
金魚
透明
硝子ン中で暮らす日々、其れは倖せ遣ろうか。自由を目前に、決してその
容器から抜け出す事は出来ん。
例え空が見えたかて、川や海が一望出来たかて…──抜け出せん見えへん
糸で拘束されて。倖せと呼べる日々を金魚は送れるん遣ろうか、酸
素も人間に与えて貰わんとままならん。其れは自分の
意思で生きてる言うんか、…人間のエゴで生かされとるダケやろ。
自由な世界が見えるから、現実が辛く為る。頑張ったかて不可能な事はある筈や、其れでも
死を覚悟で御前は外に出たかったんかな。
水槽から落ちて既に動かン為った、一匹の死骸を俺は抱えて暫く呆ける事しか出来んかった。