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花束の返礼
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106 :
仁王雅治
2012/05/29 11:48
#雷が
好かんと、よく柳生にひっついていってた時期があったことを思い出した。情けない話。ちょうど去年ようごろごろ言ってた季節じゃけ、結構昔だな。ベッドの上で身を寄せた俺をあいつは意外そうに笑って、へそが取られるとか取られんとか言うてふたりでじゃれた。両手で耳を塞いで優しくやさしくあやして、いつでも起こしていいんですよなんて甘やかすから、体裁を投げ出してべたべた甘える口実をまたひとつ得てしまった俺は内心雷鳴を心待ちにするようになって、そのうちなんだかもうあまりあの音なんか怖くなくなったように思っていた。
数学の授業中、雨音がすると思ったら不意打ちの大音量が鼓膜を貫く。微睡みからいきなり意識を引き上げられて、シャーペン握った手がぎくっとした。
雲の中がいくらか光って、少し遅れて俺の嫌いな音が届く。隣に柳生がおらん午前。残念じゃなあとため息をついたら少しさみしくなって、ああ、やっぱり好かんのう、雷。早く止まんじゃろうか。
柳生がえろい。さっきまでの立ち姿とふたりっきりの表情がアンバランスで文句なくえろい。
だだっ広く思える空っぽの教室の中、お互いを取り巻く狭い空間でだけ跳ね上がる空気の濃度が何とも青臭くて、だってたまらんぜよ、もう何もかもどうでもよくなって、熱っぽい視界の中にはお前しか見えん。
「このまま、***」
おまんが教室でこんなことするなんて。
雅治は未来のダーリンとちょっと天国の下見に行ってきます。
先生、部長、お父様お母様、どうか探さないでください。
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