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1065.ラストノートがわからない
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17 :
タルタリヤ
2023/11/10(金) 13:55
🐋🏹明星の在処
魔神任務四章五幕バレ/遠く近い、嘘のような幕間
鍾離先生と仲を繋ぎ直して以降、一度だけ酷く体調を崩したことがある。璃月の季節の変わり目に慣れなくて様々な疲労が起因して、珍しく全身の気だるさと頭痛に苛まれた日だった。
その時は本当に偶然なんだけど鍾離先生自身も凡人の身体に不具合が起きていて、不覚にも二人して寝込む羽目になっていた。あの時はまだ普通の茶飲み仲間だっけか。
体調不良を黙っていて無理して話した所でブツっと切れるくらいなら申し訳ないけど心配されていた方がマシ。少なくとも俺はそういうタイプ。感情の駆け引きで後から気まずくなるくらいなら殴り合いで解決した方が絶対に良い、と真顔で言う先生も多分同じ。
今にして思えば語彙が溶けるなり舌を噛むなりしてでも正直に重なり合う感情が心地好くて仲を深めようとした可能性がある。
茶飲み仲間だった頃の愛らしい呼ばわりは流石に戸惑ったけどあれも鍾離先生なりの親愛表現なんだろう。
故に俺はあの人の責務から放たれたゆとりを縫ってしまったんじゃないか、と以前考えたことがある。恋だと認めてしまっても俺はどう足掻いても先生の孤独を最期まで埋められない、世界征服を果たした後でも終わりはある。響き続ける俺の名を聞くことは残酷に思えたからだ。
都合のいい関係に収まるのが利口な俺、として出来るやり方だと当時は考えた。そうしたら鍾離先生も立場は違えど同じだ、限りある時間を俺に使って欲しくなかった───なんて言葉の割には幸せそうに笑って枕に頭を押し付けて。後は昨日乱入してもらった真意の通り。
あぁ、やっぱりこの生き物の我欲は俺のものだし俺の我欲の果てはこの生き物にある。誰にもやるものか。
そう思って水底の汚泥のように固まった意識から目を覚ます。節々から指先まで釘に打たれたみたいに痛いし頭は”ヤツ”の鳴き声でガンガンする。一つ呼吸をする度に宙の塵が肺に張り付くようで気持ちが悪い。身体に周る血は本当に潮では無く俺の血なのだろうか、生と死の狭間に何度も叩き落とされた最高の昂りの代価はあまりに大きくて。痛覚こそ俺が得た副賞ではあるものの、それはそれとして不快感はある。
但し俺の魂に掛けられた差し押さえのような札だけは汚れずに掛かったままだった。永い時を願ってしまった鍾離先生への、俺の今生一番の甘やかし。……早く身体を治して戦場に駆け出すより前に、先生に酷い化け物を見た笑い話に変えて伝えたい。
あんたが札を掛けた男は真昼にも輝く星であり、独酌の肴にしてしまいたくなる寂しさで輝く星では無い男なのだと飛び込みたくなった。
何時か経験した冬国で夜、東を睨み少し笑った日の話。
…それにしても師匠。俺をゴミみたいに投げなくてもいいだろう。いや俺は確かに強いし頑丈なんだけど。
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