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赤司征十郎(黒子のバスケ)
2016/04/18(月) 00:17
今年の桜もまた、天帝の涙によって満開になった途端に無残な状態になってしまった。天帝は本当に嫉妬深くて泣き虫のようだね。
そんな、友人に爆笑されたテツヤの解釈を僕は案外気に入っている。
今年も桜が咲いて、忘れていたテツヤが教えてくれたジンクスを思い出したよ。落ちてくる桜の花弁を捕まえられると願い事が叶うという話。
何度か桜の花弁が降る中を歩いて……それでも一度も手は伸ばさなかったな。伸ばさずにただ傍観していたよ、桜もだけど花というものは何となく触れるのに躊躇ってしまうな。躊躇ってしまうようになった、という方が正しいのか。
そんな調子である夜に桜並木道を歩いていると一枚、何とも神経の図太い桜の花弁が僕目掛けて飛んできた。…桜の花弁ってあんなに突っ込んでくるものだったか?もっと儚いものだったと記憶しているんだが最近の品種改良を施された桜は神経の図太さが違うのかな…いや、あれは染井吉野だったが。
昔のテツヤみたいだなと少し笑ってしまったよ。岩戸を叩かれた時のような、御節介さが。
呆気に取られている間にその桜の花弁は消えてしまったからもしかしたら僕の錯覚かもしれないし、僕の眼を持ってしても見抜けないミスディレクションでもされたのかもしれない。実に愉快な魔法だったが消えてくれてよかった、手元に残っても持て余すだけだからね。
テツヤは何を願うのだろうね。そもそも、ジンクスに挑戦したのか定かではないけれど、もしも捕まえることが出来て掛ける願いがあるならそれが叶うようにこの間僕にタックルしてきた花弁に願おうか。
夜といえばもう一つ、夕食を終えてホテルに帰るまでの道程で手を繋ぐ事を憚られてテツヤの服の裾を摘まんだ時に伸ばされた手のひらを思い出したんだ。
切っ掛けは暗くした室内にいた警備員。その後ろに僕は立っていたんだけれど、腰でも痛いのか、彼が右手を、正しくは右手の甲を腰に当てた時にその手のひらに見覚えがあることを思い出した。
…その瞬間まですっかり忘れていたけど思わず警備員の手を掴みそうになったよ。…勿論掴んではいないよ、僕の自制心の強さは身に染みて知っているだろう?
その手をとても、懐かしいと思った。僕が手を伸ばすまでを待つ手のひらが。
最終的に僕はその手を掴んだけれど、実はその手を掴むことに当時まだ躊躇いがあった事を今更だが告白しておこう。
…というか、あれから何年か経った今でさえ、手を掴む・手を繋ぐという行為は苦手な部類だ。御蔭で未だに手を繋いだ感覚を覚えているよ。上書きされる記憶がない分、どうやら消えにくいようだね。
手を繋ぐという行為は本当に崇高な行為だ。≪共に歩く≫≪時に導になる≫そんな、肩を並べて歩く・歩きたい人とするものだろう?
それでも手を伸ばされて、僕を待つ手のひらにプレッシャーと同時に少しくすぐったい様な気恥ずかしい様な、形容しがたい感情を抱いた事も事実だし、結果、掴んだのはその手に身を委ねようと思ったからに他ならない。
テツヤ、御前の手は強くて優しい。
御前は自分を甘やかす方だと自負していたけれど、精神的な部分ばかりで肉体的に甘やかす事をしていないように見えていたよ。
何度注意しても聞かないし性分なんだろうが、そこは嫌いだったな。
両手いっぱいに大切なものを持って守ろうとする事は結構だけど、僕のスペースが空いた分、其処を自分に宛てて使う事を勧めるよ。…とはいえ既に別のものが腰を下ろしていそうだけれど。
それが出来ないなら両手いっぱいの大切なものを落としてしまわないように、その手に自分の手を重ねてくれる存在に出逢える事を願うよ。そしてその手がお前の手と同じく優しい温もりを帯びている事もね。
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