chapter 6.隠語 麻雀で言うところの牌が好きって聞きましたよ。 なんて満面の笑みで小首を傾げられても、俺は引きつった笑顔でそっかあ、なんて野暮ったく返事する事しか出来ない。 話したのは恐らく仁王辺りだろうなあと自分の浅はかさに項垂れながら深く溜息を吐いた。 「ねえ本当に好きなの?」 「あー、うん。好きだよ。」 「変態じゃん。」 「いや、あくまでさぁ俺は。そういう未成熟な美しさっていうのが好きなのであってさ。別にババアが剃ってても興奮しねーわけ。なんつの、天使みたいで可愛いじゃん。分かる?」 けたけた笑う後輩の頬をぶに、と摘まんで早口でそう説明すると、締まりの無い笑顔を浮かべたままそいつは俺の手首を掴んだ。 「じゃあ俺はアンタのために剃るよ。」 「いやほんとやめて。」 被せるように返事した俺に大層不服だったんだろう、手の甲をガリっと噛まれた。痛い。痛いなあ。本当にやるせなくて行き場の無い感情を持て余した日常だ。そんな気も更々ない癖にあたかも本心のように振る舞う妙な恋人に振り回される日々だ。甘いお菓子で誤魔化し続ける毒だ。 でもそんな時間を酷く愛してしまっている。 |