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376.【小説】愛と幻想のショートショート
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13 :零
2024/04/23(火) 19:14:19

【青髪と大学生】

 僕はこの春から大学生。まさか第一志望校に受かるなんて思いもしなかったから、今は喜びと期待で胸がいっぱいになっている。
 実は昨日、髪を青のメッシュにしてきた。美容の知識がほとんどない僕は、何故か髪を染めたいと突然思い立ち美容院へ行ったものの、美容師さんにおすすめされるまで、僕は青が似合うらしいということも、メッシュという髪の染め方も知らなかった。
 ともあれ、僕はこれで、憧れの大学生に一歩近づいた、ように思える。今日はサークルの見学に行く予定。目星は付いている。
 
「あっ……た。ここが【文芸サークル】の部室で、合ってるのかな」

 文芸サークルに入ることにしたのは、僕が無類の本好きだから。合格が決まってから、ホームページで見て速攻で決めた。

「えっと……」
 
 僕は気がつくと扉の前で立ち尽くしていた。幼い頃から小心者だったから、声をかける勇気が出ない。
 すると、シャーッと、扉が開いた。

「んぁ? おぉ! こりゃーこりゃー、我が校の新入り、つまるところは一年生、かな?」

 部屋の中からメガネをかけた細身な女の人が出てきた。僕は平均的な男性の身長なはずなのに、この人は僕より少し高い。

「え、えっと……」

 なんだ? 理由はよくわからないけど、この人のメガネ越しの目に、僕は引き込まれてしまいそうだ。

「おー、よく見たらキミも青髪じゃないかー。気が合うねぇ」

 本当だ。呆気に取られて全然気が付かなかった。

「あ、あの、サークルの見学に来たんですけど」

「あぁ、そうなのかい! こりゃー嬉しいよぉ。なんてったって、今日はアタシしかいないからねぇ」

「えっ」
 
 マジ? 今日、この人しかいないの? ということはもしかして……この人と二人きり!?

「あ、今『マジ? 今日、この人しかいないの? ということはもしかして……この人と二人きり!?』って顔してるねぇ……いいよその顔、好きだ」

 ば、ばれてる!?
 僕と同じ青髪のその先輩は、僕に顔を目一杯近づけると、こう言った。

「ま、入ってよ。少ーし、お話ししようか」

 先輩に言われるがまま中に入ると、部屋の中は本で埋め尽くされていた。すごい。図書館みたいだ。

「お、驚いた顔してんね。まるで『すごい。図書館みたいだ』とでも思ってるみたいに」

「えっ」

 また当てられた。なんなんだこの人は……超能力でも持ってるのか?

「んー、きょとーんとしたキミの顔、大好きだよ。同じ青髪ってのも、どっかシンパシー感じるし。んー、アタシの下僕にするのもありだねぇ」

「げ、下僕!?」

 この人、後輩のことなんだと思ってるんだ。

「ウソウソ。アタシ、キミに一目惚れしたよ……この髪、大学デビューってやつだろう? だったらさぁ、今日からアタシと付き合うってのは、どう? キミの風貌を見る限り、色んな意味でデビューしてなさそうだし……初彼女デビュー、ってとこだねぇ」

「え、ええ、えぁ?」

 慌てて変な声を出してしまった。いきなり何を言い出すんだこの人は。

「じゃ、次は、ドキドキ接吻デビューといきましょう……」

 窓の外を見ると、桜の花びらが吹雪いている。

「わぁっ!」

 先輩は僕を押し倒し、笑った。
 先輩は、とってもとっても不思議な人。そして、僕と同じ綺麗な青髪の人。そして、僕が人生で初めてキスをする人。そして、僕の人生で初めての恋人になる人。

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