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1407.telescope
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Dr./レ/イ/シ/オ (H/S/R)
2025/01/20(月) 01:58
「どうして君は、――なの?」。そんな甘えた声を聞くたびに、僕の頭には昔に語り聞かされた童話が浮かぶ。悪意を知らない少女は、純粋な疑問のまま獰猛な狼に問いかける。狼は少女を容易く牙にかけ腹に収めてしまえることさえ知らずに。
あのギャンブラーがそういった言葉を使うとき、それはきっと甘えなのだろうと僕は考えている。問い掛けの内容だって、明確な答えの無いようなものばかりだ。解は数式によって導き出されるものではなく、僕だって彼の納得する答えを出してはやれない。けれど、そこに納得は必要としてはいないのではないのかと思う。何故、どうして、と、なんでもない子供のように、普通に問いかけることが彼の甘えであるというのなら、僕はただ頷いてやりたい。そうだな、不思議だな、もしかするとこういう理屈なのではないか、と。「どうして」を口に出せなければ、その探究心は一人で解決する他にない。しかし、一人の凡人の生に辿り着ける解答などは――たかが知れている。だから人は寄り添い、……学術補佐や戦略的パートナーなどとを、他者を味方につけて、「どうして」の答えを知る為に生きるのだろう。幼く無知に聞こえるその問い掛けは、唯一の答えは無くとも決して無意味ではない。それを己の持つ疑問として掲げるのなら、この宇宙のどこかに必ず、解決しようとする他者は存在するだろう。だから僕たちは未だ答えを知らない「どうして」を発信しなければならない。一人では導き出せなかった答えに、協力者が居れば結果が変わるということは、当然ながら多いものだ。
……そう考えるからこそ僕は、あの男が「どうして」を口に出すことを、褒めてやりたい。いつかの日に、彼が疑問の答えを探し出そうとすることを躊躇わないようにも。僕は彼の言葉を、将来に向けて育むべき甘えだとして慈しみ続けたい。
どうして君はそんなに格好良いの?
……僕の心臓がもたないんだけど。
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