:世の間:レストルームから戻れば、慣れた様に身体を滑り込ませる担当卓。
丸椅子に腰掛ける新人ヘルプと会話を弾ませるリコチャン(常連客、スペックは20の大学生、恐らくナンバー入りキャバ嬢)がこちらを振り向いて、目をキラキラさせながら俺に飛び付く。
「リョーガくんッ!何処、行ってたのォ!」
営業用かの如く、甘ったりィ声。
瞳の縁を彩る睫毛が黒々として、まるでチワワみてェに潤む。
――否、唯の化粧直しだが。
「えー!そのままでじゅーぶんッ!カワイーのに!」
――そりゃ、ドオモ。
甲高く、飴玉みたく転がる声音が続ける。
「今ね、今ね、ライムくんと今イチバン何がしたいかお話ししてたの!リョーガくんは、時間がたっぷりあったら何がしたい?」
……したい、事、ねェ。
一瞬、マジに考えちまったが、愛犬が散らかした玩具の散乱する無惨な自宅が頭を過ぎり、(
随分長ェ事インクを滲ませて無ェ日記帳を思い浮かべ、)
「……嗚呼。そうだな、リアルに部屋の掃除と、ヒメサマ(愛犬)のご入浴(
埋もれちまったナリ日記の更新)、かね」
「カワイイッ!リョーガくんのそうゆう世間ズレした王子様みたいな回答、スキーィ

」
何が、如何。
可愛くて、世間ズレしてンのか。誰か教えてくれ。
オンナは何でもかンでも、カワイイで括りたがるが、未だに其奴が理解出来ねェなァ、出来ねェよ…。
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日記のネタは数多く有るンだが。落ち着いて綴る時間が無ェ、つう。