自転車が返ってきた。
思わぬ展開を経て無事帰還。
その経緯は取り敢えず割愛するとして、何はともあれ良かった…素直に嬉しい。
新しい自転車を買う必要も無くなったし、買った後で見つかって自転車の持ち腐れになる心配も無くなった。
大円満だ。
ほっとしたら睡魔が襲って来たので、昼寝までしてしまった。不覚。

彼にも報告したら、良かったなと頭を撫でられた。
その仕草に少しときめいたのは、此処だけの秘密にしておこうと思う。
そして今、無性に彼とキスがしたい。
何なんだ、発情期か。
後で彼の唇を奪いに行……けたら良い。
…妙に弱気なのは気の所為だ。緊張してる訳じゃ無いからな。

結局、自転車は買い直す事にした。
見つかる可能性はかなり低いと言われたし、月曜日からはまた必要になるからな。
手痛い出費だが、仕方ない。
落ち込んだ俺を、彼が慰めてくれた。
おかげで随分と元気になれたんだが、俺が愚痴ばっかり零して彼には逆に悪い事をしてしまったと思う。

盗難対策に、自転車にGPSを付けて管理すれば良い、なんて事を彼と話した。
画期的で便利なアイデアだが、高度な技術と高額の費用が掛かるので実用化は不可能だろうと云う結論に至った。
自転車にGPS…、良い案だと思ったんだが。

自転車が。
俺の自転車が、盗まれた。
3年程前に、何だったかは忘れたがお祝いとして祖父に買って貰った、深緑色の自転車。
それが何者かに盗まれた。一大事だ。
今朝は普通に起きて、寝不足と夏バテに負けて昼前まで布団でダラダラしていた。
その後、近所の喫茶店で友達と会う事になり、仕度をして家を出ると、いつもの場所から自転車が忽然と姿を消していた。
パートに出ていた母に電話をすると、「今朝私がパートに出る時はいつもの場所に止めてあったわよ。」との返事が。
兄貴の自転車はちゃんと在るのに、俺の自転車だけが消えるなんて有り得るのか？
取り敢えず友達には自転車が消失したので行けそうに無い旨を連絡して、朝から出掛けている兄貴にも電話。
しかし、やっぱり「俺が家を出る時はいつもの場所にあった」との返事。
仕方なく警察へ行って盗難届けを提出。
その時聞いたんだが、俺が住んでいる地域は、学生による自転車やバイクの盗難が多発しているんだそうだ。
鍵を二重にしておくべきだったな。

自転車が無い今、明日からの移動手段が減って困っている。
自転車って、こんなにも無いと不便な物だったのか。
大切な物は失ってから大切と気付く、と言うが、あれは本当だな。


かなり、落ち込んだ。
新しい自転車を買うべきか如何か、迷っている。

目が覚めてしまった。
一度覚醒すると中々眠れないんだよな。
彼とおやすみを言い合ったのに、熟睡出来ない。
浅い眠りを細切れに繰り返しているから、朝になっても体から疲れが抜けていなくてダルさが辛い。
やっぱり、夏バテが良くないんだろうか。


明日は暇だから、一日ゆっくり過ごそう。
少しでも疲れが取れたら良いんだが…。

会いたい、なんて日記に書いておきながら、昨晩は疲れから早々に眠ってしまった。
自分が何時眠ったのかさえ解らない程の熟睡だった。

朝目を覚ますと、彼からメールが入っていた。
彼が深夜にわざわざ俺の為にメールをしてくれたんだと思うと、堪らなく嬉しい。
名前を呼び、おやすみとたった一言添えられただけのメールだったが、俺を幸せにさせるには十分過ぎる程の威力だ。
俺からも、おはようとお礼のメールを送っておいたが、彼は見てくれただろうか。


彼は俺の毎日に幸せを満たしてくれる存在。
彼にとっての俺は、どんな存在なんだろうな。