さて、先に一言断りを入れておく。
この日記は砕蜂への嫌がらせ──もとい、いたずら、意地悪、それに類するものとして作ったもので、「いつか」本人に気付かれることを前提として作っておる。とは言え、その「いつか」が来るまでは核心を突くようなことは話さんじゃろうし、ない話も多分に混ぜる。そうじゃな、具体的に言うと、この頁を除いた全ての頁に「ない話」もしくは「小さな嘘」が必ず一つは混ざる。どれが本当で、どれが嘘かは砕蜂なら分かるじゃろうし、おぬしらから見れば嘘か真かはさしたる問題じゃろう?──まァ、作ったものの、そもそも砕蜂が日記という文化に明るいかどうかすら儂は知らんのじゃがの。明るくはなかったのですが、夜一様がなさっていることなので勉強いたしました!
ああ、そうじゃ。この頁は嘘は書かぬと言った手前、これも併せて明らかにしておくが、儂と砕蜂は、普段は「儂」でも「砕蜂」でもない。故に、砕蜂からすれば尚見つけにくい日記となるわけじゃが……、いつまで経っても気付かれんのも退屈じゃからの……。一先ず、儂が日記の存在を明かさずに過ごすのは三ヶ月としよう。三ヶ月ののち、砕蜂が先に日記を見つけられればあやつの勝ち、先に気付かれれば儂の負け、と言うことになる。
あやつは口を開けば「自分ばかりがこんなにも」と嘆いておるからのう。たっぷり三ヶ月かけてあやつの話をして、季節が一つ変わった頃に思い知らせてやろうと言う訳じゃ。仮に、三ヶ月経つ前に見つかったところで、三ヶ月先を当たり前に考えて、こんな手の込んだ仕組みを作る程には、と言えるからの。どう転んでもあやつに良い影響を──与えられる、はず、……と、少なくとも今の儂は思っているんじゃが、果たしてどうなることやら。ふ、……今から三ヶ月後が楽しみじゃ。
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折角じゃ。三ヶ月後の砕蜂に充てて、三ヶ月前の儂から言伝を残しておこう。──砕蜂。儂の勝ちじゃ。先に見つけられておれば、おぬしの頼みをなんでも三つまで叶えてやろうかと思っていたんじゃが、残念じゃのう!三つ……。毎日……いえ毎朝毎晩、有り余るほど叶えていただいてます……