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1065.ラストノートがわからない
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33 :タルタリヤ
2023/12/16(土) 23:12

🐋🏹慈雨と星

日記にも記した前回の流星群からまた見ようと約束をして、鍾離先生が数週間前からそわそわしていた木曜日~金曜日の流星群は璃月では見られなかった。予報士曰くモンドの北西部では見られたそうだけど、日帰りで星を見る為だけに行くには遠すぎる。
それでも、と悪足掻きをして雲間を睨んでいた病み上がりの俺を気遣ってくれてか自分の楽しみの為にも鍾離先生はコレクションにしていただけの特別な水瓶に俺の水元素をたっぷりと張って仙力を注いだ水鏡で雲の上を切り取った星空の一端でずるい天体観測を提供してくれた。
長く縦に流れる星、横一文字に流れる星、緑色に一瞬光る星、大きく膨れて弾ける星、端で短く落ちた星、放射点を境に連続で落ちる星。予測通りとはいえ前回よりずっと多く暗闇を飾っていた。
鍾離先生の洞天いえの中、稲妻から男二人並んでも余裕なサイズで特注した炬燵だって言うのに二人お茶を片手に肩をくっつけて子供のように笑って軌道を指で追いかけて、たまには良いだろうと二人の心の中で小さな小さな願いを星に託す仕草の無邪気さはそれはもう俺達には不相応だっただろう。
でもそれこそ、俺が欲しかったもの。荷を下ろして一人浮世を歩きながら過ぎ去った物を嗅覚で辿って遠くを見つめるつまらない生き方の面倒を見たくなって、あの人が今をなんの気兼ねもなく笑う時が増えればいいと伸ばした手で渡した手紙は契約書に変わって、もう片手で抱き寄せられていた。

先生が個人的に得たいと思ってしまった幸せの大部分が俺であるなら、そこは星に願うものじゃないんだ。絶対に達成させるからこそ声に出して星に宣戦布告をする。
二人で叶えるものだ、と楽しげに俺の頭を撫でるこの生き物と戦場では得られぬ最たるものたる”幸せ”を添わせているんだざまぁみろ。……そういう扱いにしては丁寧な言葉で宣言という名の願いを口に出しあった。
「どうかこのまま、鍾離先生の笑顔を一番近くで見続けられますように。」「次の流星群を見る日は晴れますように、公子殿の体調が安定して年を越せますように。」
口に出してない範囲が何なのかは聞いていないけど、俺が何の気なしに作った自家製バターで提供したパンを食べながら公子殿このバターでサブレが食いたい(※作ったことない)と真顔で突然強請るような部分的に変になる先生だから、突拍子が無くて新しい事を願っているんだろうと予測はつけている。
下らない事を一緒に見ていようよ、蕩けた声で名前を聞き合う夜を増やそうよ、武具でも筆記具でもなく互いに触れる手を躊躇わずにいようよ、二人で囲む食卓で美食の記憶を舌で覚えようよ、大切な人の香りを鼻と心で紐付けさせていようよ。
───叶えるからこそ時間差で俺はここにも”願い”を時間差で書き残しておこう。先生、ズルして愛して思い出を増やしてくれてありがとう。だいすき。


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