スレ一覧
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1233.掌底と憧憬
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ア_ズ_ー_ル・ア_ー_シ_ェ_ン_グ_ロ_ッ_ト(t ̄w ̄s ̄t)
2023/04/30(日) 00:48
灰燼と化した契約書の枚数は1522、流した涙の粒数など数え切れるはずもない。築き上げたプライドもろとも頽れるような感覚に、二度と同じ過ちは繰り返さぬと心に決めたのは数日前のこと。何から手を付けるべきか、やはりまずは守りを固めるべきだろう。金庫を堅牢化することは勿論、この際VIPルームの扉そのものにも何か仕掛けを施した方が良いのでは。「──あのさぁ、」するとここまで黙って聞いていた顔色の悪い男がおずおずと口を挟む。続きを促すと、彼はうろ、と視線を彷徨わせてから言い放つ。「ていうかそもそも、何で契約書データ化しないの?今時紙で書類管理するとか流行んなくない?」……それは人のユニーク魔法を根底から揺るがすのだが。
☆
その部室は西校舎の外れ、図書館よりさらに奥にまるで人を拒むようにひっそりと存在していた。
「ボードゲーム部へようこそ!」部活見学に訪れた己を出迎えた機械の体の持ち主の声は場違いなほどに明るかった。その向こうでのそりと蠢く人影、髪が燃えているこの陰気そうな男が部長なのだろうかと思ったのも束の間、訝しげに細められたその金の瞳を見た瞬間に悟った。──今の自分では、例え1522回試行を重ねようともきっとこの男の思考には届かない。
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