鍾離さん！その工芸品の陶器、代金はどこにつけるつもりなのかな？今、お財布持ってないでしょ。だぁ〜って私が持ってるからね！誕生日にプレゼントしたのになんで持たずに出ちゃうかな。好みに合わなかった？すごく悲しいなぁ……えっ！龍髭麺ご馳走してくれるの？でも今はチ虎魚焼きがいいなぁ！……そうだ、鍾離さん。昨日書いた詩の中で他よりも多く筆先を紙面に走らせたものがあってね。
「菫色に滲む甘色は空よりも淡く、器用に傘を開く青年ひとり夜露は弾くも輝き絶えず。褐色の土が蓄えれば、蓮華は身を冷やし下を向く、臥新嘗胆の夜は朝に消えよう」
この詩はね、恋をした人を表しているの。降り注ぐ雨と、濡れた土を見て自然と思い浮かぶその人を物陰から見ているに違いないね。夜は色んなことを思うでしょ？だけど朝になれば何でもなかったかのように晴れることもある。……これが、私かって？うーん......内緒！詩人は他者に解釈を考えてもらうのが好きな生き物なの。次からは釈をつけないから鍾離さんの言葉を聞かせてよ。

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見守られているんじゃなくて監視の方が良かった？ふ……ふふ、ずっとずっと年下である若い魔法使いに目を配るのも年上の優しさだって双子先生たちが長々しく話していたんだ。あいつらの方が遥かに年上の、年長者のくせに年下ぶるところは本当に意味が分からない。その蜂蜜と朝焼けの光を溶かして混ぜたみたいな目で、きみのことばを見ているよ。……あとショコラのお礼でおすすめの店なら西の魔法使いが得意かもね。お菓子の意味を考えるのも、つけるのも得意だろ。あそこの魔法使いたちは。

今日のあいつはなんだか、ずっといらいらしてた。眠いのか、殺し合いたいのか、腹が減っているのか僕には何ら関係のないことだけど。あれは多分、お腹が減っているのに珍しく眠気がきてソファで眠ろうとしたところで南の国の兄弟にちょっとした異変を察知してうだうだした挙句、眠気がどこかにいっちゃったからじゃない？だから僕のケーキを鷲掴んでぐちゃぐちゃに口へ放り込みながら、マカロンを潰して食べてたんだよ。思い出したら僕がいらいらしてきたから今すぐ殺そうかな。眠れなくてぐずる顔、良いんだよな……情けなくてさ。

可愛いね、おまえ。ああやだな、勝手に皮肉だって決め付けて。せっかく褒めてやっているのに僕の言葉が気に入らないの？……皮肉と捉えながら褒められてるつもりで否定するの、ちょっとだけかわいいよね。犬みたいに頬をべろべろと舐めつけてくるくせに態度は猫みたいにふてぶてしいところとか、眠い眠いとぼやくあいつの腹を蹴り上げてその上に腰掛けると呻くんだ。あはは！かわいいね、ミスラ。普段からどろっとしてる顔がさらにどろどろになっているところはほんとうにかわいそう……ふ、ふふ。かわいそうでかわいい。

ネロのためにレアチーズケーキを作ったら、あまりにもチーズがねっとりし過ぎて切り分ける為のナイフが抜けなくなってしまいました……抜いたらケーキの形が崩れたりしないか怖くて。……待ってくださいフィガロ、味見用のケーキは作っていません。え？このナイフをどうにかをしてくれる？わ、分かりました。お礼に何か改めて……余ったクリームチーズでいいのですか？お酒に、合うと。あなたがそれでいいのなら。ですがミチルのことはあまり困らせないであげてくださいね。ネロ、喜んでくれるでしょうか。

（2024.3.13 追記）
ネロがお返しにたくさんお菓子を作ってくれました！クッキーにシュークリーム、それからマシュマロ、チョコレートブラウニー……僕が贈ったのは一つなのに、こんなに貰っても良いのか戸惑ってしまいました。でもネロはたくさん食べる僕を見ている間はとてもにこにこしているのでなんだか嬉しいなって。で、でもやっぱり、こんなに口の中が幸せだと堕落してしまいます……！