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44 :
宍戸亮
2016/11/05 17:02
久しぶりに会ったお前は少し大人びて見えた。
お前、なにやってんの。カラカラに乾いた口から出た言葉はそんなもんで、笑ってしまう。好きだなあ、不誠実にも、全部が霞んでしまうくらい。静かに溶けていったと思っていた気持ちは、結局おれの奥底で燻っていただけだったのだ。笑ったときに目尻に少ししわがよるのも相変わらずで、(老けたからではなく。あいつは前からそうなんだ)でも、疲れた様子を感じさせる表情はおれの知らないものだった。
おれはおまえがずっと好きなんだ、そんな馬鹿げた言葉が不意に口をついて出そうになって、飲み込んだ。せり上がった吐き気を無理やりくだすような感覚だった。言葉にしそうだったというより、今思い返すと叫びだしそうな気持ちだった。でも、思いとどまって正解だ。なんせおれの四年間が全部無駄になる。ああ、もう、本当に手が届かないのだ。触れることすら出来やしない。
せめて好きでいるのをゆるしてほしい。俺が口を閉ざし続ける限り、許しを乞う必要だってないのはわかっている。だって、お前は知らない。おれがおまえを見る視線の意味とか、ぶつかってしまった指がどんなに冷えているかとか、まァそりゃ、悟られないように必死だから、知ってたら笑えるんだけど。
結婚おめでとう。
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