『まだ時々吏来さんに俺は必要ないんじゃないかって感じてしまう事がある』
全く、そんな事を君に言わせるのは何処の誰?…あ、俺か。なんて。君は何にも分かってない…いや、俺が悟らせない様に振る舞っている事が君を不安にさせちゃったのかも。やれやれ、秘密主義が此処に来て裏目に働くとはね。一人になったあの日以降、足は勝手に美術館へ向いていて。並ぶ絵画を眺めながら君が俺を一枚の絵だったならどんな事をしてでも手に入れる話をしていた事を思い出した。美術館の外の植え込みの花を飛び交う蝶を見て、雨で羽根が濡れた蝶を見つめて心配していた君の横顔が浮かんで。朝起きて君が隣で眠っている事を確認しては安堵する。何をしていても何処に居ても君と過ごした日々を反芻する俺が、君を必要無いと思う日なんて来ませんよ。不安な事を考えるなって今の俺からは言わないし言えない。だけど君の抱えたその不安から出来るだけ遠くに連れて行くのは他の誰でも無い、俺が良い。
-----------------------------
『寝るまでは一緒に居たい、吏来さんが傍に居ると分かっていても、毎晩寝る前は寂しい』
そんな事を言うものだから思いっきり脇腹を擽って、唇を触れ合わせて、何時の日だったかお揃いで買ったテディベアを抱かせて。それでも泣き出してしまった君は俺に、好きでごめんなさいと零した。謝る事なんか何一つ無くて、寧ろ俺はこんなに深く愛して貰える事が初めてに近いから嬉しくて堪らない。多くの恋愛を経験して来たけど、君程の相手は今までもこれから先も居ないと思ってるよ。向き合ってくれる君から送られるひたむきな愛情に返せるものを、俺が持っていたら良いんだけど。
好きだよ、君が。誰よりも何よりも。俺を深く愛してくれるのも、きっと君だけ。