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555.月蝕夜曲(終了)
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俺は、人に何かをプレゼントするっていうのが苦手だ。 基本的に他人に興味がないっていうのもあるし、もしかしたら結構自分のことだけで精一杯なのかも知れない。 世の中には俺の知らないことがたくさんあって、俺はそれらを出来るだけ知っておきたい方だから。 だから、ア右ン腕クが(恐るべきことに)俺の欲しかったものをプレゼントしてくることには、ただただ感服するしかなかった。 これは相手の普段の言動や考え方を把握していないと出来ないことだ。簡単にいえば、どれだけ相手の気持ちになれるかということ。相手が「何が欲しいか」を考えられるかということ。 日頃何気なく交わしている言葉の端キレと、俺の行動。俺の好み。その他諸々。 それらを情報として収集し、整理し、関連付け、推測する。もしかしたらこれ以外にも必要なことがあるかも知れない。 まだ俺とア右ン腕クが出会ったばかりの頃、俺はあいつにうさぎのぬいぐるみをあげた。 手乗りサイズの、白くて耳が垂れてて、赤いギンガムチェックのリボンなんかつけてるやつだ。 あいつの好みなんか知らなかったから、一緒に居た友達の好みで選んだ。そうだ、あの頃はまだ俺は違う奴とつるんでた。 あいつはそれを受け取って、……どうだっただろう、どんな反応だったか覚えていない。 だけど、あれからもう随分経った今。 俺はあいつが自分の部屋の中を撮った写真の中に、そのぬいぐるみを見付けた。 たった今の話だ。 あいつが好きなものは、鳥と、花と、酒と、きらきらしたものと、いい匂いがするもの。あとは紫色をしたもの。 そのいずれにも当てはまっていないのに、それは何故か、今もあいつの側にあった。
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