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148 :白鬼院凜々蝶(妖狐×僕SS)
2016/03/06(日) 11:26

>繰り返し見る夢

拝啓、身を切るような寒さも少しだけ和らぎ、それでも朝晩の気温には冬の最後の瞬きを感じる季節、元気に過ごされている事を願います。

御狐神君が好きだと言っていた海月を見に行きました。
小さな展示コーナーにはお世辞にも多いとは言えないけれど幾つかの種類の海月達が各々、狭い水槽の中を柔らかく器用に漂っていました。御狐神君と見た海月も居て、水槽の中を目を輝かせながら眺めて写真を撮る君の姿が容易に思い返されました。海月の生態について、死んだら水に溶けるのだと言う話を私は君から初めて聞いた事やその死に方が綺麗だと思った事も。

その中で私は飽くことなく赤海月を眺めていました。
御狐神君ならきっと御存知でしょうが赤い模様がとても綺麗な海月で青い水槽と赤い模様のコントラストが鮮やかで、水槽が水色であれば尚良かったのにと、そんな事を思いながら水槽の中浮上しては直ぐに底へと沈んでいく赤海月達を愛しく感じていました。
因みにこの赤海月と言う海月は毒が強く、刺されるとかなり強い痛みが生じるそうです。
とても親近感を覚えてしまうのは性分でしょうか…、生憎水槽の中の彼に触れる事は叶わなかったのでその痛みの強さはわかりませんでしたが。

その後にはふらり、御狐神君と訪れたチョコレートのお店に行きましたが生憎と定休日で…残念ながらきっと私にはあまり、縁の無い所なのでしょう。


椿園にも行きたかったのですが残念ながら帰宅。
椿園は、本当は御狐神君と一緒に行ってみたいと願っていた場所でした。それは私自身、好きな花だと言うこともありますが雪兎がとても映えるだろうなと言う想像からで、雪の積もる頃に二匹の雪兎を作って並べたいと思っていました。

張本人でさえ忘れていた事ですが送った和歌の中に季語の寒椿から始まる和歌もありましたね。
全く無知の世界で技法も作法も知らず、その中で季語と言うものを、枕詞と言うものを和歌を送るに当たって初めて知りました。
送られた彼が『一体何者なんだ』と驚いてくれた事を知り、悪戯が成功した子供のような満足感と安堵感を得たのを懐かしく思います。
付け焼き刃のような僅かな知識でその気が惹けたなら冗談を真面目に返して良かったと…ですが、本当は此方は全く冗談とは受け取っていなかったので(と言うか彼はあまり冗談を言う印象がなく、寧ろ冗談めいた戯言を本気で言うので疑う余地もなく)最初の和歌を返された時の彼と同じくらいには頭を悩ませたのを今でも覚えています。『何を言い出すんだ、此奴は』と。
思えば、其処までする義理がない頃にも関わらず、…ですが彼の期待に応えたいと思った事は事実なのです。でなければ、丁度百人一首に興味を持っていた頃とは言え自分で詠む等と大それた事はしなかったでしょう。
枕詞と先程挙げましたが、枕詞には対となる言葉があり限られた文字数の中でその二つの言葉を交えて表現する技法です。
其の技法も最初の和歌に使いました。『射干玉の』。
其の時送った和歌は、素っ気ないものでしたし彼には変に期待を持たせて落胆させてしまいましたね。

今でも意味を覚えていますか?

『夢を見る前まで君を意識しているが君が夢に出る事は出来ないだろうね、秋の夜長と言えども』
彼が夢に現れる事など無いことを強調してはいましたが、本当に伝えたかった節は『夢を見る前まで君を思っている』事でした。
素直さに欠ける性分では和歌にしても其の意味にしても、ちゃんと伝わらないのだと知り、勿論それを良しと訂正さえしなかったけれど、もう時効でしょう。
和歌の世界は、とても繊細で少し難しいところもありますが楽しいものです。彼には、もう苦手意識を植え付けてしまったので詠む事は無いかも知れませんが、既存の和歌を、其の意味を、知ってみる事はとても新鮮な世界が見えるものです。
もしも、苦手意識が和らいだ時は少し検討してみて下さいね。

そして、気が向いたら御狐神君に仮ではない本当のアドレスを伝えるに当たって変えたアドレスの意味を解いてみて下さい。
百人一首を見ればきっと直ぐにわかります。


#あの頃見なかったはずの君の夢を、今更時折見るのです。

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