『あなたはこの子を乱暴に使いすぎよ』

思い当たる節しかなく、ぐうの音も出なかった。
あの時は臨界稼働させてしまったし、あろう事か2日前に黒衣森で魔導アーマーを乗り回したばかりだった。調子が悪いのであれば直ぐに調子が悪いと訴えかけて欲しかった……。どこまで健気なんだと愛着が増した一方、とんでもない程の罪悪感が襲い掛かってきた為、ジェシーに言われて直ぐにパーツを探しに行った。身の危険よりも魔導アーマーが直らない方が困る。コンテナを見つけるのに時間が掛かってしまったが無事に回収、魔導アーマーはカノン砲が打てるようになって戻ってきた。

これからは気に掛けて乗ろうと思う。

一難去ってまた一難……『善王モグル・モグⅫ世討滅戦』に挑むことになったが、この旅はずっと気心知れた仲間(NPC)と挑んでいた為に他のパーティーで挑んだ経験無し。

これは困ったことになったな……と頭を悩ませていたら、彼が一緒に赴いてくれることになった。こういう時の彼のフットワークの軽さにはとても感謝しているが、その時の俺の頭の中は『死んで無様な姿を晒してしまったらどうしたものか……』でいっぱいだった。

旅をしては毎日彼にその日にあった出来事を話していたので俺がクルザスでリスに殺されかけたことも、実際に何度もグリダニアに強制送還されていることも、イフリートとタイタンで死因が分からず何度も繰り返し頭に疑問符ばかりを浮かべている俺を知っているので、今更格好付けても仕方がないのだが……少しはまともに動けるようになった姿を見せたいと思うのは当然のことだろう…………

少し時間を貰って先人の残した記録を必死に読み漁り、彼に幾つか確認してから挑んだ討滅戦。


何が何だか、全くわからなかった……。
正直、彼がどこにいたかすらも全く分からなかった。スキルを繰り出す順番もわからなくなったし、視界いっぱいに閃光が飛び交っていて、何が何だか全くわからなかった。本当に。

勿論攻撃はしたが…………ただただ、攻撃から逃げ惑っているだけになってしまった。

そんな俺を見ても彼は「走り回って一生懸命避けてて微笑ましくなった」等と言うのだから、彼は本当に…………。

この旅を続ける上でとても気が楽になる言葉も貰った。まだ大規模な戦いに一人で赴く勇気は無いので彼の力を頼るだろうが、言葉に甘えて頭に大量の疑問符を浮かべながら挑もうと思う。

戦利品はモグモグフォークという新しい槍……？だった。俺が持っていた槍より強かった。彼と初めて戦いに赴いた記念でもあるし、暫くはこのフォークと共に旅を進めようと思う。



彼の言った通り、魔導アーマーに乗れるようになっていた。
あの健気な姿にすっかりと心を奪われてしまったのだが、またこうして乗れるようになったことが嬉しくて堪らず目的もなく黒衣森で乗り回した。