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89.モトカレはせべ
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不謹慎だと承知の上だが、僕は、事情があって離れてしまった誰かを探す看板を眺めるのが好きだ。 そこには、切ない文もあれば、鍵の提示すらない簡素な文もある。それを眺めながら――恋仲でも、友人でも、このふたりが共にあった時は、どんな時間が流れていたのかな?と、想像してみる。 看板に書かれた数行で、(勝手にではあるけれど)鮮明に想像できることもあるし、二枚にわたって綴られた文字を読んでも全く想像ができないこともある。別に、どちらに優劣があるわけじゃなく、不思議だなあ、と首を捻るだけなんだが。 そうして、なんとなく行き来するうちに、先まではあった看板が取り下げられていたりすると、探しびとが見つかったのかな、それとも、諦めてしまったのかな。なんて、他所様のことなのに、僕がハラハラしたりしてさ。 僕は、誰かを探したことがない。 探されたことはあるが、ああいう場になにかを書きつけたことはない。 たとえば、僕が長谷部くんを探すとしたら、どんな文で、どんな鍵を添えるかなあ。と、先日、彼本人にそんな話題を振った。 「僕らの鍵になることって、なんだろう?」 #「はあ?」 「どうせならさ、ちょっとしたドラマ性が欲しいよね!君の宛先は『三』から始まる、とかじゃなくて、読む側が少し切なくなるような」 #「…………何だか、悠々としていて、鼻歌が聴こえてきそうな捜索風景だな……?」 勿論、僕は彼と今でも繋がっているので、遊びで看板を立てることはしないけれど、妄想するくらいはいいじゃないか。そもそも、君を捜索するような未来は、僕も想像できないし。だから妄想なんだよ、妄想! というわけで、僕はここで彼を探してみる。 (本人隣にいるけどね!!!) >▼▼▼ <u>1: 燭_台_切_光_忠</u> 金木犀の下に、 今でも、僕はいます。 ここからでは、いま君が見ている景色がどんなものかは分からないけれど、まったく手に負えないこの子の狂い咲きはおさまっているだろうか。君が手入れしていた花壇は、今でもあのまま残っているのかな。 じょうろで花たちに水をあげる君の姿が、僕の目にはまだ焼きついている。あの寂しそうな横顔を、いま誰に見せているのか、……聞きたいような、聞きたくは、ないような。 今でも、きっちり五時半に起きているのかい。君が布団から抜け出す時、僕が何度引き留めようとしたか、きっと、この先も君は知らないままなんだろう。行かないでくれ、の一言は、言えずじまいだった。 気を抜くと、このまま朝まで語り続けてしまいそうだ。君に指摘された、僕のこのお喋りな癖は、どうにも抜けてないらしい。あれから、もう随分と眠り続けていたからかな。 さて、そろそろ本題に入ろうか。 (書き損じた痕跡)■年越しの約束を、果たしにきた。鍵は、敢えて挙げるまでもないと思うけれど、……それじゃあ、ひとつだけ。 青い花束を、 もう一度、君にあげたい。 迎えにきたよ。 >▼▼▼ しかし、いざ書くとなったら、僕はあれこれとドラマ性なんて皆無な鍵を挙げるだろうなあ。これでも彼は気づく気はするけど、……な、なんか、あれだね?!こういうのすごい恥ずかしいね?!?!!? 鼻歌混じりの捜索だな?と、長谷部くんには呆れた顔をされたが、探す必要のない相手だと分かっていても、少し胸がぎゅっとなった。 ああ、あの場の子たちは、これよりもつよく、締め付けられるような気持ちで、文を綴っていたのか。当人になってみなければ分からないことが、まだまだ世界にはたくさんある、みたいだ。
文字色
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藤鼠
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高麗納戸
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萌葱色
緑
若緑
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緑黄色
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黄色
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