日記一覧
怠慢シエスタ
 ┗189

189 :白石蔵ノ介
2011/12/18 23:17




#舌の根も、乾かぬ内に。





謙也は、俺の目も当てられんほどに子どもなところや、認めたくないほどに矮小なところや、自覚しきれんほどに最低なところも、好きだという。
俺はその度に少しぞっとして、忍足謙也という人間の、その大部分が恐ろしくなる。

時に辟易として、時に絶望して、それでも謙也は俺の全てを受け入れようと、自分の傷口を塞ぐよりも先に俺の傷を探す。
俺はと言えば、目の前でぱっくりと割れて血を流しとる謙也の心を見て、ぼんやりと痛そやなあ、と思いながら、俺をおもんばかるこいつを想って苦しくなる。
傷口を塞ごうと伸ばした手は、その実治療しようとは全く思ってへんくて、むしろもっと裂いてやろうと血でぬるぬるした患部に爪を立てる。
肉をつかんで、横に広げて、塩を塗り込む。
祈るように、どうか、おれを嫌いになってくれますように、と乞いながら、傷を膿ませていく。
けれど残念ながら、謙也は受け入れてしまうのだ。
たちの悪いことに、さんざ傷口を悪化させておきながら、俺は俺を許す謙也の優しい心を確信して、仄暗い安心感を得る。
これが、ここ数年間繰り返してきた、俺と謙也の別れ話だ。

ただ、感情は揺れ動く生き物やから、いつまでも安心感を安心感やとは解釈しない。
この後ろめたい安心感というのはまた、なかなか、どうして、たちがわるい。

-------------------

たちが悪いのは恐らく、きっと、たぶん、謙也も同じなんやろうと思う。
どうしようもなく、本能的に、けれど計画的に、長い間、お互いを好きでいる俺たちは
今になってお互いを無くすことが、どれだけ致命的か分かっている。

(それやのに俺は、なんでお前を追い詰めることばかり口走るのやろう)


#白石、白石、…俺はな、お前がええんや。辛い思いいっぱいさせて、ごめん。楽にさせてやれんで、ごめん。けど、また笑わせたるからな。


(それでも俺は、俺のために、お前の元を離れたいと思う。)
(なんで、俺は、こんな風に言わせても尚 お前から離れたいて、言えるんやろう)

(弱虫、臆病者と呼ばれても、なお。)



[削除][編集]



[][設定][Admin]
WHOCARES.JP