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折針入れ
 ┗966

966 :鶴_丸_国_永(刀_剣_乱_舞)
2017/07/25(火) 08:16

折れ針と冠した諦めきった此の部屋に、この時期にしてなんとも不似合いなことを言うものだと自覚はしつつ、ともあれ。



思考を削り落としてなりふり構わず暴れる獣は確かに強い。瞬間的な力も、判断までの行動との繋がりの短さに、結果として安堵の場所での逆残の思考により学びを得て咀嚼し、腹に留めてどんどん打と経験に積み研ぎ澄ませていけばいい。あるから、在る。俺はそれをどう在るかは、知る必要がない。
これが本当に正解かと問えば其の答えであると胸を張って言えないのは、獣であるが所以の意地汚さを知ってのことか、地面を舐める狂気へ隠した怯えを見られまいとのことか、はたまたそうしてでしか得られない自己顕示欲に似た自分への特異性か、とどれも嵌まるだろうなと他人事のように見ていたからだろうなと相変わらずに他人事に遠目に見る。俺の中でもそうして感情に言葉をはめれば楽になる。俺は、俺さと答えらしい耳触りのいい言葉があれば他者への説明もそれでいい。現にそのやりかたで、何もかもが早く片付いていく。片付けていかなければならない。埋もれていく。それ以外の術がない。あともない。


然し、脆い。
戦場で陣風を舞い含ませ遊ぶ其の頃と違う。
少し知恵の付いた相手が敵なら俺は負ける。
肉の強さの問題ではない、それこそ格とそういう意味での「経験」と、堅苦しい狭い呼吸ではなく柔軟に柔らかく練り込み打たれたしなやかでなめらかな鋼には、かなわない。

畑違いだと諦めれば早い。
そいつはそういう環境が揃いそういう目を持てたからこそそう立派に出来るんだろう。
素材が違ったんだろう。
俺はやれることをやろう、これ以上自分に求めたって無駄だとこちらはこちらの分野なりに線引きして眺めてはいたが。




敵が有る。
俺が対峙した。
この場で、仕留めねばならない。

と、いう事実のもと、そうして自分の能力への諦めを言い訳にすれば自分が許されるわけではないというのは、そうして対峙した今の瞬間に思い出すんだから参る。これまで負け知らずだったからだからこその驕りなんだろうが。
俺にとって、俺が劣っているからと自分の中で諦めをつけて道を譲る事は出来る。負けてやろう、道をどうぞ。或いはこの分野でのドンパチがかなわないなら俺の知る分野に引きずり込んで無作法にぐちゃぐちゃに殺してやることも出来る、これが俺にとっての模範解答で最短の解決でもあった。
だが、専売特許が敵と重なったらどうなる。
例えば相手の基盤が頑丈で自分の作法に持ち込めなければどうなる。
反射だけで動く俺の所作をかいつまんで打を打つ、冷静な目と理性があったらどうなる。
そんなこと、考えなくなってもう久しい。


何にでも勝てていると思った。獣なりと無差別に食い千切り矜持も捨てた俺など何がいきものだろうかとふてくされていたその実、敵の色を見て、俺は、勝てる敵だけを選んでいたに過ぎない。命の駆け引きだというのにそうして相手に追い求めさせる区切りと、自分は傷一つなく勝てる勝負だけを勝ち続ければいいという数のこなしかただけを、無意識のうちに選んでいた。なりふり構わずだのという潔さなんてない。
戦場が大抵同じものだと見えるようになってどれだけ経った。
夜目の効かぬ景色の中、薄墨に皺の寄らぬよう丁寧に擦り穂先を揃えた考え方をしなくなって、
匂いの分かりたがる呼吸をしなくなって、どれだけ。

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