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赤司征十郎(黒子のバスケ)
2016/08/10(水) 00:39
探し物をしていて随分久しく開いていなかった机の引き出しの中から、テツヤから貰った手紙が出て来た。
物によっては日が経てば捨ててしまう手紙たちは、残して置くとキリがない。
机の奥底に仕舞われていた其れは多分、家の者に見つからないように、そして後々は目に留めないようにと隠していたのかも知れない。
机の引き出しを開ける機会と言うものが殆どないから隠す気も無く目に留めていなかったのもあるだろうが。
最初に目に留まった一通を、開いてみると中から紫陽花の文香が出て来た。
……何と無く引き合う物でもあるのかどうかわからないが一つ前の記事に紫陽花の話をした後に出て来ると少し虚を突かれるものがあるな。貰った事も忘れていたよ。
『文香』というものを貰ったのはこれが初めてで、そんな洒落た物があるとは知らなかったな。
手紙を書くという行為は好きで、何かにつけて手紙を書いていた。便箋に認めるというよりは、ポストカードに書く一枚完結型。それを何枚も贈り物と一緒に入れていたな。
テツヤからは便箋で届くこともあれば同じくポストカードで贈り物と一緒に送られてくることもあったね。
テツヤは僕が送ったウサギのポストカードがお気に入りだったみたいだけど、僕が貰ったお気に入りはテツヤ曰く『雪の少女』。儚げな色彩と背中を向けて座り込んでいる少女のシルエットが美しい一枚だ。
他にも少し探してみればそこかしこにテツヤから貰った手紙が溢れていた。
折角だからと手紙を読み返しながらポストカードを整理していると、8年前に友人から貰った関東にあるギャラリーのポストカードが出て来た。
開催される展示会の作者のイラストとギャラリーの連絡先などの告知が書かれたものなんだが。
現在は潰れたと聞いているが勧められてから関東に行く際立ち寄って……イラストレーターの絵が綺麗だったのと、実際足を運んで気に入ったこともあって残していたんだろうが丁度テツヤが好きだと言っていたイラストレーターの展示会を告知するものだったことに今気付いた。
手紙を読み返して、好きなイラストレーターの話を書いてくれていて、どんな絵だろうかと思っていた所に丁度展示会案内のポストカードが出てきて「たった今この名前見たな…」と再度手紙を読み返して確信した。
妙な縁とは有るものだね、一人感心しているよ。
テツヤはこの絵を知っているのだろうか。不思議な事に、黒と赤を基調とした美しいイラストだよ。見せてやりたいくらいだ。
ポストカード購入癖については最近は自重が効いていて、無暗矢鱈と購入する事は無くなった。
其れでもテツヤに送ろうと思って買っていたポストカードは誰に送る事も出来ないまま白紙で手元に残っている。テツヤはちゃんと消化出来ただろうか。
改めて読み返した手紙の中で「僕と出会って変わったことで少しでも多くのものが君に幸せを感じさせてくれたら」と書かれていて、僕が目先の事に拘る中それよりも先を見据えていたのだろうかと思う。
テツヤが当時願った通り、テツヤと出会う前より今は少し生きやすくなったと感じている。
正しい呼吸の仕方を教えてもらった、…そんな感じだ。
小さなかけらの一つ一つを思い返せばこんな大きな形で僕の中に残っているテツヤの思いに反して、思えば僕は何を返せたんだろうな。
金木犀の咲く頃の恋は記憶に残りやすいとテツヤが言っていたのを思い出す。
その頃に濃いやり取りをしていたからか金木犀には思い入れがあるな。
文香とはいかないが、去年テツヤに突然送った荷物の中にも金木犀の香水を一振り。
あの季節になるとまた思い出すのだろうね。
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