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赤司征十郎(黒子のバスケ)
2016/07/19(火) 00:24
何故か今年はかき氷を食べる機会が多く、その度にテツヤから貰ったかき氷の写真を思い出す事になる。
夏にはよく食べていたように思うその頻度は僕がちょっと退く位だったわけだが、当の本人は何処吹く風で、本能の赴くままに機会があれば食べていた印象だ。
テツヤと一緒に居た頃は別段かき氷にそれ程の執着も無く、実は殆ど食べた事が無かった。
フローズンやフラペチーノの様な飲み物型やカップのアイスなんかは夏場は重宝したが、かき氷と言うものを食べるタイミングと言うものが無いに等しかったのが原因だと思う。
専門店が学校の近くに出来たらしい情報を玲央から聞いて、一緒に行った時に漸くかき氷を店で食べるという事を知ったくらいには縁遠かった。
かき氷は屋台で食べる物で、出店…と言うよりは祭事に参加しない人間には馴染みの無い食べ物に変化してしまっていたようだ。
今ならテツヤがあれ程ワンシーズンに何度もかき氷を食べる理由がわかるような気がする。
近年、変わり種のかき氷や店によって削り方や氷自体に味を付けているものもあるようでその種類には目を見張るものが有る。
テツヤが写真を送ってくれていた頃に同じく共感がしてやれたら良かったが。
あぁでも、今思い返してもテツヤは食べ過ぎだ。
再三腹を冷やすと胃腸の働きが低下して夏バテを起こすから控えるように言っていたが聞きもしないで飽く事無く食べる物だから若干苛立ったのも今では懐かしいな。
どうせ今年もまた大層な量のかき氷を食べては夏バテを起こしているだろう彼に、せめて量を減らすなり対策を立ててくれる人が居ればいいが。……其れも無駄だろうか。
気付けばまた、互いに疎ましく思う季節がやって来たな。
少し前にそれ程多くは無いが何種類かの紫陽花を見る機会があって、昔テツヤから送られてきた紫陽花の写真を思い出した。
紫陽花は何処となくテツヤを連想させる。
薄い水色はテツヤの髪色に似て、菫の様な薄い紫も好きな色だと言っていた事を記憶している。
そう言えば菫の砂糖漬けと言うものを好物にしていたから食べてみたいとは思っていたが未だ叶っていない。
紫陽花の花言葉の沢山あって一つには辛抱強い愛情、と言うものが有るらしい。一時のテツヤにぴったりだな。毒を隠し持っている所も含めて。
初めてゆっくりと眺めた紫陽花はとても美しかった。品種ごとに形や色も違って、…その事実さえその日までは知らない位に紫陽花と言うものをゆっくりと見たことが無かった。
桜や薔薇なんかは色々と目にする機会はあるが紫陽花だけと言うのは開花や見頃を報じられる事も無いからだろうか。
あの頃知り得なかった事はテツヤが教えてくれて知った気ではいたが、かき氷の美味しさも、紫陽花の美しさもちゃんと共有出来れば良かったと今更ながらに思うよ。
そう頻繁に逢う事も無かったけれど、叶うなら、共に。
扉を開けたままの鳥籠を出たり入ったりしていた僕の小鳥は、もう戻る事は無いけれど、彼が囀る美しい声は、この広い世界の小さな小さな出来事に触れる度、鮮やかに蘇る。
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