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1407.telescope
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Dr./レ/イ/シ/オ (H/S/R)
2025/02/14(金) 11:55
「明日から少し忙しくなるんだ」「会えなくても、何気ないことでいいからメッセージを飛ばしてくれると嬉しいな」
奴からそんなことを聞かされたのは5日ほど前のことだったが、結局僕が何かを送り付ける暇はなく、多忙の終わりも見えてきているらしい。これは僕が薄情だというよりも、あの男が僕に「暇」を作りはしなかったためだ。朝から先に仕事を始めながら、僕の起床時間になると寝室に戻ってきて、覚醒から身支度までを側で見守っていたあの男。珍しく飛び出す彼のわがままをどれも叶えてやりたいのに、時間が足りていないのは僕と彼の共にであるからもどかしい。彼よりも少し遅れて帰宅した昨夜、リビングを空にしてベッドに沈んでいた彼の気持ちを僕だってわからないわけではない。
このまま彼の部屋で休暇を過ごしていると思考に汚れが積もりそうなもので、創造物たちの世話を済ませたなら一度自宅のバスタブに浸かることにする。何気ないこと、とはこういう話を指すのだろうか。あと一日の半分もしないうちに、カウチでもベッドでも直接語り聞かせてやれるというのに? チャットルームはいつかの夜の着信を最後にして、指先が過去をなぞるばかりだ。
※惚気
彼に差し出されたチョコレートの甘さがまだ舌に残っているような気がする。あれから二度も歯磨き粉のミントに洗い流されているのだから、勿論錯覚でしかない。彼の温度に溶かされたチョコレートを飲み下して、どうやら潔癖というのは情欲に覆い隠されてしまうものらしいと頭の隅に考えた。素面であれば絶対に、誰であれ他人が口を付けたものを含みたくはないはずだというのに。
どこかのカンパニーの商業戦略が始まりとはいえ、既に人々の生活に定着している季節行事に便乗することを愚かだとは言わない。何気なく手渡される差し入れはチョコレートが増え、どこの店頭にもラッピングされた小箱が積まれている中で日々を暮らしていれば誰だって意識をする。僕も1ヶ月と3週間前と同じ轍を踏む愚鈍にはならずに済んだ、つもりではあるのだが。
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