部長はホンマ良え人で。弱いとこもあるけど可愛え人で。俺の周りの奴らはみんな褒めよる。ほんで褒められて当然やと、俺も思う。
付き合うてる俺やないと分からんあかんとこっちゅうのも勿論あるけど、そこも含めて可愛え御人や思っとる。やから、俺は部長を好きですよ。愛には様々な形があるから。これは確かに、何らかの愛や。
謙也さんへの思いも同じかもしれへん。

愛、アイ…な。中学生には難しい過ぎる問題や。

謙也さんは俺のこと、良え後輩やと思ってるんやろか。面倒臭がって殆どの面子に連絡取らんらしいんに、恋人を除く中では俺にだけ頻繁に連絡くれる。それは、一種の特別やて…自惚れるべき、やろか。

アンタの事に関しては自信あらへん。
それは、俺もアンタも嘘吐きやから。

せやけど。謙也さんが割りと自分勝手なんも知っとる俺としては、今の状況はそこそこの好意が向けられとる故やと思っとります。

コーラ、ピノ、アクアソーダ。
謙也さんの最近のお気に入り。あの人がよう食ってんの見るせいでコンビニに行くとつい同じモンに手が伸びて、冷静に引っ込める。
部長が好きやて言うモンもちゃんと知っとるのに、見ても部長を思い出すだけで同じモン食いたくならんのはどうしてなんやろ。

謙也さんと会いたい。やけど二人きりにはなりたくない。やけどそこに千歳先輩が加わるんも嫌。
毎日謙也さんの事ばっかり考えてまうけど二人になりたい訳でも、触れたい訳でもない。この気持ちは何なんやろか。…厄介や。

俺は何になりたいんやろ。
謙也さんの一番の、…後輩？

最低や…。
聞きたくなかった。

きっとその場限りの都合の良えリップサービスやろうと思う。けど、もしも万が一実現したら。俺は謙也さんと縁を切らなあかん。もう謙也さんのとこには行けへん。
俺も大概嘘つきですけどあんたも相当やわ。
別れたらの話もする癖に、そんな未来の話もするんですか。

俺の方が大事やて言うた癖に。それをすると俺が嫌がるの解っとる癖に。それを許可した事、俺が知らなければ良えと思ったんやろな。
阿保。早よ別れてまえ。

あの人に読める空気なんてないやろて勝手に決め付けとったけど、今回はちゃんと読んだんに驚いた。
見てみぬフリをしようと思っとったから、嬉しいような、拍子抜けなような。
まぁ大人しくしとってくれるに越した事ないわ。

こんまま早よ＿＿てくれたらいっちゃん良えんですけどね。

謙也さんは変なとこシビアで。千歳先輩を大事にしよるくせにいつか別れたらの話もようする。
そんなん話すならほんま早よ別れろや。自分ではするくせに俺が別れろて言うと不機嫌になりよる。アンタのそういうとこは大嫌いですよ。
ほんまはアンタに千歳先輩の話をされるんも嫌や。聞きたない。俺が嫌がるん分かってて態としとるんやろうな。そういうとこ、俺らは似とると思います。

謙也さんに貰ったキーホルダー。携帯に一回つけて、謙也さんが気付いたん確かめてもう外したった。
大事に大事にずっと使い続けとる方が喜ばれるんやろうけど俺はそんなんしたらへん。

勘違いせんといて欲しいんは俺は謙也さんなんか好きやない。ただ気になるだけや。
謙也さんなんかとキスするんもセックスするんもごめんや。やけど謙也さんが千歳先輩とそういう事するんは腹立つ。しかも俺は部長とする。

恋だなんだ、そんなん中2の俺に分かるはずもなく。
この気持ちに名前はつかんでも良えと思っとる。

誰かはきっと、恋やて言う。誰かはきっと、憧憬やて言う。誰かはきっと、ただの嫉妬やて言う。
ほんで俺はきっと、絶対、恋とは呼ばない。

天邪鬼の青い春。


登場人物
→謙也さん
俺の大事な俺だけのあほ。
→千歳先輩
謙也さんの元恋人。永遠のライバル。
→切原
謙也さんと俺のダチ
→他数名

閲覧自己責任。