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1407.telescope
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33 :Dr./レ/イ/シ/オ (H/S/R)
2025/02/08(土) 14:50

今は本来ならば潔癖が加速している季節のはずだ、と気付いたのは彼の手に触れたときだった。この時期といえば、大学ではとにかくレポートの添削を繰り返し、テストの結果をバカ極まりない手段で誤魔化そうとするどうしようもないアホを追い返す。年度の始めよりはよっぽど数を減らしているが、ダメ押しとばかりに悪天候の日もあれば日照時間は減っている。変わらないルーティンでは汚れを濯ぎ足りず、頭痛に悩まされる頻度は高まり、石膏頭越しにもマヌケの顔を見ているのが苦痛で仕方がない。苛立ちと自問自答のまま、整えた入浴環境に身を委ねても尚深い陰鬱に沈む夜もある。――不快感も受け入れなければならないものとして、そのように暮らしていた、のだが。
このごろはとみに寒い帰路を辿って、帰宅したなら一番に手洗いとうがいを済ませる。そうして冷えた手を、彼の掌であたためてほしいと思った。触れた温もりは日中に積もった憂鬱など簡単に吹き飛ばしてしまって、抱き締める身体は一人では気付くこともできないあたたかさを教える。与えられるものは温度だけではなく、優しさだった。汚れを削ぎ落さなければという焦燥は、育つ前から消えていく。緊張を解き、精神を安定させる脳内物質の分泌。言葉にすればそれだけの理屈だが、彼以外からこれを与えられたところで同じように受け取れはしない。
君がいるから僕は変わりない日々を過ごせているのだと、今日はそのことを伝えるべく筆を執った。あの自信に満ち溢れた振る舞いをするギャンブラーが、まさかとんでもない思い違いで下を向いてしまうことが無いように。


訪問先の研究室は雪の降る立地なものだから、移動時間には少しばかり余裕を持たせて出発した。交通は鈍り不便もあるが、年に数度のことなら積雪を眺めているのもなかなか悪くない。差し入れにと渡されたチョコレートは研究室にも同じ物が置かれているので、厚意と判断して有り難く頂戴した。しかし一人では食べ飽きてしまうだろう量だ。作業中の糖分補給用にするよりもまず、彼の自宅に持ち帰ることにする。


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