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5 :フィガロ（魔法使いの約束）
2020/01/30/(木) 02:04

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少しだけ故郷の景色を思い出す。賢者様も雪深い場所で生まれたらしいけれど、俺がそういう場所で暮らしたのはもうずっとずっと昔の話で覚えているのは荒れ狂う海の風景くらい。世界中に、愛しい風景は多すぎて、でも愛しすぎるほどに振り返る景色は数える程しかない。
慣れって言うのは恐ろしいもので、いつからか排斥されることも謗られることも愚かで哀れだな、としか思わなくなっていた。いつかの俺は、憤慨したり、はたまた思い知らせてやろうとしたり、していた気がするのに。

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まだ歳若い彼女は、いや、元々そういう人なんだろうね。そんなことに全身で異議を唱える。そんな姿も、色々投げ出してしまったところのある俺には眩しく感じる。
今の俺は、いい人だねって言ってくれない人にそんなことないよって抗議して回るよりも、暖かい眼差しで見てくれる人に優しくするのに忙しいから。そう先が長くないってなると、物事を変えるのも最低限がいい。ましてや、自分は出来るだけ変わりたくない。だって、怠けていたいじゃない。かっこいいのは好きな人の為だけでいい。

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彼女が書庫で色々としている間、部屋でうとうとと昼寝をしていたし、これからもまた明日に備えて眠るつもりなんだけど、明日は好物だって言ってたパンケーキでも焼いてあげようかな。だって、彼女は暖かいシチューを作ってくれた。一緒に美味しいものを食べるのって、生きてるってことだと思わない？手ずから作ってもらったなら尚更嬉しいけど、屋台で一緒に買い食いするのだってきっとそうだよ。ごはんが美味しいと思った相手はきっと裏切らない。上手い下手じゃなくても、作ってもらったものや選んでもらったお店がすごく美味しく感じるのはきっとその人が相手のことをよく観察してるからじゃない？

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あー、ごめん。寝酒が回ってきちゃったかな。いつもお前は喋りすぎだってオズに言われるんだけど、そうかな？あいつの喋る言葉がいちいち短すぎるだけじゃあ……あ、また話しはじめるところだった、いけないいけない。今日はこの辺で一旦おしまいにしておこうかな。だって、明日の朝は出来れば彼女より早く起きて、パンケーキが焼けたよって言って起こしてあげたいから。朝ご飯だよって声をかけると、いつもはそんなに寝起きが良くないのに一回で目を擦りながら体を起こすとこ、とっても可愛いんだよ。さて、それじゃあおやすみ。

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