまった。
ぽろりと涙がこぼれ落ちる。

「わああごめんなさいぃぃ。゚(゚இωஇ゚)゚。そうだ、コミュニティガールズレンジャーの略称とか考えましょうっ!」
「…うん…CGRなんてどうですか(笑)」
「あっそれいいですね〆(゚-゚*) メモメモ」

そうだったのか。
CGRはこうして……

「もう泣くのはやめます。そうだ、こうしましょう。これを機に私も名前を変えます。私は嫁塚雪、改め…」
私はつかえている物を吐き出すようにこう言い放った。

「嫁塚雪華!!CGRの司令官です!!」

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724 :げらっち
2020/09/12(土) 15:14:05

次は、自分の記憶の中にもぼんやりと残っている光景を目の当たりにした。
それも、あまり見たくない光景を。


「猫野瑠々と言います。前のガッコの友達からはルルちゃんとかるーちゃんとか呼ばれてました。えっと、趣味は読書、特技は一輪車と速読とお絵描きです!誕生日は10月です。よろしくお願いします!」

私は転校初日の“私”を、教室の窓の外から見つめていた。
これじゃまるで変質者だ。
初めて客観的に見る自分は、予想以上に早口でどんくさかった。
小3の私は頭を下げると足早に席について俯いてしまった。この時は転校が嫌で嫌で仕方なかったのを覚えている。
3・4年の頃の担任だった男の先生が「皆さん、猫野さんに色々質問してみましょう」と言った。
クラスメイト達は誰1人としてルルに声をかけなかった。

かわいそうな私…

すると近くの席に居た女子が立ち上がり、ルルに話しかけた。
「ねえ一輪車できるって本当❔」
ルルはパッと顔を上げた。
「うん、本当!」
「放課後一緒に帰らないー❔」
「うん、帰る!」
その女子が笑うと、前歯がにゅっと飛び出した。

犬又美羽。
美羽にはこんな気さくな面もあったのだ。もちろん、すぐに思い出したくもない力関係が生まれてしまうのだが。

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725 :げらっち
2020/09/12(土) 15:15:26

「ルル、遅いよー❔」
「待ってよみうちゃん💦」
ルルは炎天下の下校途中、3人分のランドセルを持たされていた。もちろん自分のを合わせると4人分だが。

「友達なら別にいいでしょ、そうよねー❔」
「うん、いいけど…」
ルルは小柄な体で右腕に1つ、左腕に1つランドセルをかけ、さらにもう1つを抱きかかえて運んでいた。
「ちょっとしたら交代してほしいんだけど…」

「えー?転校生のくせにwwww」
そう言ったのは美羽の取り巻き瑛那。この頃からゲス顔だ。
もう1人の取り巻きは口元にほくろのある子。
美羽は2人を従えながら意地悪そうに笑う。
「私は転校生のルルちゃんとも遊んであげましたー💘」

ルルは手が痺れたのか、ついにランドセルのうちの1つを地面につけてしまった。
「あ、それうちのなんだけどー」
「あーあルルが瑛那ちゃんのランドセル汚したー。それって、いいことー❔」
美羽達がルルに詰め寄った。
「ご、ごめん…」
すると美羽がルルのランドセルをパッと奪った。
「あ、それ私の!」
「わあーばっちい。転校生のランドセルとか。捨てちゃっていいよねー❔」
「ダメだよ!!お願い返して」
ルルは涙目だ。

私はそれを曲がり角から覗いていた。
「…あの子ですね。」
振り向くとそこにはキーさんも一緒に居た。数年が経過したからか体はかなり大きくなっていた。
「じゃあ試してみてください。コミュニティアプリ試作版をインストールしておきました!これでType:ホワイトに変身できます!」

私は白銀のスマホを起動させる。

「コミュニティアプリ起動!」

私は“変身”した。
然しそれは、私のよく知っているガールズレッドへの変身とは真逆の感覚だった。
私の心の中の冷たい部分。
それが次第に大きくなり、心を侵食してゆく。そしてそれはオーラとなって全身をまとい、肌が冷たいものに包まれた。気が付いた時には、私は白色の戦士に変身していた。

「みうっちまじやりすぎだよww」
「じゃあ瑛那ちゃんパスだお➰」
「おっけー!」
瑛那がルルのランドセルを奪って曲がり角をこちらに走ってきた。
そして私を見るなり歩を止めて、まるで宇宙人でも見たかのような顔になった。

「やめてええ!」
美羽ともう1人の取り巻きに押さえつけられ、必死にもがくルルの姿が見える。
私は冷酷な感情を解き放った。

瑛那は氷のつぶてに吹き飛ばされ、塀に頭をぶつけて崩れ落ちた。

「あれ、瑛那ちゃーん❔」
美羽の声がした。
私は変身を解き、くたばった瑛那の手からルルのランドセルを取り返すと、路肩にそっと置いた。
そしてキーさんと顔を見合わせいたずらっぽく笑うと、2人猛スピードでその場から逃げ出した。
「ちょっとやり過ぎですうう!」
「ごめんなさい(笑) でも改良すれば実用化できそうですね。」
「はいい!僕も早く変身したいです(((o(  ́。›ω‹。` )o)))」

私はこの後の出来事をちゃんと覚えていた。
美羽と共に恐る恐る角を曲がると、そこには記憶を失った瑛那と、きちんと置かれたランドセルがあったのだ。
この時の謎がやっと解けた。


「…あの子には素質があります。いずれ、CGRのエースとして、引き抜く時が来るでしょう…」
そしてあの通学路での出会いにつながるのだった。

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726 :げらっち
2020/09/12(土) 15:18:33

続いては、既にルルがCGRに入った後の一場面だった。
キーさんの家はCGRの基地と化していた。
まだCGRに入ったばかりでタレとりんごの違いも判らないようなルルがキーさんに話しかけている。
「キーさーん・・・」
「大丈夫ですよ(❁´ω`❁)必ず無事に帰ってきます( •̀ω•́ )✧」

そこにはタレ達の姿もあった。
「さすがキーさん!かっちょいい!」
「キーさんなら大丈夫!(`・ω・´)」
「じゃあさー、せっかくみんな揃ってるしうちらは海に遊びに行かない⁉」
「さんせーい!」
「いいね!雪華司令も行くぴよ?」
タレに問いかけられ、私は嘘っぽく答える。
「え、私はですね、これから殿方とのお食事に呼ばれているので、いけまセンガクジャー。オッホン。」
私は咳ばらいをするとそそくさと屋敷の外に出て行った。後ろからりんごの声が聞こえた。
「あ、その後ホテルで×××…」


私は路地裏にやって来た。

そこには、見覚えのない金髪の女子高生が立っていた。
美人だがどこか悪そうな雰囲気を醸し出している。

「来たか~w言われた通りちゃんと待っててやったよ、雪華サン?」
私は淡々と返す。
「それは、私が怖いからです。私からは逃げられないと知ってるのよね?貴女は、逃げては、悪人と取引きしたり、アッチ系の動画を投稿したりと、正義の戦士にあるまじき行為をしています。さしずめ、悪の戦士せらムーンと言ったところでしょうか。」

女子高生はムッとした表情になったが、すぐにふざけた口調に戻る。
「え~、私の力が必要なんじゃなかったの?w別に協力してあげなくてもいいんだけどね~www」

「うるさい!!」

私の口から今まで一度も聞いたことが無いような怒声が出た。
残酷な感情が身体を支配する。

「コミュニティアプリ起動!雪と大地の長者、ガールズホワイト!!」

せらムーンもすかさず持っていた賽を地面に打ち付けた。
「ムーンサイコロパワー!」
賽には「変身」の文字が。
せらムーンの体が虹色に輝き、全身に防具が装着された。
「ムーンサルトキック!」
せらムーンが横回転しながらバレリーナのように私の顔面に爪先蹴りをくらわす。しかし、
「マジカルバリアー!」
私は両手を広げ、氷のバリアを展開。せらムーンは弾き飛ばされた。
せらムーンは負けじと路地の壁を蹴った反動で飛び上がり、両腕に鉤爪を装着し標的めがけて落下する。
「死ね!」
「甘い!!」
私はせらムーンの両腕をむんずとつかんで受け止めると、バック転しせらムーンを思い切り地面に叩きつけた。
「ぐはあっ!」

「あなたの、負けです。約束通りの働きをしてもらいましょう、」
「や、やばいっ!」
せらムーンはゴミ箱をなぎ倒して逃げ出した。
「待ちなさい!!」
私は地面に拳を振り降ろした。

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727 :げらっち
2020/09/12(土) 15:22:38

「アースブロー!!」

地面が大きく揺れた。せらムーンは吹き飛ばされ、傍に停まっていた車のフロントガラスに激突した。
ガラスが割れた。
せらムーンは動かなくなった。

私はひたひたと近寄って行き、変身を解いた。
顔を覗き込むと、せらムーンは頭から血を流し、息も絶え絶えに私に哀願した。
「た、たすけ…」
「殺しはしません。いや、貴女は死ねないのです。だって、貴女は」

恐ろしいことに私は…雪華は、笑っていた。
「自分が何者かもご存じないのね? 哀れね(笑) アナタはキャスストーン!!今、真の姿に戻れ!!」

せらムーンは悶えながら、石の姿に変わっていった。
「キャスストーンを7つ集めると、キズナパワーが世界を包み込み、全世界の女子がいじめも妬みも捨て平穏な心をもたらす。」
私はキャスストーンを拾い上げた。
「そんなの、嘘!! キャスストーンは破壊力を持った石。これをメンズスターの手に渡さない、それだけが目的。」


恐ろしかった。
雪華司令は最初からそんな理由で…
そしてそれ以上に…
いつも優しい雪華司令。本当のお母さんのような人。一度も見せたことの無い、残酷な姿が、怖かった。


「こんなに酷い目に遭ったのに今回は収穫ナシかぴえん。」
「まあまあ・・」
ルル達がCGRの秘密基地に帰ってきた。

「お帰りなさい。4つ目のキャスストーンなら私が見つけておきましたよ(笑)」



さっきから一体、何を見せられているんだろう。

自分の意思では全く動けず、ただ雪華司令の目線で…
それに、雪華司令は、
死んでしまったんじゃ…


“あの”シーンだった。

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728 :げらっち
2020/09/12(土) 15:28:13

私はゲラッチを抱きしめていた。
ゲラッチの涙が彼のほほを伝い、私の胸元に滴る。
視界には居ない自分の声が聞こえてきた。
「ど、どういうことですか?」

「私たち、元々婚約してたんですよ(笑) ゲラッチは道を誤ってしまった。それで私は彼を振ったんです。寂しかったのでしょう、それから幼女にばかり手を出すほど歪んでいました(笑) でも、本当は愛し合っていたんです。それだけのことです。」

この後、起きることは…

胸元に違和感があった。私はちらりと下を見る。
銃が突き付けられていた。
ゲラッチの顔が大きく歪み、次の瞬間、レーザーが私の胸を突き破った。
想像を絶する激痛が走った。
いやそれは痛みの範疇を超えていた。全身の感覚が無くなっていく。
ゲラッチが何か言葉を発したが、聞き取れなかった。
私は地面に倒れた。

遠くで、「ルル」が、叫んでいるような…
聴覚ではなく、振動でそれがわかった。だがもう何も見えない。何も聞こえない。
もう何も、感じない。

私の意識は消えていった。


「ルルちゃん、」

「雪華司令!?」
私は自分の声で叫んだ。
もう何年もの間自分の名前を呼ばれていなかったような気がする。
暗闇から聞こえてきたのは雪華司令の声だった。
「ルルちゃん。あなたは、私と走馬灯を共有したんです。私の意識が消えたのと同時に、kotoちゃんがルルちゃんを気絶させた。それで、ルルちゃんの意識が私の意識に引っかかったわけですね。」
確かに私、「ルル」に話しかけている。

「私のこと、嫌いになりましたか?」

「全然そんなこと無いですよ!雪華司令は雪華司令です!お願いです、いかないで!!」

「…駄目です。そろそろお別れですね。」

「そんなっっ!!」

私は今、自分の体があるのかさえ分からなかった。
とにかく暗闇の中泣き叫んで、ただやみくもにもがいていた。
雪華司令と、別れたくない!

「そんなに泣いて、みっともないですよ(笑) ホラ、笑って!!もう泣くのはやめなさい。」

目の前がボーっと青白く光った。
「あ…」
まるでフィギュアスケートのように、氷上を気持ちよさそうに滑る半透明の雪華の姿があった。
「き、きれい…」
雪華はキラキラと光を振りまきながら言う。

「ルルちゃん、アナタに会えてよかった。聖夜を、楽しみに待っていてください。きっと、何かが起こります。」

「しれぃぃ・・・」
私は雪華に少しでも近づきたくて、手を伸ばした。
「ホラ、最期は笑顔でお別れ…」
雪華はにっこり笑った。
私は泣きながら、精一杯笑顔を作った。
「さよならです!」

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729 :げらっち
2020/09/12(土) 15:30:33

「ルル!」
目を覚ますと、そこは病院のベッドだった。
周りに居たのはタレ、りんご、潤、キー。
りんご「よかった‼」
潤「うわああああルル心配したよおお」
私はぼんやりと自分の体を確かめた。そう、確かにこれが私「ルル」の体!
そしてタレに尋ねた。
「私は…」
タレ「もう3日も寝てたんだよ!お医者さんは傷は深くないから精神的なショックかもって言うてたけど…いやー生きててほんとによかつたわ!へっへづへ!」
タレは妙なテンションで私を抱きしめた。
りんご「あー、タレばっかりずるい‼僕ちんもー」
りんごもベッドの逆側から身を乗り出しやや強引に私を抱いた。両側から圧迫され少し苦しかった。

「それで、雪華司令は…」

キー「はい。昨日、告別式を行いました。」
キーは明らかにやつれていた。
その場は一変、暗いムードになった。タレは「ひぐっ」と涙をすすった。

私は叫んだ。


「ちょっと先輩たち、何泣いてるんですかっ!!泣いてたって何も始まりませんよ!これから新生CGRが始まるんです!もう一度HAPPY ENDを目指しましょ✨」

皆キョトンとしていた。
しかし私の心はすっきりしていた。夢の中で一生分泣いたからだろうか、それとも、希望があったから…
“聖夜に、何かが起こる”



月面、メンズスター本部。

そこに居たのはゲラッチとリッチヅノー、ただ2人だけ。

「まずは、犬又美羽のキャスストーン…」
ゲラッチは朱色の石を取り出した。
「次に…」
続いて、橙色の石を取り出す。そして2つの石を掲げた。
「塩田アキのキャスストーン。私の読みは正しかった。運動会で誘拐した女児の1人が、キャスストーンだったのです!つまり私が手にしたキャスストーンは2つです。」

脳みその塊“リッチヅノー”は緑色に発光した。
「さすが部長wでもキャスストーンは7つあるはずだよ。キャスストーンの威力は乗算されてゆく。2つぽっちじゃ意味がないんだよ、知ってるでしょw」

「もちろん、わかっております。」
ゲラッチはやや不服そうに石を胸元にしまった。
「他の5つのキャスストーンうち、楠美世羅以下4つのキャスストーンは、CGRの手に渡っております。そして…」

「残る1つのキャスストーンの行方は不明です。全く情報がありません。」


「そうかい。まあぼくには心当たりがあるけどね…w」


つづく

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