さて、フロイドは無事に代筆をしてくださったでしょうか。どうやら本日はあまりやる気が出ないようでして、お皿とグラスを割りかねない勢いだったので少々心配です。
……それにしても、相変わらず愛らしい照れ隠しをする方ですね。僕の前では言わないような事をここに吐き出しては何事も無かったかのように振る舞う。器用なのか不器用なのか分からない節はありますが、そんなところも僕にとっては度し難い程に愛らしく。最早憎らしい程に愛してしまう。僕には器用に、自分自身には不器用になってしまうフロイドが好きです。誰もが知らないあなたの一面を僕だけが愛でていたい。僕だけがあなたの良いところを知っていれば良い。……そう思いはするものの、上手くいかないのも現実です。フロイドは恐らく目にした人々が十中八九、美しい、格好良い、と口々に褒め言葉を口に乗せては腹立たしい笑顔で手を叩く事でしょう。あなたはそれ程に素敵な人魚ですから。そんなフロイドが僕と心を通わせてくださっている事が今でも夢現のよう。あの夜に手を取ってくださったのは本当に僕で合っていたのか、不安になってしまう位には。そう伝えると、決まって機嫌の良さそうな笑みを浮かべるフロイドがまた好きなんです。きっとこの想いの全てが伝わる日は来ることなど無いのでしょう。稚拙な表現になりますが、この世にある言葉では想いを表しきれない、というものでして。ですから僕に出来ることは、日々溢れて留まることをしらないこの想いを少しでもお伝えしていくことだけ。まるで海に溺れた陸の人間のように、恋に為す術もなくあなたの魅力に沈んでいく僕を明日も隣で笑っていてください。
お約束していた九文字すら優に超えてしまったのは計算外でしたが、あなたを想う良い時間となりました。……それでも本物のあなたと過ごす時間に勝るものは無いんです、早く帰って来てくださいね。
今日もあなたを愛しています、フロイド。帰寮されたらどうしてこちらで鳴いたのかを問い詰めますので、そのおつもりで。