chapter 5.発狂している黒猫。 せんぱい。俺はね、常々不思議に思っていたんですよ。 なんで日本では、1人以外の人間と付き合ったり結婚したりすると、「悪」になるのかって。 他の国ではさ、一夫多妻制とかあるじゃん? それなのになんで、この国はそれが「悪」なんだろう。愛する人間が沢山居るって、そんなにイケナイこと? 俺は素晴らしいことだと思うのに。 ねぇ、教えてよ。せんぱい。 可愛い可愛い俺の後輩の頭はブッ飛んでいる。 白い肌に黒い髪。黒猫のような俺の後輩は、いつもどこかおかしい。 「…それはさー、教えてあげようアカヤくん。」 「うん。」 「それはね、俺みたいな不幸な人間が増えるからだよ。」 キョトンと首を傾げて何かを考えるように黙り込んだその顔を、思いっ切り殴ってやりたいと思った。 きっと紅い血が舞って白い肌に映えて、とても綺麗だろうと思った。 でもそんな考えは数秒後に、そうまるでホットコーヒーに入れた粉砂糖みたいに、さらさらと消えてしまった。 「せんぱい。俺は自分に嘘を吐きたくないんだよ。俺はウソツキだから、自分にだけは正直でいたいんだ。愛してるよ、せんぱい。」 その言葉を聞いたあと、俺の口からはぁ、と出た溜息は多分ピンク色だったと思う。 細い腕が伸びてきて頬を撫でられたとき、この気持の行き場所はどこなんだろうなあとボーっと思った。 ホットコーヒーに溶ける粉砂糖だって、底には僅かに沈殿することもあるし。さ。 |