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1407.telescope
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11 :Dr./レ/イ/シ/オ (H/S/R)
2024/12/26(木) 08:16

※夢の話
夢の中の僕は今よりもずっと年老いているようだった。知らない劇場の座席はクッションも柔らかく快適で、どうやらクライマックスを迎えているらしい演劇のその時になっても身体は疲労一つ訴えず没入を容易くした。誰だかの生涯の物語の、老いさらばえた男が、届かない夢に追い縋らんとする場面だった。男は初めから、わかっていたのだろう。凡人の足は宇宙の遥か先には届かず、枝のようになった腕で未知を掴むことは出来ないと。愚かという自覚を持ちながらそれでも伸ばした手が壇上で最後に触れたのは、同じく凡庸な老婆だった。がむしゃらに、だけども態度ばかりは冷静に、足掻こうとする腕を老婆は押し留めた。そして歌った。何のために私がここに立っているのか、それをあなたはもう知っているはずで、もう傷付かなくてもよいのだと。眠りを拒む子供に言い聞かせるように、繰り返し、繰り返し。優しいエンディングだったのだと思う。夢の中の僕も、きっとそう思っていた。男は彼女の身体に凭れかかるようにして、添え木のようにして、そして挑戦を終わりにした。どこにも行けない足でただそこに立つ為だけ抱き合う男女のシルエットに、紗幕越しに作られた夜空のような光景に、客席の僕は知らず涙に頬を濡らしていた。
目覚めのとき、そんなラストに覚えた胸の温かさがやけにはっきりと残っているものだから、夢の割には筋が通っている物語だ、と思った。次いで、自嘲するしかなかった。夢のくせをして、ひどく教訓的じゃないか。彼の細い身体を抱き締めたかった。僕は無鉄砲をやる気はないし、歩みを止めるつもりもないというのに。


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